環境・気候変動への対応

移行計画の策定

【策定プロセス】

七十七グループでは、「気候変動・災害への対応」をマテリアリティの1つに掲げており、気候変動に関連するリスクと機会を認識したうえで、気候変動への取組みを強化するとともに、TCFD提言に沿った情報開示を拡充しています。今般、これまでの七十七グループの気候変動への取組みを整理・再評価し、「2030年Scope1,2カーボンニュートラル実現」のみならず、Scope3を含めたGHG排出量削減目標「2050年Scope1,2,3ネットゼロ実現」を新たに設定しました。

気候変動への取組みを一層強化するとともに、「2050年Scope1,2,3ネットゼロ実現」に向けた七十七グループのトランジション戦略として、2025年7月に国際的なガイダンスに基づき移行計画を策定しています。移行計画の策定においては、サステナビリティ委員会で審議のうえ、取締役会に報告しています。

1.基礎

移行計画の概要

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  • 網掛けは「移行計画」策定に伴い今年度に新たに設定・開示する項目

移行計画の目的

七十七グループでは、移行計画を「脱炭素社会の実現に向けたトランジション戦略」と定義し、気候変動対応にかかる事業戦略と位置づけています。

移行計画の実行を通じて、お客さま・地域の脱炭素を牽引し、ステークホルダーの持続的成長に貢献するとともに、七十七グループの気候変動にかかるリスク低減とトランジションに伴う機会創出を図っていきます。

2.ガバナンス

ガバナンス体制

七十七グループでは、適切かつ十分なサステナビリティ推進管理を行うことを目的として、「サステナビリティ推進管理方針」を制定するとともに、頭取を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティ推進管理にかかる重要事項等を審議・報告のうえ、結果を経営戦略やリスク管理へと反映しているほか、総合企画部内に「サステナビリティ推進室」を設置し、施策推進の実効性を確保しています。

2024年度は「サステナビリティ委員会」を3回開催し、サステナビリティ経営の実践に向けた審議・報告を行い、その内容を取締役会へ報告することにより、取締役会がサステナビリティへの取組状況を監督する体制を確立しています。

<サステナビリティに関する組織図>

<委員会における審議・報告事項>

  • 2023年度Scope3の算定結果
  • 統合報告書におけるサステナビリティ情報(気候変動、生物多様性等)の開示内容
  • 取引先の脱炭素支援への取組み
  • 2030年Scope1,2カーボンニュートラルに向けた取組み
  • 人権デュー・ディリジェンスの実施状況と今後の取組み
  • 2025年度「SDGs実践計画」の策定
  • 国内サステナビリティ開示基準(SSBJ)の動向

リスク管理

【リスク管理】

当行では、気候変動に起因する「物理的リスク」や「移行リスク」が、将来的に大きな財務的影響を及ぼす可能性があることを認識しています。

気候変動に関するリスクを適切に捕捉・検証するため、「物理的リスク」「移行リスク」が具現化した場合のリスク資本耐性について、ストレステストによる検証を実施しています。ストレステストの結果については、気候変動以外の信用リスクや市場リスクにかかるストレステストの結果とあわせて、ALM・収益管理委員会に報告を行っています。

<リスク>

リスクカテゴリー毎に以下のとおり「物理的リスク」と「移行リスク」を認識のうえ、リスクが顕在化した際の影響等について、短期(5年)、中期(10年)、長期(30年)の時間軸に基づき分析を進めています。

区分 想定されるリスク 時間軸
物理的
リスク
お客さまの営業拠点が自然災害で被災し、事業が停滞することによる信用リスクの発生 短期〜長期
自然災害に起因して不動産担保の価値が毀損することによる信用リスクの発生 短期〜長期
当行の営業店舗等が自然災害で被災することによるオペレーショナル・リスクの発生 短期〜長期
海面上昇によるお客さまの営業拠点浸水等に伴う事業撤退による信用リスクの発生 長期
移行
リスク
気候変動に対応した規制や税制等が変更になり、お客さまの事業へネガティブな影響が及ぶことによる信用リスクの発生 短期〜長期
脱炭素関連技術の失敗や市場の変化に伴い、お客さまの事業へネガティブな影響が及ぶことによる信用リスクの発生 短期〜長期
気候変動への対応や情報開示が不足した場合の当行の風評リスクの発生 短期〜長期
※シナリオ分析
物理的リスク 移行リスク
シナリオ

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)

4℃シナリオ

NGFS(気候変動リスクにかかる金融当局ネットワーク)

Net Zero 2050

分析対象 宮城県内の事業性与信 電力・エネルギーセクター
分析手法 水害による浸水深に応じた担保毀損および事業停滞に伴う財務内容の悪化が与信費用に与える影響 炭素税導入による課税負担や既存設備の座礁資産化に伴う財務内容の悪化が与信費用に与える影響
分析期間 2050年まで 2050年まで
分析結果 与信費用が30億円程度増加 与信費用が110億円程度増加

【炭素関連資産】

2024年度の当行の貸出金等(貸出金、支払承諾)に占める炭素関連資産の割合は下表のとおりです。

エネルギー 運輸 素材・建築物 農業・食料・林産物 合計
4.8% 2.5% 18.7% 2.1% 28.1%

3.実行戦略

Scope1,2排出量の推移

七十七グループでは、2030年Scope1,2カーボンニュートラル実現に向けた取組みを強化しています。2024年度はオフサイトコーポレートPPAによる約2,000kWの太陽光発電所である「77ソーラーパーク富谷」が稼働を開始したほか、仙台市・パーク24グループと連携して当行営業店の敷地内にEVカーシェアステーションを設置しました。

2024年度Scope1,2排出量は6,803t-CO2であり、2013年度比▲59.5%となっています。

七十七グループのネットゼロ実現に向けた取組み

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お客さまのサステナビリティ推進に向けたソリューションメニュー

お客さまのサステナビリティ推進を支援する観点から、取組状況に合わせたソリューションメニューを拡充しており、今後もお客さまとのエンゲージメントを通じて、サステナビリティへの取組みを支援していきます。

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各種方針の策定

七十七グループでは、気候変動を含めたサステナビリティ課題への対応が重要な経営課題であるとの認識のもと、各種方針を策定しています。

4.エンゲージメント戦略

優先セクターの特定

当行ではScope3カテゴリ15(FE)の削減に向けて、お客さまとのエンゲージメントを強化しています。2024年度は、環境省「令和6年度移行戦略策定・エンゲージメント実践プログラム」の支援対象金融機関に採択され、本プログラムを通じて、優先セクターを特定のうえ、本部主導で継続的なエンゲージメントを実施しています。

エンゲージメント重点先の検討にあたって、貸出ポートフォリオとFE算定結果等を分析のうえ、地域特性とエンゲージメント実効性を考慮し、優先セクターを特定しています。優先セクターは「食品」「建設」「自動車」の3セクターとしており、主な特定プロセスは以下のとおりです。

【特定プロセス】

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  分析項目 内容
定量分析 貸出ポートフォリオ

分析内容:貸出ポートフォリオにおける融資残高が大きいセクター

上位セクター:不動産、サービス業、金融、卸売業、電力、建設業、小売業、食品

FE算定結果

分析内容:投融資先全体におけるFE高排出セクター

上位セクター:電力、建設業、建設資材、食品、化学、運輸、石油・ガス

エリア別FE規模

分析内容:宮城県内事業者におけるFE高排出セクター

上位セクター:建設業、電力、食品、運輸、石油・ガス、建設資材、不動産

  • 投融資先全体に占める宮城県内事業者FE:52.8%
  • 宮城県内事業者のうち本社所在地が仙台市である事業者FE:56.9%
定性分析 移行リスクの大きさ

セクター別の移行リスク評価が未実施であることから、メガバンク3行の分析結果を参考

上位セクター:電力、石炭、石油、鉄鋼、自動車、セメント、アルミ、農業、不動産

既存取組の展開状況 脱炭素への取組要請が高く、関心が高いセクター
地域特性 東北地域および宮城県の産業構造
エンゲージメント実効性
  • エンゲージメント実施状況
  • サステナビリティ関連ソリューションの成約先

エンゲージメント実施体制

2024年度は、宮城県内FE上位先および優先セクター該当先に対して、継続的なエンゲージメントを実施しています。今後は営業店主導でのエンゲージメント実施に向けて、行内での啓蒙・体制整備を図っていきます。

【重点アプローチ先】

  • 宮城県内FE上位100先
    宮城県内FE全体の30%程度に相当
  • 優先セクター該当先
    業種区分:「食品」「建設」「自動車」

エンゲージメント実施状況

お客さまとのエンゲージメントにおいては、脱炭素取組状況ヒアリングシートを活用し、経営課題としての優先度や取組状況を把握しています。宮城県内FE上位先においては、脱炭素が自社に及ぼす影響が大きいと回答した企業が5割を超えている一方で、既に取組みを開始している企業は3割程度となっています。また、自社のGHG排出量を算定している企業は1割未満であることから、継続的なエンゲージメントを通じて自社の排出量算定・把握および取組意識の醸成が課題であると認識しています。

【宮城県内FE上位先とのエンゲージメント結果(2024年度実施先:100先)】

(1)脱炭素の取組状況

(2)経営課題としての優先度

(3)脱炭素が自社に及ぼす影響

(4)自社のGHG排出量算定

地域へのエンゲージメント

地域の脱炭素に向けて、東北電力株式会社、日本生命保険相互会社、地方自治体等と連携し、包括的な取組みを実施しています。地域金融機関として、脱炭素に関する地域への啓蒙・意識醸成が重要な役割であると認識しており、今後も多様なステークホルダーとの連携を進めていきます。

【主な連携内容】

提携先 時期 内容
東北電力株式会社 2023年4月 カーボンニュートラルの推進に関する連携協定
日本生命保険相互会社 2023年6月 地域のサステナビリティ推進に関するパートナーシップ協定
仙台市 2023年11月 脱炭素選考地域に関する共同提案者

【2024年度の主な取組み】

当行二日町支店の敷地内に設置された
EVカーシェアステーション

  • EVカーシェアの導入
    2024年11月に仙台市・パーク24グループと連携し、当行営業店の敷地内にEVカーシェアステーションを設置しました。平日は当行行員のほか仙台市職員が利用し、休日・祝日はタイムズカーの会員が利用可能となっています。
  • 自治体・取引先向け脱炭素セミナーの開催
    2025年1月に地域一体となったカーボンニュートラル推進を目的として、東北電力株式会社・仙台市と共催で「<七十七>脱炭素セミナー〜地域のカーボンニュートラル実現に向けて〜」を開催しました。また、お客さま向けに脱炭素をテーマとした職域セミナーも開催しています。

5.指標と目標

各種KPI・モニタリング指標の設定

GHG排出量

  1. 2030年Scope1,2カーボンニュートラル
  2. 2050年Scope1,2,3ネットゼロ

エンゲージメント

<2030年度目標>

  1. GHG排出量算定支援先数(累計):500先
  2. サステナブルファイナンス実行額(累計):1.2兆円
  3. 伴走支援型融資実行件数(累計):3,500件
  4. サステナブル関連手数料(単年度):500百万円
  5. SDGs関連サービス支援先数(累計):5,000先

モニタリング指標

  1. 当行GHG排出量の推移
  2. 重点先(FE上位先、優先セクター)とのエンゲージメント実施件数
  3. 脱炭素ヒアリングシートに基づく取引先の意識・取組状況
  4. FE高排出セクターにおける排出量
  5. FE算定における一次データ使用率
  6. ストレステスト、シナリオ分析の結果
  7. 貸出ポートフォリオにおける炭素関連資産の割合
  • サステナブルファイナンスは地域活性化や持続可能な社会の実現に資する投融資(主に環境、医療、創業、事業承継等)を指します。
  • 伴走支援型融資はサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)、ポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)、ソーシャルローン(SL)、グリーンローン(GL)、77Seven Goalsが該当します。

エンゲージメント指標の実績

GHG排出量算定支援先数(累計)

サステナブルファイナンス実行額(累計)

(2021年4月〜)

伴走支援型融資実行件数(累計)

サステナブル関連手数料(単年度)

SDGs関連サービス支援先数(累計)

(2021年4月〜)

GHG排出量(Scope1,2,3)

(単位:t-CO2)

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項目 2013年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
Scope1 1,894 1,600 1,483 1,185 1,138 1,150
Scope2 14,901 10,597 8,848 8,079 7,295 5,653
合計(Scope1+2) 16,795 12,197 10,331 9,264 8,433 6,803
(2013年度比削減率) ▲27.3% ▲38.5% ▲44.8% ▲49.8% ▲59.5%
Scope3 10,013,332 8,535,613 8,220,881
合計(Scope1+2+3) 10,022,596 8,544,046 8,227,684
  1. 上記は「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」に基づく定期報告書における当行単体でのCO2排出量を記載し、再生可能電力利用分についてはCO2排出量を「0」として取り扱っています。
  2. 開示している排出量等につきましては、今後算定対象範囲の拡大、算定方法の変更や使用データの精緻化等に伴い、変動する可能性があります。

Scope3の内訳

今年度はScope3カテゴリ6,7,15に加えて、新たにカテゴリ1〜5を算定対象に拡大しています。Scope3算定においては、2024年4月に株式会社NTTデータが提供する「C-Turtle FE」を東日本の金融機関で初めて導入しており、算定の高度化に向けた取組みを実施しています。

Scope3カテゴリ15は、PCAFスタンダードに基づき算定しています。算定対象は、2025年3月末時点の当行投融資のうち、「国内法人事業性融資」、「国内株式」、「社債」を算定対象としています。なお、算定対象の全投融資金額に占めるカバー率は、91.7%となっています。

(単位:t-CO2)

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項目 2023年度 2024年度
Scope3合計 8,535,613 8,220,881
  カテゴリ1:購入した製品・サービス 15,527
カテゴリ2:資本財 3,647
カテゴリ3:燃料・エネルギー関連活動 1,392
カテゴリ4:輸送(上流) カテゴリ1に含む
カテゴリ5:廃棄物 591
カテゴリ6:出張 494 485
カテゴリ7:雇用者の通勤 1,159 1,134
カテゴリ15:投融資 8,533,960 8,198,105
  1. Scope3の算定には、環境省より発行されている「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(ver2.7)」「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(ver3.5)」を使用しています。
  2. PCAF(Partnership for Carbon Accounting Financials)は、投融資先のGHG排出量を計測・開示する基準を開発する国際的な枠組みです。
  3. Scope3カテゴリ15について、投融資先のGHG排出量であるファイナンスドエミッション(FE)および投融資先の売上高あたりのGHG排出量である炭素強度は、以下のとおり算定しています。

Scope3カテゴリ15の内訳

【当行投融資先全体】

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No TCFD18セクター 排出量 炭素強度 データクオリティ
スコア
1 電力ユーティリティ 2,089,009 20.2 2.43
2 資本財 1,580,503 2.3 2.91
3 加工食品・加工肉 540,213 4.3 3.58
4 トラックサービス 285,426 4.2 3.70
5 建設資材 253,599 10.4 2.26
6 石油及びガス 183,579 2.1 3.23
7 化学 183,187 3.0 1.84
8 金属・鉱業 175,593 4.2 1.75
9 不動産管理・開発 134,398 0.9 3.23
10 製紙・林業製品 127,425 5.2 2.07
11 自動車及び部品 64,055 0.6 2.17
12 農業 54,119 6.9 3.62
13 海上輸送 30,226 12.3 2.48
14 旅客空輸 29,255 11.6 3.33
15 鉄道輸送 23,583 2.0 1.76
16 飲料 13,446 3.5 3.89
17 航空貨物 2,455 2.4 4.00
18 石炭 744 8.1 4.00
19 その他 2,427,289 1.6 2.66
合計 8,198,105 2.7 2.76

【宮城県内事業者】

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No TCFD18セクター 排出量 炭素強度 データクオリティ
スコア
1 資本財 1,153,513 3.3 3.93
2 電力ユーティリティ 896,122 15.8 1.69
3 加工食品・加工肉 422,531 4.9 3.84
4 トラックサービス 160,410 3.8 3.98
5 石油及びガス 107,097 2.3 4.00
6 建設資材 95,672 14.0 3.97
7 不動産管理・開発 70,439 1.1 4.00
8 化学 52,072 4.2 3.63
9 農業 39,315 6.6 3.54
10 金属・鉱業 34,383 3.0 2.21
11 海上輸送 18,472 13.3 4.00
12 製紙・林業製品 17,623 2.9 3.54
13 自動車及び部品 16,902 2.1 3.7
14 飲料 7,154 3.6 4.00
15 鉄道輸送 1,172 4.0 4.00
16 航空貨物 1,022 2.4 4.00
17 旅客空輸 564 12.1 4.00
18 石炭
19 その他 1,420,872 1.8 3.79
合計 4,515,334 3.1 3.66

(単位)排出量:t-CO2、炭素強度:t-CO2/百万円

  1. 網掛はエンゲージメント優先セクターである「食品」「建設」「自動車」に該当するセクターです。
  2. 「19 その他」は、主に持株会社・事業協同組合等が該当します。