事業承継・M&Aお役立ちコラム
デューデリジェンス(DD)とは?種類や目的・手順を解説
デューデリジェンスとは、M&A前に対象企業の価値やリスクを調査する手続きです。目的や種類、進め方、費用の考え方を解説します。

M&Aを検討する際は、対象企業の財務状況や契約関係、労務リスクなどを事前に確認する必要があります。譲受後に想定外の債務や法的問題が見つかると、事業計画や資金計画に大きな影響が出るためです。
そこで重要になる手続きが、デューデリジェンスです。デューデリジェンスを行うことで、対象企業の実態を把握し、M&A価格や契約条件の判断に役立てられます。
本記事では、デューデリジェンスの意味や目的、主な種類、実施手順を解説します。

監修者:森 正樹
中小企業診断士。
2016年に独立後、事業承継やM&A、経営改善、人材戦略を中心に中小企業の支援を行っている。
現在はNBR合同会社のコンサルタントとして、地域金融機関と連携し、経営改善計画の策定から実行支援、企業再生、M&Aの実行支援およびPMIまでを一貫してサポート。「樹を見て、森も見る。」を自身の理念に掲げ、現場に寄り添った実践的な支援を大切にしている。
デューデリジェンス(DD)とは?

デューデリジェンス(買収監査)とは、M&Aの対象となる企業や事業について、最終契約を締結する前に書類や現地調査などによって詳細に調査・分析する手順を指します。いわば企業の「健康診断」のようなプロセスです。
英語では「Due Diligence」と表記し、M&A実務では「DD」と略す場合もあります。以下では、デューデリジェンスがなぜ必要なのかについて解説します。
1.デューデリジェンスの必要性
M&Aでは、譲受企業と譲渡企業の間に情報の差が生まれやすいものです。お互いが納得した上で取引を進めるために、デューデリジェンスは欠かせないステップといえます。
中小企業の決算書は簡易的な方法で作られることが多く、実際の経営状態と差異があるケースも少なくありません。帳簿だけでは見えない実態を正確につかむために、詳しい調査が必要です。
デューデリジェンスを実施する主な目的3つ

デューデリジェンスには、単なるリスクの洗い出しにとどまらない、重要な目的があります。ここでは代表的な3つを紹介します。
1.企業の本質的な価値と見えにくいリスクを見極めるため
表面的な財務データだけでは見えない、企業の真の価値やリスクを明らかにすることが主な目的です。例えば、帳簿に載っていない「簿外債務」や、将来発生する可能性がある「偶発債務」の有無を確認します。
また、企業の強みや弱み、事業の継続性・成長性を客観的に評価することで、M&Aを進めるかどうかを判断する根拠にもなります。
2.適正な価格設定と契約条件を導くための判断材料にするため
調査結果は、最終的な投資判断や価格交渉の材料として活用します。リスクが見つかった場合は、M&A価格の引き下げや、リスクを譲渡オーナー等が保証する「表明保証」条項の根拠として用いることができます。
また、調査結果をもとに、株式譲渡や事業譲渡といった最適なスキームを選ぶことも可能です。
3.譲受後のスムーズな統合(PMI)を実現するため
譲受はゴールではなく、その後の経営統合(PMI)を成功させることが本来の目的です。デューデリジェンスを通じて、ITシステムの統合しやすさや人事制度の違い等も事前に把握しておきます。
また、事業の中心となる人材を特定し、離職リスクへの備えを考える上でも、詳しい情報収集が欠かせません。
デューデリジェンスの主な種類

デューデリジェンスは、調べる領域によっていくつかの種類に分かれます。M&Aの目的や対象企業の業種に合わせて、必要な種類を選ぶことが大切です。
1.ビジネスデューデリジェンス
経営コンサルタント等が中心となり、事業モデル・市場環境・競争力を分析します。M&A後にシナジー効果が見込めるか、事業計画に実現可能性があるかを確認することが主な目的です。
2.財務デューデリジェンス
税理士・公認会計士等が主導し、決算書の信頼性や実態純資産を調べます。中小企業のM&Aで最も一般的な調査であり、簿外債務の有無や収益力(EBITDA等)が適正かどうかを確認します。
3.法務デューデリジェンス
弁護士が中心となり、各種契約・許認可・訴訟リスク・知的財産権の帰属などを詳しく調査します。特に、株主や経営権の変更により契約解除や事前承諾が必要となる「チェンジオブコントロール(COC)条項」の有無は、見落とせないポイントです。
4.税務デューデリジェンス
税理士等が過去の税務申告の内容を確認します。過去の申告漏れによる追徴課税リスクや、譲受後に引き継ぐ繰越欠損金の有無なども、調査の対象となります。
5.人事(労務)デューデリジェンス
社会保険労務士等が雇用体系や未払い残業代の有無を確認します。未払い残業代は譲渡企業側が把握していないこともあり、後から多額のリスクに発展するケースもあるため、丁寧な確認が必要です。
6.ITデューデリジェンス
ITコンサルタントがシステムの脆弱性・保守コスト・システム統合のしやすさを調べます。DX化が進む中、セキュリティリスクやシステム刷新にかかる費用の把握は、ますます重要になっています。
7.環境デューデリジェンス
製造業等を対象に、土壌汚染や産業廃棄物の管理状況、環境法規制への対応状況を専門家が調べます。問題が見つかった場合、是正に多額の費用がかかることもあり、事前の把握が重要です。
8.人権デューデリジェンス
強制労働やハラスメントなどの人権問題リスクをサプライチェーン全体で評価します。近年はESG投資の観点から、ブランド価値を守るために大手企業を中心に注目が高まっています。
デューデリジェンスの具体的な実施手順

デューデリジェンスは、段階を踏んで体系的に進めることが大切です。ここでは、実務における主な3つのステップを説明します。
1.調査チームの組成・方針決定
M&Aの目的や予算に合わせて、弁護士や会計士などの外部専門家を選び、チームを編成します。すべての項目を網羅するのは難しいため、重点的に調べる範囲(スコープ)を最初に決めておくことが重要です。
2.資料開示とヒアリングの実施
譲渡企業に対し「リクエストリスト」を提示し、提供された資料(データルーム)を分析します。さらに、経営陣へのヒアリングや工場・店舗の現地視察も行い、書類だけでは見えない実態を確かめます。
なお、デューデリジェンスでは、対象企業の財務情報や契約書など機密性の高い資料を閲覧することになります。そのため、調査開始前に譲渡企業・譲受企業の双方が秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)を締結するのが一般的です。
NDAを締結することで、調査を通じて得た情報の外部漏洩を防ぐとともに、M&Aの交渉自体が社外に知られるリスクも軽減できます。
3.調査結果の分析・報告書作成
各専門家の報告書をもとに、リスクを整理・評価します。その結果を踏まえ、経営陣が「M&Aを中止するか」「買収価格を見直すか」「契約条件でリスクをカバーするか」を最終的に判断します。
デューデリジェンスの結果、重大なリスクや問題が発見された場合、それを「レッドフラッグ」と呼びます。レッドフラッグが確認された場合、買収価格の引き下げ交渉、契約条件の変更、状況によっては取引の中止といった対応が考えられます。
なお、デューデリジェンスですべてのリスクを事前に把握できるとは限りません。デューデリジェンスで発見できなかった潜在的なリスクに備えるため、最終契約では「表明保証条項」が設けられるのが一般的です。これは、売主が対象会社に関する一定の事項が真実であると表明・保証し、事後に問題が発覚した場合に補償責任を負う仕組みです。
デューデリジェンスは単なる確認作業ではなく、M&Aを進めるかどうか、どのような条件で進めるかを判断するための重要なプロセスです。また、表明保証条項とあわせて活用することで、M&Aにおけるリスク管理の実効性を高められます。
実施タイミングと費用相場

デューデリジェンスをいつ、どのくらいの費用で行うのかは、M&Aの計画を立てるうえで事前に把握しておきたいポイントです。ここでは、一般的な実施タイミングと費用相場を解説します。
1.いつ行うのか?期間はどれくらい?
デューデリジェンスは、一般的に「基本合意書(MOU:Memorandum of Understanding)」を締結した後、最終契約を結ぶ前のフェーズで実施します。
M&Aでは、候補先の選定や初期的な交渉を経て、基本的な条件に合意した段階で基本合意書を締結します。その後、譲受企業が対象企業の財務・法務・事業等を詳しく調査し、最終的な譲受判断や契約条件の調整を行います。
期間の目安は1~2ヶ月程度です。ただし、対象企業の規模が比較的小さい場合や、調査範囲が限定される場合は数週間で完了することもあります。
反対に、事業規模が大きい場合や、財務・法務・労務等複数の論点を詳しく確認する必要がある場合は、3ヶ月以上かかるケースもあります。
2.費用相場は?
デューデリジェンスの費用は、原則として調査を主導する譲受企業が負担します。中小企業のM&Aでは100万~500万円程度が一つの目安ですが、対象企業の規模や調査範囲によっては、数千万円に達するケースもあります。
会計士や弁護士等への報酬は、時間単価または固定報酬で計算されるケースが一般的です。時間単価の場合は、1時間あたり2万~5万円程度が目安となります。
デューデリジェンスを成功させるためのコツ

デューデリジェンスの精度を高め、M&Aをスムーズに進めるには、事前に押さえておきたいポイントがあります。ここでは、デューデリジェンスを進める際に意識したい4つのコツを解説します。
1.専門家に依頼する
デューデリジェンスを自社だけで進めると、重大なリスクを見落とす可能性があります。特に、財務・法務・税務等の専門領域は、会計士や弁護士、税理士等外部の専門家に依頼するのが一般的です。
一方で、すべてを外部に任せるのではなく、自社の担当者も事業理解や判断に関わる必要があります。外部専門家の知見と自社の事業判断を組み合わせることで、より実効性の高いデューデリジェンスを行いやすくなります。
2.優先順位をつける
限られた時間と予算の中で、すべての項目を同じ深さで調査するのは現実的ではありません。そのため、リスクの大きさやM&Aへの影響度に応じて調査の深さを変える「リスクベース・アプローチ」が効果的です。
例えば、財務面に大きな懸念がある場合は財務デューデリジェンスを重点的に行い、許認可や契約関係が重要な事業では法務デューデリジェンスを丁寧に確認します。重要度の高い領域に優先的にリソースを配分することで、効率よく調査を進められます。
3.情報管理を徹底する
デューデリジェンスでは、財務資料・契約書・顧客情報・人事情報等、機密性の高い情報を扱います。そのため、調査開始前に秘密保持契約(NDA)を締結し、情報の取り扱いルールを明確にしておくことが重要です。
また、仮想データルーム(VDR)を利用する場合は、閲覧権限やダウンロード権限を適切に設定する必要があります。誰が、どの資料に、いつアクセスしたのかを管理できる体制を整えておくことで、情報漏洩のリスクを抑えやすくなります。
4.譲渡企業に配慮する
デューデリジェンスは、譲渡企業側から見ると「あら探し」をされているように感じられる場合があります。また、資料の準備や追加質問への対応等、譲渡企業側にも一定の負担がかかります。
そのため、譲受企業は調査の目的や必要な資料をわかりやすく伝え、譲渡企業に過度な負担がかからないよう配慮することが大切です。信頼関係を保ちながら進めることで、必要な情報を共有しやすくなり、M&Aの円滑な進行にもつながります。
デューデリジェンスに関するよくある質問
最後にデューデリジェンスに関するよくある質問を紹介します。
1.小規模なM&Aでもデューデリジェンスは行うべき?
実施をおすすめします。対象企業の規模にかかわらず、簿外債務や未払い残業代、契約上の問題などのリスクが存在する可能性があるためです。
M&A後に想定外の損失やトラブルが発生しないよう、少なくとも重要な項目については事前に確認しておきましょう。調査範囲を限定するなど、規模や目的に応じて進め方を調整することも可能です。
2.デューデリジェンスは自社だけで対応可能?
デューデリジェンスを自社だけで進めること自体は可能です。ただし、専門知識や客観的な視点が不足すると、重要なリスクを見落とす恐れがあります。
そのため、事業内容や社内事情の確認は自社で行い、財務・法務・税務・労務等の専門領域は外部専門家に依頼する進め方が現実的です。自社の事業理解と専門家の知見を組み合わせることで、調査の精度を高めやすくなります。
3.調査でリスク発覚。M&Aは中止になる?
すぐに中止になるとは限りません。多くの場合、買収価格の見直しや契約条件の調整、表明保証条項・補償条項等によってリスクへの対応を検討します。
ただし、リスクの内容が重大で、譲受後の経営に大きな影響を及ぼすと判断される場合は、取引を中止するケースもあります。デューデリジェンスは、M&Aを進めるかどうかだけでなく、どのような条件で進めるべきかを判断するための重要な材料になります。
まとめ

デューデリジェンスは、M&Aを成功に導くために欠かせない調査プロセスです。財務・法務・税務・労務など幅広い領域を確認することで、表面的な情報だけでは見えないリスクを事前に把握し、適正な買収価格や契約条件を検討する際に役立てられます。
対象企業の規模が小さい場合でも、「小規模だから不要」と判断するのは避けましょう。簿外債務や未払い残業代、契約上の問題等は、企業規模にかかわらず発生する可能性があります。調査範囲を適切に絞りながら、最低限必要な確認を行うことが大切です。
また、デューデリジェンスは譲受後の経営統合まで見据えて進める必要があります。自社だけで対応が難しい領域は、会計士・税理士・弁護士などの外部専門家に相談し、見落としのリスクを抑えながら慎重に進めましょう。
七十七銀行では、M&Aに関するご相談を承っています。「何から始めればよいかわからない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。
※この記事は2026年4月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。


