事業承継・M&Aお役立ちコラム

事業承継とは?定義・3つの種類・進め方を初心者向けにわかりやすく解説

事業承継とは、経営権や資産、想いを次世代へつなぐ重要なプロセスです。後継者不在が深刻化する今、親族内・社内承継に加えM&Aの活用も広がっています。本記事では、3つの承継手法のメリット・デメリットや進め方、最新の支援策を初心者向けに解説します。

「後継者がいない」「何から手をつければいいのか」 経営者の高齢化が進む今、事業承継はすべての経営者にとって避けて通れない最重要課題です。こうした課題を解決する方法は、親族への承継だけでなく、社内承継やM&Aなど多様化しています。

事業承継とは、単なる社長交代ではありません。会社が築き上げた資産や技術、そして「想い」を次世代へつなぎ、さらなる発展を目指すプロセスです。

本記事では、事業承継の定義と3つの種類、具体的な進め方、最新の補助金制度までを初心者向けにわかりやすく解説します。

監修者:森 正樹

中小企業診断士。
2016年に独立後、事業承継やM&A、経営改善、人材戦略を中心に中小企業の支援を行っている。

現在はNBR合同会社のコンサルタントとして、地域金融機関と連携し、経営改善計画の策定から実行支援、企業再生、M&Aの実行支援およびPMIまでを一貫してサポート。「樹を見て、森も見る。」を自身の理念に掲げ、現場に寄り添った実践的な支援を大切にしている。

事業承継とは?定義と目的

事業承継とは、経営者が会社の経営権や株式などの資産を含む経営資源を、次世代へ引き継ぐことを指します。

事業承継の目的は、単に経営者を交代させることにとどまりません。培ってきた技術やノウハウを守り、従業員の雇用や取引先との関係、会社としての信用力を維持しながら、事業を継続的に発展させていくことにあります。会社を次の世代へつなぎ、地域や社会に果たしてきた役割を維持する点も重要な目的です。

また、事業承継は早期に準備を始めることが重要です。現経営者の高齢化や病気といった不測の事態が発生した場合でも、あらかじめ承継計画を立てておくことで、経営への影響を最小限に抑えながら、事業の存続を図ることが可能になります。

事業承継で引き継ぐ3つの経営資源

事業承継を成功させ、後継者が安定して会社を経営していくためには、単なる株式の移転や代表者の交代だけでは事足りません。事業の継続と成長を実現するには、多岐にわたる経営資源を総合的に引き継ぐことが重要です。

中小企業庁のガイドラインなどでは、事業承継において引き継ぐべき経営資源として、後継者に承継すべき経営資源は多岐にわたりますが、「人(経営)」、「資産」、「知的資産」の3要素に大別されます。これらをバランスよく承継できるかどうかが、事業承継の成否に直結します。

人(経営)の承継

経営の承継は、「人の承継」とも呼ばれ、代表取締役の地位と役割を後継者へ引き継ぐことを意味します。名目上の社長交代ではなく、実質的に経営判断を担える体制を整えることが重要です。

中小企業では、経営者の資質が業績に与える影響が大きい傾向があります。そのため、後継者候補の選定はできるだけ早期に行い、経営者として必要な知識や判断力を身に付けるための十分な育成期間を設けることが求められます。

資産の承継

資産の承継とは、事業運営に必要な物的・財務的資産を後継者に引き継ぐことを指します。具体的には、会社の所有権を示す自社株式のほか、事業用の不動産や設備、運転資金、借入金などが含まれます。

特に、オーナー経営者が個人で事業用資産を所有し、会社に貸し付けている場合には、その資産の扱いを整理しておくことが重要です。承継の方法によっては、多額の贈与税や相続税が発生する可能性があるため、税理士などの専門家に相談しながら、計画的に手続きを進める必要があります。

知的資産の承継

知的資産の承継とは、会社の競争力の源泉となる、目には見えない無形資産を引き継ぐことを意味します。これには、経営理念や社風、従業員の技術や技能、独自のノウハウ、ブランド、顧客基盤、取引先との関係性、経営者個人の信用などが含まれます。

知的資産が十分に承継されない場合、形式的には事業承継が完了していても、承継後に業績が低迷するリスクがあります。そのため、現経営者が自社の強みや価値を明確にし、後継者や従業員と共有していく取り組みが重要となります。

データで見る事業承継の現状

事業承継をめぐる課題は、個々の企業の問題にとどまらず、日本経済全体に影響を及ぼす重要なテーマとなっています。

各種調査データからは、中小企業経営者の高齢化や後継者不在の深刻化、さらには廃業の増加といった現状が浮き彫りになっています。

中小企業経営者の高齢化と後継者不在の深刻な現状

帝国データバンクの「全国「社長年齢」分析調査(2024年)」によると、全国の経営者の平均年齢は上昇を続けており、2024年には過去最高の60.7歳に達しました。経営者の高齢化が進む一方で、後継者不在の問題は依然として深刻です。*1

また、同社の「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」によると、中小企業の後継者不在率は51.2%です。年代別では60代が35.9%、80代以上で22.2%と、多くの企業が次世代へのバトンタッチに課題を抱えている状況です。*2

休廃業・解散の増加と廃業のデメリット

経営者の高齢化と後継者不在を背景に、企業の休廃業・解散は増加傾向にあります。同社の「全国企業「休廃業・解散」動向調査(2024年)」によると、2024年の休廃業・解散件数は6万9019件と、約7万件に迫る水準となりました。*3

廃業を選択した場合、事業用不動産の売却や機械設備の撤去などにより、多額の廃業コストが発生するケースもあります。場合によっては数百万円規模の負担となり、経営者の引退後の生活資金を圧迫する要因にもなります。

また、廃業によって長年培ってきた技術やノウハウ、顧客基盤が失われるだけでなく、従業員が職を失うことになり、地域経済や社会全体にとっても大きな損失となります。

親族外承継の一般化

後継者確保が難しくなる中で、事業承継の選択肢は多様化し、親族外承継が主流になりつつあります。2025年の調査では、内部昇格による社内承継が36.1%となり、同族承継の32.3%を上回りました。*2

また、中小企業庁の資料によると、M&Aによる第三者承継も増加傾向にあり、国内の中小M&Aの実施件数は増加しており、2022年度の実施件数は、事業承継・引継ぎ支援センターを通じたものが1,681件、民間M&A支援機関を通じたものが4,036件となっています。*4

このように、M&Aは国の後押しもあり注目を集めています。以前は「大企業のための手法」「リストラが行われる」といった誤解も見られましたが、近年は事業承継の選択肢の一つとして、認知が徐々に広がってきています。

事業承継の3つの種類とメリット・デメリット

事業承継には3つの種類があり、「親族内承継」「社内承継」「M&Aによる第三者承継」です。それぞれにメリットとデメリットがあり、自社の状況や経営者の考え方に応じて適切な方法を選択することが重要です。

1. 親族内承継のメリットとデメリット

親族内承継は、経営者の親族(子息、息女、甥、姪など)に事業を引き継ぐ方法で、かつては日本の事業承継の大部分を占めていました。

メリットとしては、後継者教育のための準備期間を比較的長く確保しやすい点が挙げられます。また、従業員や取引先から心情的に受け入れられやすく、事業承継に伴う不安から、顧客離れや従業員離れが起きるリスクを抑えやすい点も特徴です。贈与や相続と組み合わせて株式を引き継ぐことが一般的であり、税法上の優遇制度を活用できる可能性もあります。

一方で、必ずしも経営者として適性のある親族が存在するとは限らず、本人に承継の意思がないケースも増えています。経営者の資質が十分でない人物に承継を進めた場合、従業員や取引先の反発を招くおそれがあります。

また、後継者候補本人に辞退される可能性や、他の親族との関係悪化による相続トラブルが生じるリスクも考慮する必要があります。

2. 社内承継のメリットとデメリット

社内承継は、親族以外の役員や従業員に事業を引き継ぐ方法で、「従業員承継」とも呼ばれます。

メリットは、現経営者が日常業務を通じて後継者候補の資質や適性を見極めやすい点です。事業内容や社内事情を熟知した人材に承継するため、実務面での引き継ぎが比較的スムーズに進みやすく、従業員からの納得感も得られやすい傾向があります。また、株式を売却することで、現経営者が一定の資金を確保できる点も特徴です。

一方で、後継者候補が周囲との関係性の変化を懸念し、承継を辞退するケースも少なくありません。加えて、株式の評価額が高額になる場合が多く、後継者候補が株式取得資金や納税資金を用意できないといった資金面の課題が生じやすい点がデメリットとなります。

M&Aによる事業承継(第三者への承継)のメリットとデメリット

M&Aによる事業承継は、第三者(企業または個人)に会社や事業を引き継ぐ方法です。親族や社内に後継者がいない場合でも、広く承継先を検討できる点が特徴です。

メリットとしては、後継者の選択肢を大きく広げられる点が挙げられます。会社や事業を存続させながら、従業員の雇用や取引関係を維持できる可能性があり、事業の継続性を高めることにつながります。また、譲受企業の経営ノウハウや資金力を活用することで、中長期的な成長を実現できる可能性もあります。

一方で、希望条件に合致する譲受企業が必ずしも見つかるとは限らず、条件交渉が長期化、あるいは難航する場合もあります。また、企業文化や経営方針、経営理念といった知的資産の違いから、承継後の運営に調整が必要となる場合があります。円滑な引き継ぎのためには、PMI(統合プロセス)を含めた十分な準備が欠かせません。

事業承継の基本的な流れと計画・実行の4ステップ

事業承継を成功させるには、少なくとも数年、場合によっては10年以上の時間をかけて、経営の中長期計画として取り組む必要があります。

経営者の引退が目前に迫ってから検討を始めるのではなく、早い段階から準備を進めることが、円滑な承継につながります

Step 1. 承継の準備

事業承継の第一歩として、自社の経営状況や課題を客観的に把握し、「見える化」することが不可欠です。財務状況をはじめ、自社の強みや弱み、保有する経営資源、商流や組織体制などを改めて整理し、事業承継に向けた課題を明確にします。

この現状把握は、経営者自身の視点だけで行うのではなく、専門家や金融機関の協力を得ることで、第三者の視点を取り入れることが効果的です。課題が明確になったら、競争力の強化や財務改善、社内体制の見直しといった「磨き上げ」に取り組み、後継者が安心して事業を承継できる環境を整備していきます。

Step 2. 承継計画の策定と後継者教育(親族内・社内承継)

親族内承継や社内承継を選択する場合には、後継者候補本人の意思を確認したうえで、具体的な事業承継計画を策定します。計画では、「いつ、誰に、何を、どのように引き継ぐのか」といった承継の行動計画を、中長期的な経営目標とあわせて整理します。

後継者を選定した後は、十分な期間を確保して後継者教育に取り組むことが重要です。社内の主要部門を経験させるローテーションや、経営幹部としての参画、社外セミナーや研修への参加などを通じて、経営者として必要な知識や判断力を段階的に身に付けさせていきます。

Step 3. 承継の実行

承継計画に基づき、経営権や経営資源、株式や事業用資産といった物的資産の引き継ぎを実行します。この段階では、株式の譲渡や贈与、相続など、承継方法に応じた契約書の作成や税務申告などの手続きが必要となります。

後継者側の資金不足や納税資金の負担が課題となるケースも多いため、専門家に相談しながら、株式取得資金や承継後の運転資金の確保、財務調整を計画的に進めることが重要です。また、現経営者が個人保証を行っている場合には、その整理や解除についても重要な検討事項となります。

Step 4. 関わる人の理解を得る

事業承継を成功に導くためには、後継者だけでなく、従業員や取引先、金融機関など、関係するステークホルダーの理解と協力を得ることが欠かせません。承継は、経営者と後継者だけの問題ではなく、会社全体に関わるプロセスです。

現経営者は、後継者を現場に迎え入れ、金融機関や取引先との会合に同席させるなど、円滑な関係づくりを意識的に進める必要があります。会社の信用力を維持するためにも、経営理念や事業に対する現経営者の「想い」を後継者と共有し、関係者に丁寧に伝えていくことが、事業承継を円滑に進めるうえで非常に重要となります。

事業承継にかかる費用と支援策|税制・補助金の活用

事業承継を検討する際、多くの経営者が不安に感じるのが「どれくらい費用がかかるのか」という点です。実際、事業承継には税金や専門家への報酬など、一定のコストが発生します。

一方で、国は事業承継を重要な経済政策と位置づけ、税制や補助金による支援策を用意しています。これらを正しく理解し、活用することで、承継時の負担を大きく軽減することが可能です。

事業承継で発生する主な費用:税金と専門家への報酬

事業承継で発生する費用は、大きく「税金」と「専門家への報酬」に分けられます。

税金については、親族内承継で株式を相続または贈与した場合、後継者に対して相続税や贈与税が課されます。株式評価額が高い場合には、多額の税負担が生じることもあり、事業承継が進まない大きな要因の一つとなっています。

一方、社内承継やM&Aにより株式を売却した場合には、現経営者に対して売却益(譲渡所得)が発生します。この場合、譲渡所得に対しては、一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の税率で所得税・住民税・復興特別所得税が課税されます。*5

また、事業承継を円滑に進めるためには、税理士や弁護士、M&Aアドバイザーなどの専門家の支援が欠かせません。これらの専門家への報酬も、事業承継における重要な費用の一つとなりますが、手続きや交渉、リスク管理を適切に行うために必要なコストといえます。

事業承継税制(特例措置)の仕組み

事業承継税制は、後継者が取得した非上場株式にかかる相続税や贈与税の納税を猶予し、事業承継に伴う税負担を大幅に軽減する制度です。株式の取得時に多額の納税資金を用意できないという課題に対応するために設けられています。

特に、2026年3月までに特例事業承継計画を提出し、2027年までに事業承継を実施する必要があります。一定の要件を満たし、事業を継続した場合には、最終的に税金が免除される仕組みとなっています。

この制度を活用することで、後継者は株式取得時の資金負担を大きく軽減でき、事業運営に必要な資金を確保しやすくなります。ただし、制度の適用には事前の計画策定や各種要件の確認が必要となるため、専門家と相談しながら進めることが重要です。

事業承継・M&A補助金など補助金活用のメリット

事業承継を支援する国の施策として、「事業承継・M&A補助金」があります。この補助金は、親族内承継、社内承継、M&Aによる第三者承継といった、さまざまな事業承継の形態を目安に、承継を契機とした経営革新や新たな取り組みを支援する制度です。

補助対象となる経費には、M&A時に必要となる専門家活用費用(M&Aアドバイザーへの報酬、デューデリジェンス費用など)のほか、設備投資や販路開拓、PMI(M&A後の事業統合に向けた取り組み)にかかる費用などが含まれます。

補助金を活用することで、事業承継や引き継ぎに伴う金銭的負担を軽減できるだけでなく、承継後の経営改善や成長に向けた取り組みを後押しすることが可能になります。制度内容や公募時期は変更されることがあるため、最新情報を確認しながら検討することが大切です。

失敗を避ける!事業承継の相談先と注意点

事業承継は、経営、税務、法務、人の問題が複雑に絡み合うため、現経営者一人で判断することは容易ではありません。承継を円滑に進め、失敗を避けるためには、早い段階から適切な相談先を活用し、計画的に準備を進めることが重要です。

事業承継の相談先

事業承継を検討する際は、一人で悩まず、専門家や支援機関に相談することが重要です。主な相談先としては、日頃から経営状況を把握している顧問税理士のほか、取引のある金融機関、商工会議所、事業承継・引継ぎ支援センターといった公的機関が挙げられます。

これらの機関では、税務や資金面だけでなく、後継者問題や承継方法の整理など、事業承継全体を見据えた助言を受けることができます。また、M&Aによる事業承継を検討する場合には、「M&A支援機関登録制度」に登録された金融機関やM&Aアドバイザーへ相談することも有効な選択肢です。

相談相手を選ぶ際には、士業や専門家としての肩書きだけで判断するのではなく、実際に中小企業の事業承継を支援してきた実績があるかどうかを確認することが重要です。経験豊富な相談先を選ぶことで、自社の状況に即した現実的な対策を講じやすくなります。

事業承継は計画的に

事業承継を成功させる最大のポイントは、現経営者が元気なうちに検討を始め、計画的に準備を進めることです。事業承継には数年以上の準備期間を要するケースが多く、急病や高齢化など、差し迫った状況になってからでは十分な対策が間に合わないリスクがあります。

特に後継者にとっては、経営経験の不足による精神的な負担に加え、株式取得や納税資金の確保といった資金面の負担が大きくなりがちです。そのため、後継者の状況に配慮しながら、段階的な育成と資金準備を進めていくことが不可欠となります。

また、親族内承継の場合は、相続問題と密接に関わるため、家族間で十分に話し合うことが重要です。遺言書の作成などの対策を講じることで、承継後の親族間トラブルを未然に防ぐことにつながります。

まとめ:事業承継は中小企業の未来をつなぐ重要な経営判断

事業承継は、単なる経営者交代や株式の引き継ぎではありません。経営権や資産に加え、長年培ってきた技術やノウハウ、経営理念、従業員や取引先との信頼関係といった、有形無形の経営資源を次世代へつないでいく、経営者にとって極めて重要な経営判断です。

本記事で見てきたとおり、日本の中小企業では経営者の高齢化と後継者不在が深刻化する一方、事業承継の方法は親族内承継に限らず、社内承継やM&Aによる第三者承継へと大きく広がっています。どの方法を選択する場合でも、早めに現状を整理し、計画的に準備を進めることが、円滑な承継と承継後の安定経営につながります。

また、事業承継には税務・法務・資金面など、専門的な検討が不可欠です。税制や補助金といった国の支援策を活用しながら、自社にとって最適な承継方法を検討するためには、信頼できる相談先の存在が重要となります。

七十七銀行グループでは、地域金融機関として長年にわたり培ってきたネットワークとノウハウを活かし、事業承継に関する幅広い相談に対応しています。本部専任の担当者が、現状整理から承継方法の検討、専門家との連携まで、一貫したサポートを行っている点が特長です。金融機関としての厳格な情報管理体制のもと、秘密保持を徹底しながら安心して相談できる環境が整えられています。

事業承継はまだ先の話と感じている段階でも、相談してみることが大切です。会社の未来、従業員の生活、地域とのつながりを守るためにも、まずは情報収集や無料相談から一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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※この記事は2026年1月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。

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