資産運用NISAは全世代対象になる?未成年の口座開設が可能になったときの活用法

2025年8月、金融庁が発表した「NISAの全世代対象」の方針に注目が集まっています。現在、18歳未満の未成年はNISA口座を持つことができませんが、もし制度が拡充されれば、将来的に家族全員でNISAを使える時代が訪れるかもしれません。

本記事では、NISAが全世代対象化が実現した場合のメリット・課題をわかりやすく解説します。

金子賢司

【執筆・監修】
金子賢司

CFP資格所有(FP1級と同等)
東証一部上場企業(現在は東証スタンダード市場)で10年間サラリーマンを務める中、金融に興味を持ち、資産運用やローンなどの勉強を始める。
その後、生命保険会社、損害保険会社での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。現在は、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。

NISAの基本とこれまでの制度の流れ

NISA制度は、個人の資産形成を支援するための非課税投資制度として、2014年に始まりました。少額からの長期的な投資を後押しする目的で導入され、段階的に拡充されてきました。ここでは、これまでの制度の概要と変遷を整理し、今後の制度拡充に向けた基礎知識を確認します。

NISAとは?簡単なおさらい

NISAは「少額投資非課税制度」の略称で、2014年に開始されました。個人が株式や投資信託などに投資した際に得られる運用益が非課税となる制度です。

2024年からは「新NISA」として制度が刷新され、つみたて投資枠と成長投資枠が併用できるようになりました。非課税保有期間が無期限となり、年間投資枠の上限も拡充されています。これにより、多様な投資ニーズに対応できる制度へと進化しています。

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ジュニアNISA制度とは?廃止された背景

ジュニアNISAは、未成年者向けの非課税投資制度として2016年に導入されました。年間80万円までの投資が非課税となる制度でしたが、2023年末をもって新規受付が終了しました。

最大の課題は、18歳までの引き出し制限や他口座への資産移管ができない使いにくさでした。また、制度の認知度が低く、利用が広がらなかったことも廃止の一因です。保護者が管理する仕組みはあったものの、実用面での柔軟性に欠けていました。

現在のNISA制度では未成年は口座が作れない

2024年から導入された新NISAでは、口座開設対象が18歳以上に限定されています。つまり、現行制度では、未成年者が新たにNISA口座を持つことは認められていません。したがって、家族で投資を始めたいと考えても、未成年の子どもは非課税制度の枠外となっています。

この制限は、資産形成の早期スタートや金融教育の観点から課題とされており、制度の柔軟化が望まれています。

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金融庁・こども家庭庁が示したNISAの拡大方針とは?

金融庁とこども家庭庁は2025年8月、令和8年度の税制改正要望において、「NISA対象商品の拡充を含む制度の充実」を打ち出しました。

具体的には、「あらゆる世代が自身のライフプランに沿った形で資産形成を行えるよう、対象商品の拡充を含め、NISAの一層の充実のための措置を講ずること。」※と記されており、これは、未成年も含めた全ての世代がNISAを活用できるよう制度を見直す構想です。

ここでは、全世代対象化が意味する内容や、どのような制度変更が想定されるのかを解説します。

※出典:金融庁「令和8年度税制改正要望(金融庁)」N14.NISA対象商品の拡充を含む制度の充実
※出典:こども家庭庁「令和8年度税制改正要望(こども家庭庁)」NO4.NISA対象商品の拡充を含む制度の充実

どんな変更が想定される?

制度改正が実現した場合、まず未成年向けには「つみたて投資枠」のみが開放される見通しです。未成年でNISA口座が運用できれば、ジュニアNISAと異なり、引き出し制限が緩和されるほか、制度の柔軟性も高まる可能性があります。

さらに、つみたて対象商品は金融庁が定めた要件を満たした長期投資向けの商品に限定されることで、未成年の過度なリスク負担を防ぐ設計が検討されています。

資産形成を早期に始められる仕組みを整えることで、将来的な格差の縮小や金融リテラシーの向上を狙っています。この全世代化により、家族単位での資産形成が一層推進される可能性があります。

全世代化が実現した場合のメリット・デメリット

NISAの全世代化が実現すれば、未成年も非課税投資の恩恵を受けられるようになります。本章では、未成年本人とその保護者にとっての具体的な利点に加え、制度運用に 際して考えられる課題やリスクについて整理します。

未成年にとってのメリット

未成年がNISAを活用できれば、長期運用による複利効果を最大限に活かせます。早期から資産形成を始めることで、将来的な経済的自立を支援する土台が整います。

また、投資を通じた金融教育の機会が得られることも大きなメリットです。学齢期から資産運用に関心を持つことは、経済の仕組みを理解する良い教材となります。これらの点で、未成年へのNISA解放は多方面において有益です。

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親・家族にとってのメリット

家族単位で非課税投資枠を最大化できる点は、保護者にとって大きなメリットです。教育資金や将来の独立資金として、子ども名義で資産を積み立てることが可能になります。

また、子どもが小さいうちは保護者が管理することで、親子間で投資経験や知識を共有できます。投資という実践的なテーマを通じて、家族内の経済教育が進む点も見逃せません。こうした制度は、家族全体の資産形成戦略において有効です。

想定されるデメリット・課題

一方で、全世代化にはいくつかの懸念も存在します。

まず、未成年本人が運用判断を行えないため、保護者の管理責任が重くなります。また、成人後に子どもが資金を自由に使用する際に、親の意図と異なる使途になる可能性もあります。

さらに、元本割れのリスクや、制度を悪用した名義貸しなどの不正利用のリスクも否定できません。制度設計には、こうしたリスクに対する対策が求められます。

未成年対象のNISAが実現した場合の活用アイデア

制度改正によって未成年もNISAを使えるようになった場合、どのように活用すれば効果的でしょうか。ここでは、具体的な運用スタイルと保護者としての管理方法を紹介し、現実的な活用のヒントを解説します。

教育資金を非課税で準備する

例えば、子ども手当の一部をNISAに回して、0歳から毎月1万円を投資信託で積み立て、年利3%で運用した場合、18年後には約285万円の資産になります。

元本は216万円ですが、長期の複利運用によって約69万円の運用益が上乗せされます。

この金額は、国立大学の授業料4年分や、私立大学への進学準備費用として活用できる水準です。

教育資金の準備手段としては学資保険が一般的ですが、加入時期に制限があるうえ、リスクは少なくても増やすという面では見劣りする点は否定できません。一方で、NISAは自分の意思でいつでも始められる柔軟性があり、元本割れリスクはありますが、大きく増やせる可能性もあります。

仮に中学から大学入学までの5年間という短期でも、積立投資によって一定の資産形成は可能です。ただし、期間が短い場合は長期運用の効果が働きにくく、元本割れをしやすいため、慎重な商品選定と目的に応じた運用設計が必要です。

未成年NISAが制度化されれば、こうした中期の教育資金計画にも非課税の恩恵を活かすことができるでしょう。

子どもの独立資金を確保する

0歳から毎月2万円を積み立て、年利5%で20年間運用した場合、最終的な資産額は約812万円に達します。これは、引っ越し費用、結婚資金、留学費用、起業準備金など、人生の節目に必要なまとまった支出を支える金額です。

さらに、この資産は一度に使い切る必要はありません。必要なタイミングで必要な分だけ取り崩し、残額を引き続きNISA口座で運用すれば、複利の効果を活かしながら将来の支出にも備えることが可能です。

このように、少額でもコツコツと積み立て時間を味方にすること、非課税制度を組み合わせることで、資産は使いながら育てる形へと進化します。

長期積立にはインデックス型投資信託がおすすめ

未成年のNISA口座では、インデックス型投資信託を活用した長期積立が有効です。20年以上の運用期間を前提とすることで、複利効果を引き出せます。

また、リスク分散を図るために、国内外の複数資産に分散投資することが望ましいです。長期投資と分散投資も組み合わせることで、短期の値動きに左右されず、着実な資産形成を目指す運用が可能です。分散投資は、リスク許容度に応じて、投資先を慎重に選ぶ姿勢が求められます。

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まとめ

現在、NISA制度は18歳以上を対象としており、未成年は利用できません。しかし、金融庁が示した全世代対象化の方針により、未成年がNISAを利用できる制度への移行が検討されています。ただし、あくまでも長期的な資産形成を後押しするという観点から、つみたて投資枠に限定される予定です。

ただし、制度を悪用した名義貸しのリスクや、保護者がどのように管理をするのかなど、議論の余地はまだ残されています。制度が実現すれば、家族全体で非課税投資の恩恵を受けることが可能になります。今後の議論や制度設計の動向を注視しつつ、準備を進めましょう。

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※この記事は2025年9月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。

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