資産運用iDeCoとNISAはどっちを優先する?違い・使い分け・年代別の選び方を解説

NISAとiDeCo、どちらも税制優遇を受けながら資産形成ができる制度ですが、違いも多くあります。この記事では、両制度の基本からメリット・デメリット、具体的な違いのほか、30代~60代の年代別おすすめ活用法を解説します。ご自身に合った制度選びの参考にしてください。

金子賢司

【監修】
金子賢司

CFP資格所有(FP1級と同等)
東証一部上場企業(現在は東証スタンダード市場)で10年間サラリーマンを務める中、金融に興味を持ち、資産運用やローンなどの勉強を始める。
その後、生命保険会社、損害保険会社での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。現在は、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。

NISAとiDeCoとはどのような制度かおさらい

NISAとは少額投資非課税制度のことで、一定の投資額までであれば、投資で得た利益に税金がかからない制度です。

一方、iDeCo(イデコ)は個人型確定拠出年金の愛称であり、老後の資産形成を後押しするための制度を指します。

どちらも税制優遇が用意されており、効率的に資産形成をすることができる制度といえますが、特徴が異なるため、ご自身に合った方法を選ぶ必要があります。

なお、両者は併用することも可能です。以下では、NISAとiDeCoのメリット・デメリットをそれぞれご紹介します。

NISAの仕組みとメリット・デメリット

NISAは、NISA口座を通じて運用して得た利益が非課税になる制度です。

通常、投資によって得られる分配金や配当金、譲渡益(売買益)といった利益には、所得税(復興特別所得税を含む)と住民税を合わせて20.315%の税金がかかります。しかし、NISA口座を利用すると、これらの利益に税金がかからなくなるため、運用によって得た利益を効率的に活用できるというメリットがあります。

NISAで非課税となる利益には、主に以下の種類があります。

  • 分配金…投資信託の運用で得られた収益を、決算時に投資家(投資信託の購入者)に分配するお金
  • 配当金…株式会社が事業活動で得た利益の中から、株主が持つ株式数に応じて分配されるお金
  • 譲渡益(売買益)…保有する株式や投資信託などを、購入した価格より高い価格で売却することで得られる利益(キャピタルゲイン)を指す

以下、NISAのメリットとデメリットを見ていきましょう。

NISAのメリット

NISAには大きく分けて「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、それぞれの年間の投資上限額は120万円(つみたて投資枠)と240万円(成長投資枠)です。

2024年1月からNISAは新しい制度になり、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能になりました。両方の枠を合わせると、年間で合計360万円まで非課税で運用できます。

また、生涯にわたる非課税保有限度額は全体で1,800万円(簿価残高※1)までとなりますが、そのうち成長投資枠で利用できるのは1,200万円までです。この生涯投資枠の大きなメリットとして、保有商品を売却すると、その商品の簿価相当分の枠が翌年以降に再利用可能になる点が挙げられます。

たとえば、最初に100万円分の株式を購入し、その株式を売却すると、売却した分(簿価100万円分)の生涯投資枠が翌年以降に復活するため、改めて他の投資商品を購入できるようになります。

このように、NISAは長期運用だけでなく、市場環境に合わせて商品を乗り換えたい人にも柔軟に対応できる制度といえるでしょう。

※1 簿価残高:商品を当初購入したときの価格(取得価額)のこと

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NISAのデメリット

NISAのデメリットとして、投資対象商品に預金のような元本確保型商品が含まれていない点が挙げられます。NISAの対象はあくまで株式や投資信託といった価格が変動する投資商品であり、値動きによっては元本割れするリスクがあります。預貯金のように元本が保証されるわけではない点に注意が必要です。

また、NISA口座での損益は、他の課税口座(特定口座や一般口座など)との損益通算ができない点もデメリットといえるでしょう。

たとえば、特定口座で損失が出て、NISA口座で利益が出ていたとしても、これらを相殺して税負担を軽減することはできません。そのため、複数の口座間で損益通算を活用して税金を抑えたいと考えている方にとっては、使いにくい側面があるかもしれません。

iDeCoの仕組みとメリット・デメリット

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後の資産形成を目的とした私的年金制度※2です。加入者ご自身で設定した掛金を拠出し、iDeCo口座内で投資信託、定期預金、保険商品といった運用商品のなかから選んで運用をおこないます。

※2 私的年金制度:公的年金に上乗せされる給付を保障する制度のこと

iDeCoのメリット

iDeCoには、主に以下の3つの大きな税制優遇があります。

  1. 掛金が全額所得控除の対象
  2. 運用によって得た利益(運用益)が非課税
  3. 受け取る際にも税制上の優遇措置(退職所得控除や公的年金等控除)がある

iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となるため、拠出した掛金の分だけその年の課税所得を減らすことができます。これにより、毎年納める所得税や住民税の負担が軽減されます。

また、運用によって得た利益(運用益)も非課税となるため、投資信託などで利益が出た場合でも税金がかかりません。これは、長期にわたる資産形成において大きなメリットといえるでしょう。

さらに、原則60歳以降に受け取る際にも、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」といった税制上の優遇措置が適用され、税負担が軽減されます。

iDeCoには原則として60歳まで資金を引き出せないという側面もありますが、これも見方を変えれば、老後まで計画的に資産形成を進められるというメリットになります。

普段つい使ってしまいがちな資金も、iDeCoで積み立てをおこなえば、着実に老後資金を準備していくことが可能です。

iDeCoのデメリット

iDeCoの資産は、原則として60歳になるまで引き出せません。結婚や出産、子どもの進学といったライフイベントでまとまった資金が必要になった場合でも引き出しができない点は、デメリットだといえるでしょう。

毎月の掛金額を設定する際には、この点を考慮することが大切です。なお、iDeCoの掛金は年に1回、変更することが可能です。

また、加入者の職業や他の年金制度への加入状況によって、iDeCoで拠出できる掛金の上限額が異なる点も注意が必要です。上限額によっては、それだけで目標とする老後資金を準備するには不十分となる可能性もあります。

ただし、加入者が死亡した場合や、傷病によって一定以上の障害状態になり一定期間経過した場合など、一定の要件を満たす場合は、60歳未満でも給付金(死亡一時金や障害給付金)を受け取ることが可能です。

具体的な拠出限度額は以下のとおりです(2025年4月現在)。

【iDeCoの拠出限度額(月額)】
加入資格 拠出限度額(月額)
自営業者等(第1号被保険者) 6万8,000円
会社員・公務員等
(第2号被保険者)
会社に企業年金※3がない会社員 2万3,000円
企業型DC※4のみに加入している会社員 2万円
DB※5と企業型DC※6に加入している会社員
DBのみに加入している会社員
公務員
専業主婦(夫)(第3号被保険者) 2万3,000円

※3 企業年金:企業型DCやDBなどを指します。
※4 企業型DC:企業型確定拠出年金の略称
※5 DB:確定給付企業年金

NISAとiDeCoの違い

これまでNISAとiDeCoそれぞれの仕組みやメリット・デメリットを見てきました。以下の表で主な違いを確認しましょう。

NISAの主なメリットは運用益非課税という点ですが、iDeCoは掛金が所得控除になったり、受け取り時に控除があったりと、より手厚い税制優遇が特徴といえるでしょう。

その一方で、NISAはいつでも引き出し可能な自由度の高さがありますが、iDeCoは原則60歳まで引き出せないという、資金の流動性に大きな差があります。

さらに、投資上限額や対象者、投資対象商品もそれぞれ異なります。

以下の表でNISAとiDeCoの特徴の違いを確認し、自身の目的やライフプランに合った制度の活用、または併用を検討しましょう。

【NISAとiDeCoの比較表】
  NISA iDeCo
つみたて投資枠 成長投資枠
税制優遇 運用益が非課税
  • 運用益が非課税
  • 毎年の所得税や住民税が軽減される
  • 受取時に支払う税金が少なくなる
対象者 18歳以上 原則20歳以上65歳未満
拠出限度額 年間120万円 年間240万円 年間24万円~81万6,000円
非課税保有限度額 1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)
投資可能商品 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 上場株式・投資信託等(一部の商品を除く※6 投資信託・保険商品・定期預金等
購入方法 定期的・継続的に積み立て 自由 定期的・継続的に積み立て
払出し制限 引き出し可能 原則60歳まで引き出し不可

※6 NISA成長投資枠では、①整理・監理銘柄、②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託及びデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除外。

なお、NISAとiDeCoは併用することも可能です。併用により、それぞれのメリットを活かし、自身のライフプランやリスク許容度(投資におけるマイナスをどの程度まで許容できるかという度合いのこと)に合わせた資産形成を進めやすくなります。

たとえば、「老後資金の準備はiDeCoで着実におこない、近い将来の結婚や教育資金などはNISAで備える」といった使い分けが考えられます。

30代〜60代、年代別だとiDeCoとNISAどっちを優先する?

ここからは、年代別にiDeCoとNISAどっちを優先すべきかを考えてみましょう。ライフイベントや収入状況の違いによって適した制度が変わるため、ご自身の状況に合わせて使い分ける際の参考にしてください。

30代・40代ならNISA

30代・40代は収入が増え始め、貯蓄に取り組みやすい時期ですが、同時に結婚や出産、住宅購入といった大きな資金が必要になるライフイベントも多い年代です。

そのため、いつでも必要なときに資金を引き出しやすいNISAを優先的に活用すると、急な出費にも対応しやすくなります。

勤務先によっては企業型DC(企業型確定拠出年金)やDB(確定給付企業年金)などの企業年金が導入されている場合もあります。なかでも企業型DCは2022年10月の法改正により、iDeCoと併用しやすくなりました。すでに企業型DCを利用している方は、iDeCoにも加入して老後資金をさらに充実させることも可能です。

ただし、まずはライフイベントに備える資金の準備として流動性の高いNISAを活用し、老後資金は企業型DCやiDeCoで計画的に準備するという使い分けを検討してみると良いでしょう。

50代ならiDeCoを重視

50代は大きなライフイベントが一段落するため、より具体的に老後の資金計画を立て始める年代といえます。

iDeCoは老後資金作りに特化した制度であり、掛金が全額所得控除になるため、現在の税負担を抑えながら効率的に老後資金を準備できます。iDeCoの加入可能年齢は、2022年5月から加入年齢の上限が60歳から65歳未満に引き上げられました。そのため、50代からiDeCoを始めても、税制優遇を受けながら資産形成を進めることは十分に可能です。

さらに2025年4月時点において、iDeCoの加入可能年齢が70歳未満に延長する案も検討されています。

ただし、住宅ローン返済や教育費の負担がまだ続く場合もあります。資金的に余裕があれば、iDeCoで老後資金の準備を進めつつ、NISAも併用して手元資金の流動性を確保しておくという方法も有効といえるでしょう。

iDeCoだけでは老後資金が不足すると感じる場合、NISAを活用して、老後資金の積立と手元資金の流動性をバランス良く確保するのもおすすめです。

60代ならNISA

現行制度では、60歳以降、国民年金の加入状況などによってはiDeCoへの新規加入や掛金の拠出ができなくなる方もいます。加入できたとしても、拠出期間は限られる可能性があります。そのため、資産運用を続ける場合は、NISAが中心的な手段となるでしょう。

とくにNISAはいつでも必要なときに資産を売却して現金化できるため、日々の生活費や予期せぬ医療費などの支出に備えたいこの世代にとって、利用しやすい制度といえます。

ただし、NISAは投資であり、元本保証型の商品はなく、価格変動リスクがある点には注意が必要です。投資は、大きなリターンが期待できる商品ほど、価格が下落した際の損失も大きくなる傾向があります。

老後資金が想定以上に不足していると感じる場合は、NISAで積極的にリスクを取ると、かえって資産を減らしてしまう可能性もあります。

老後資金が不足している状況だからといって過度なリスクは避け、家計の見直しによる支出削減や、可能な範囲での就労による収入確保といった、より確実な方法を優先的に検討することも大切です。

また、老後のライフスタイルは多様化しています。勤務先の制度や公的年金の繰下げ受給など、働き方や年金の受け取り方を工夫することで収入を確保できる場合もあるため、そうした情報収集もおこなうと良いでしょう。

まとめ:NISAとiDeCoの仕組みを理解して上手に使い分けましょう

NISAとiDeCoは、いずれも税制優遇を受けながら資産形成できる制度です。

NISAは運用益非課税でいつでも引き出し可能な点が特徴です。一方、iDeCoは掛金控除など手厚い税制優遇がありますが、原則60歳まで引き出せません。

両制度の違いを理解して、ご自身の年代やライフプランに合わせて上手に使い分けることが、効率的な資産形成につながります。

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※この記事は2025年4月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。

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