資産運用分散投資とは?必要性や長期的に資産を育てる方法をわかりやすく解説

投資で損をするのが怖いので、なかなか始められないという方もいるのではないでしょうか?大切な資産を減らしてしまうリスクを考えると、投資に踏み出せないのは当然のことといえます。

しかし、分散投資を活用すれば、リスクを抑えながら長期的に安心して資産運用を続けられるでしょう。この記事では、分散投資の基本的な仕組みから、ご自身に合った投資バランスの見つけ方まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。

金子賢司

【執筆・監修】
金子賢司

CFP資格所有(FP1級と同等)
東証一部上場企業(現在は東証スタンダード市場)で10年間サラリーマンを務める中、金融に興味を持ち、資産運用やローンなどの勉強を始める。
その後、生命保険会社、損害保険会社での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。現在は、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。

分散投資とは?仕組みをわかりやすく解説

分散投資は、複数の投資先に資金を分けて投資する方法です。一つの投資先に集中させるのではなく、異なる種類の資産や地域に分けて投資することで、リスクを軽減できます。

投資の世界では「卵は一つのカゴに盛るな」という格言がよく使われますが、これが分散投資の本質を表しています。初心者の方でも理解できるよう、具体的な仕組みと効果を見ていきましょう。

分散投資の仕組み

「卵は一つのカゴに盛るな」という格言が、分散投資の考え方を表しています。すべての卵を一つのカゴに入れていると、そのカゴを落としたときにすべての卵が割れてしまいます。しかし、複数のカゴに分けて入れておけば、一つのカゴを落としても他の卵は無事です。

投資においても同じことがいえます。資金を複数の投資先に分けることで、一つの投資先が下落しても他の投資先でカバーできる可能性が高まります。これが分散投資の基本的な仕組みです。

分散投資には「資産(銘柄)の分散」「地域の分散」「時間の分散」という3つの考え方があります。それぞれの具体的な方法を見ていきましょう。

資産(銘柄)の分散

株式・債券など、異なる特徴を持つ資産に投資する方法です。代表的な組み合わせとして、成長性が高いが価格変動も大きい株式と、安定的な利息収入が期待できる債券を使い分けることでリスクを分散できます。

景気後退時には株式が下落しやすい一方、債券は安定的に推移する傾向があります。このように、異なる値動きをする資産を組み合わせることが、資産分散の基本です。

地域の分散

国内だけでなく、先進国や新興国など、異なる地域に投資することを指します。世界各国の経済は独自の成長サイクルを持っているため、一つの地域の経済が低迷しても、他の地域の成長でカバーできる可能性があります。

日本国内の経済が停滞している時期でも、アメリカや欧州などの海外経済が好調であれば、その恩恵を受けられるでしょう。また、新興国は成長率が高い一方で、政治的リスクや為替変動リスクも大きくなります。先進国と新興国をバランスよく組み合わせることで、成長性と安定性の両立が期待できるでしょう。

さらに、海外資産に投資する場合は、為替の変動によるリスクとリターンも考慮しなければなりません。円高になれば円換算での評価額は下がり、円安になれば上がります。

複数の地域や通貨に投資することで、為替変動による影響も分散することが可能です。

時間の分散

一度にまとめて投資するのではなく、時間をずらして定期的に投資する方法です。この手法は「ドルコスト平均法」とも呼ばれます。

株式や投資信託など価格変動する金融商品は、毎月一定額を投資し続けることで、価格が高いときには少ない量を、価格が安いときには多い量を購入することになります。たとえば、ある投資信託を毎月1万円ずつ購入する場合、購入できる口数は価格が1万円のときは1口、価格が5,000円のときは2口です。

一括投資の場合、購入したタイミングが高値であれば、その後の値下がりで大きな損失を抱える可能性があります。しかし、時間を分散して投資すれば、高値で購入するリスクを減らせるでしょう。

「いつ投資を始めるべきか」という不安を抱える方は多いですが、時間分散の考え方を取り入れれば、タイミングを気にせず投資を始められます。

3つの分散方法は、どれか1つを選ぶのではなく、組み合わせることでリスクをより効果的に抑えられます。

集中投資との違い

集中投資と分散投資では、リスクとリターンの関係が大きく異なります。一つの投資先に集中する場合と、複数に分散する場合を、具体的な数値例で比較してみましょう。

以下は、分散投資の効果を確認するため、資産分散のみに単純化したシミュレーション例です。

【前提条件】
  • 投資元本:100万円
  • 投資先A社の株価が50%下落したケースを想定
<<集中投資の場合>>
  • A社株式に100万円 → A社50%下落
  • 結果:50万円(-50万円の損失)
<<分散投資の場合>>
  • A社株式に25万円(50%下落)
  • B社株式に25万円(変動なし)
  • C社債券に25万円(変動なし)
  • D社不動産に25万円(+10%上昇)
  • 結果:12.5万円+25万円+25万円+27.5万円=90万円(-10万円の損失)

この例では、集中投資の場合は50万円の損失が発生しましたが、分散投資では10万円の損失に抑えられています。このように、効果的な分散投資を行うことで、一つの投資先の値動きによる影響を小さくすることが期待できます。

分散投資の必要性とメリット

投資を始めるうえで、なぜ分散投資が必要なのでしょうか。ここでは、分散投資がもたらすメリットを解説していきます。

予測できない市場の動きへ備えられる

どんなに優れた専門家でも、将来の市場を完全に予測することはできません。なぜなら世界経済は、政治情勢や自然災害、技術革新など、さまざまな要因によって日々変動しているからです。

こうした予測困難な市場環境だからこそ、分散投資が重要です。

複数の投資先に資金を分けることで、予想外の出来事が起きても、資産全体への影響を抑えられます。一つの投資先に集中していると、その投資先に関わる悪いニュースが出ただけで、大きな損失を被る可能性があります。

リスクを抑えながら長期投資を続けられる

分散投資のもう一つの大きなメリットは、心理的な安定性にあります。一つの投資先に集中していると、その価格変動に一喜一憂してしまい、精神的な負担が大きくなりがちです。

分散投資であれば、短期的な値動きによる影響が小さくなるため、心に余裕を持って投資を続けられます。とくに時間の分散投資である「ドルコスト平均法」を活用すれば、毎月一定額を自動的に積み立てることで、購入タイミングを気にせず投資を継続できるでしょう。

高値で一括購入してしまうリスクを避けられるため、価格変動への不安も軽減されます。そのため、時間を味方につけて、長期的な視点で資産を育てていく方法を実践しやすくなります。

自身に合った投資バランスの見つけ方

投資バランスは、一人ひとりの状況によって最適な配分が異なります。自分に合った投資方法を見つけるために、まず投資の目的とリスク許容度を確認しましょう。

投資の目的を明確にする

投資を始める前に、何のために投資をするのか目的を明確にすることが大切です。目的によって、運用期間やリスクの取り方が変わってきます。

たとえば、老後資金のように20年以上の長期運用が可能であれば、多少リスクを取っても成長性の高い資産に投資できるでしょう。時間をかけて価格変動を吸収できるため、積極的な運用も選択肢に入ります。

一方、5年後の住宅購入資金のように使う時期が決まっている場合は、安定性を重視した運用が適しています。必要なタイミングで資金が目減りしていては困るため、リスクを抑えた配分を選ぶことが重要です。

教育資金の場合は、子どもの年齢によって運用期間が異なります。子どもがまだ小さければ長期運用が可能ですが、高校入学が近づいてきたら徐々に安定資産の比率を高めていく必要があるでしょう。

このように、投資の目的を明確にすることで、適切な運用期間とリスクの取り方が見えてきます。

自分のリスク許容度を知る

リスク許容度とは、「投資した元本がどれくらいマイナスになっても生活に影響がないか」「どれくらいまでなら投資した元本がマイナスとなっても気持ち的に耐えられるか」といった指標で、人それぞれで大きく異なります。

年齢(運用できる期間)、家族構成やライフイベント、保有資産・収入の状況、投資経験や性格などを総合的に判断し、自分のリスク許容度を考えてみましょう。

リスク許容度チェックリスト

自身のリスク許容度をチェックするときの主な項目は、以下の通りです。

  • 年齢が若い
  • 年収が高い、または安定した収入がある
  • 保有資産(貯蓄)が多い
  • 扶養家族が少ない
  • 大きな予定支出(住宅購入、教育費など)が少ない
  • 損失が出てもあまり気にならない、または楽観的な性格である
  • 目指すリターンが大きい

該当する項目が多いほど、比較的高いリスクを取れる可能性があります。一方、該当する項目が少ない場合は、安定性を重視した運用が適しているでしょう。

ただし、これはあくまで目安です。判断が難しいときは、専門家に相談することをおすすめします。

【ライフステージ別】分散投資のバランス例

年代やライフステージによって、適切な投資バランスは変わってきます。ここでは参考例として、年代別の資産配分をご紹介します。ただし最適な配分は、個人の収入状況、家族構成、投資経験、性格などによって異なります。

実際に配分を決めるときは、リスク許容度を確認のうえ慎重にご検討ください。

20〜30代:積極的な成長重視型

20代から30代は運用期間を長く取れるため、積極的にリスクを取った運用を検討できます。一時的に損失が出ても、時間をかけて回復を待てる点が大きな強みといえます。

この年代では成長性の高い株式を中心とした配分が適しているでしょう。

株式部分は国内株式だけでなく、先進国や新興国にも分散することで、世界経済全体の成長を取り込める可能性があります。また、株式比率が高い投資信託を活用するという選択肢もあります。

ただし、結婚や住宅購入など近い将来に大きな支出を控えている場合、その資金分は安全資産で確保しておくことが望ましいでしょう。

40〜50代:バランス型

40代から50代は教育費や住宅ローンなど支出が増える時期です。同時に、老後に向けた資産形成も本格化させたい年代といえます。リスクとリターンのバランスを考えた運用が求められるでしょう。

株式の比率をやや抑えることで、価格変動による影響を和らげながら一定の成長も狙える可能性があります。不動産投資信託(REIT)などを組み入れることで、さらなる分散効果が期待できるでしょう。

子どもの教育費が必要な時期であれば、必要資金に応じて安定資産の比率を高めるなど柔軟に調整することが望ましいでしょう。

60代以降:安定重視型

60代以降は運用期間が短くなるため、資産の保全を重視した配分に切り替えることが望ましいでしょう。大きな損失を避けることを重視したい時期といえます。

債券の比率を高めることで定期的な利息収入を確保しながら、安定的な運用を目指すという方法もあります。

株式部分を完全にゼロにする必要はありませんが、値動きの影響を最小限にとどめることが望ましいでしょう。

現金を一定額確保しておくことで、急な医療費や介護費用にも対応しやすくなります。

長期的に分散投資を続ける方法

分散投資は始めることよりも続けることのほうが難しいといわれています。ここでは、長期的に投資を継続するための具体的な方法を紹介します。

短期的な値動きに惑わされない

投資を始めると日々の価格変動が気になるものですが、短期的な値動きに反応して売買を繰り返すと、かえって損失を拡大させてしまうことがあります。

長期運用するほど元本割れする可能性が低くなる傾向があります。短期的な価格変動に一喜一憂せず、長期的な視点を持つことが大切です。ただし、完全放置はせず、定期的に自身の投資状況を確認し、必要に応じて見直しができるようにしておきましょう。

【重要】投資バランスを定期的に見直す

最初に資産配分を決めたとしても、市場の変動によって当初設定した配分比率が崩れてしまうため、定期的に見直すことが大切です。

年に1〜2回程度、資産配分を確認する習慣をつけることをおすすめします。とくに結婚、出産、住宅購入、子どもの進学、退職など、ライフステージが変わるタイミングでは必ず見直しましょう。

また、年齢を重ねるにつれてリスク許容度も変化していきます。5年ごとなど一定の期間で配分を見直すルールを決めておくと安心です。

無理のない金額で続けることが重要

投資を長く続けるためには、生活を圧迫しない範囲で行うことが大切です。まず生活費の3〜6ヶ月分を生活防衛資金として確保しましょう。急な出費や収入減少に備えることで、安心して投資を続けられます。

多くの金融商品では、生活の状況に応じて投資額を柔軟に調整できるため、無理なく続けられる金額設定が重要です。

相談できる場所を持つ

投資を続けていると、判断に迷う場面もあるでしょう。そのようなとき、一人で抱え込まず相談できる専門家がいることは大きな安心につながります。

金融機関の窓口では投資に関する基本的な相談ができます。

より中立的な立場からアドバイスを受けたい場合は、独立系のファイナンシャルプランナーに相談する方法があります。相談する際は、相談料の有無やどのような立場でアドバイスをしているのかを確認することが大切です。

手軽に分散投資を実践するなら投資信託

分散投資を実践するうえで、投資信託は初心者にも始めやすい金融商品です。

1本購入するだけで複数の銘柄に自動的に分散投資でき、さらにNISAやiDeCoといった税制優遇制度を活用すれば、より効率的に資産形成を進められます。ここでは、投資信託を使った具体的な実践方法を見ていきましょう。

NISA

投資で得た利益には通常約20%の税金がかかりますが、NISA(少額投資非課税制度)を活用すれば、一定の範囲内で得た利益が非課税となり、効率的に資産を増やせます。

NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、年間合計で360万円まで投資できます。つみたて投資枠は年間120万円まで利用でき、長期の積立・分散投資に適した投資信託が対象です。

つみたて投資枠で投資信託を選んで長期運用すれば、リスクを抑えた資産形成の基本といわれる「長期・積立・分散投資」が実現できます。非課税で運用することで、利益がそのまま再投資に回り、複利効果を効果的に活かせるでしょう。

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iDeCo

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金づくりのための私的年金制度です。

iDeCoには3つの税制メリットがあります。まず掛金が全額所得控除の対象となり、所得税や住民税が軽減されます。また、運用中に得られる利益は非課税です。さらに、受取時にも退職所得控除や公的年金等控除が適用され、税負担が軽減されます。

掛金の上限額は職業によって異なり、自営業者は月額6.8万円、会社員は月額2万円〜2.3万円です。運用商品は定期預金、保険、投資信託の中から選べます。

iDeCoも毎月自動的に積み立てる仕組みのため、投資信託を選べば時間・資産・地域の分散投資が実現できます。長期・積立・分散投資を税制優遇を受けながら実践できる効率的な制度といえるでしょう。

ただし、iDeCoは原則60歳まで引き出せません。また加入時や運用中に手数料がかかるため、できるだけ低コストの金融機関を選ぶことが大切です。

NISAとiDeCoは併用できるため、投資目的に応じて使い分けましょう。

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分散投資に関するよくある質問

分散投資に関するよくある質問と回答をまとめました。

Q1. 分散投資でも損失は発生しますか?

A. はい、分散投資でも損失が発生する可能性があります。分散投資はリスクを軽減する方法ですが、損失をゼロにすることはできません。ただし、一つの投資先に集中するよりも、大きな損失を避けられる可能性が高まります。

Q2. 今から始めても遅いのでは?

A. 投資に「遅すぎる」ということはありません。むしろ、思い立ったときが始めどきといえるでしょう。時間の分散を活用すれば、購入タイミングを気にせず投資を始められます。長期的な視点で、できるだけ早く始めることが資産形成につながります。

Q3. 投資の知識がなくても分散投資はできますか?

A. はい、可能です。投資信託を活用すれば、専門的な知識がなくても手軽に分散投資を始められます。とくにバランス型ファンドであれば、運用のプロが資産配分まで行ってくれるため、初心者の方でも安心して取り組めるでしょう。

Q4. 途中でやめても大丈夫ですか?

A. 基本的には途中でやめることも可能です。ただし、短期間でやめてしまうと、分散投資の効果を十分に得られない可能性があります。できるだけ長期的に続けることが望ましいですが、やむを得ない事情がある場合は、解約や売却を検討してもよいでしょう。

まとめ

分散投資は、資産・地域・時間の3つの考え方から、投資先を分散することで、リスクを抑えながら長期的に資産形成を目指す方法です。ご自身の年齢やライフステージ、リスク許容度に応じた投資バランスを見つけることが重要といえるでしょう。投資信託やNISAを活用すれば、初心者の方でも効率的に分散投資を始められます。短期的な値動きに惑わされず、無理のない金額で長期的に続けることが、資産形成を成功させるポイントです。

※この記事は2025年10月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。

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