資産運用NISAにデメリットしかないといわれる理由とは?メリットや注意点も解説

株式や投資信託などの金融商品に投資をして、売却益や配当を得たときは、約20%の税金がかかります。NISAとは、一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益に税金がかからなくなる制度のことです。

しかし、ときどき「NISAはデメリットしかない」と思われることがあります。結論から言うと、デメリットしかないわけではありません

NISAには多くのメリットもあるため、デメリットとあわせてよく理解したうえで利用することが大切です。

今回は、NISAにはデメリットしかないといわれる理由や主なメリット、利用時の注意点などをわかりやすく解説します。

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵(M・Mプランニング 代表)

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵
M・Mプランニング 代表

保育士、営業事務の仕事を経て、ファイナンシャルプランナーに。
独身、子育て世代から定年後の方までお金に関する相談を受けて、16年目になります。
主婦FPとして、等身大の目線でのアドバイスが好評です。
家計・保険・老後、教育資金などの個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っているほか、お金の専門家として、テレビ取材なども受けています。
人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

NISAにはデメリットしかないと言われる4つの理由

NISAにデメリットしかないと言われる主な理由は、以下の4つです。

  1. 損失が発生する可能性がある
  2. 損失が発生しても利益と相殺できない
  3. 含み損を抱えたまま非課税保有期間が終了する可能性がある
  4. 1人につき1口座しか開設できない

それぞれを詳しく見ていきましょう。

1.損失が発生する可能性がある

NISAは、あくまで金融商品の運用で得た利益に税金がかからなくなる制度であり、元本保証はありません

たとえば、NISA口座で株式に投資をした場合、発行先の企業の業績が振るわないときに株価が下落して投資元本を下回るケースがあります。

NISA口座で投資をしても、元本割れのリスクは避けられません。そのため、NISAで資産形成を始めるときは、自身でも投資や制度の勉強をしたり金融商品や投資の知識が豊富な専門家にも相談したりして、商品を慎重に選ぶことが大切です

2.損失が発生しても利益と相殺できない

通常の証券口座(特定口座・一般口座)では、保有する商品で損失が発生したとき、他の課税口座の商品から生じる利益と相殺できます。これを「損益通算」といいます。

たとえば、証券口座Aで100万円の損失、証券口座Bで80万円の利益が発生していたとしましょう。損益通算により 証券口座Aで生じた100万円の損失を、証券口座Bの80万円の利益を相殺すると、トータルでは20万円の損失となります。

損益通算をした結果、トータルの損益が0円以下になったのであれば、税金はかかりません。また、余った損失は「繰越控除」をすると、翌年の利益と相殺できます。

しかし、証券口座AがNISA口座であると、損益通算ができないため、証券口座Bの80万円の利益に税金がかかります。また、100万円の損失は翌年に繰り越せません。

3.含み損を抱えたまま非課税期間が終了する可能性がある

NISAの非課税保有期間が終了した後は、原則として課税口座に移管されます。NISA口座から課税口座へ移管するときに含み損が発生していると、将来的に値上がりしたときに税金が課せられる場合があります

たとえば、一般NISA口座で60万円の株式に投資をしたとしましょう。一般NISAの非課税期間である5年間が終了し、課税口座に移管した時点で株価は40万円に下がっていました。

課税口座への移管後、株価が50万円に上昇していた場合、移管時の価格である40万円との差額の10万円に税金がかかります

4.1人につき1口座しか開設できない

NISA口座は、1人につき1口座のみ開設できます。そのため、1人で複数のNISA口座を開設できません。

NISA口座を開設する金融機関を変更できるのは、年に1回のみです。取扱商品のラインナップや店舗の数、手数料などをよく比較して、NISA口座を開く金融機関を選ぶことが大切です。

【監修者コメント】

NISAで運用する資産の価値は、相場動向によって変化します。含み損のある状態で売却をする、いわゆる「損切り」をすると、非課税メリットを生かせないだけでなく、損益通算もできないというデメリットがあります。含み損が出ているときの売却は慎重に行いましょう。

NISAの基礎知識

NISAとは、一定金額の範囲内で投資し、得られた利益にかかる税金が非課税になる制度のことです。2023年6月時点のNISA制度は「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類です。

また、2024年1月からは新しいNISAが開始され、年間投資枠や非課税で運用できる期間などが変更されます。ここでは、現行NISAのうち一般NISAとつみたてNISAの違いや、新しいNISAの制度内容をご紹介します。

一般NISAとつみたてNISAの違い

一般NISAとつみたてNISAは、1年間で投資できる金額(年間投資枠)や、非課税投資期間などが異なります。具体的な制度内容は、以下の通りです。

一般NISA つみたてNISA
年間投資枠 120万円 40万円
非課税
保有期間
5年間 20年間
非課税
保有限度額
600万円 800万円
利用可能
期間
2023年末まで 2042年末まで
※新規買付は2023年末まで

一般NISAの場合、1年間で新規投資できる金額は120万円であり、つみたてNISAよりも高く設定されています。また、株式や投資信託といった幅広い商品に投資が可能です。

つみたてNISAは、1年間で投資できる金額は一般NISAよりも少ないですが、非課税保有期間は20年と長く設定されています。加えて、つみたてNISAの対象商品は長期・分散・積立投資に適した一定の要件を満たす投資信託です。

2024年からは新しいNISAが開始予定

現行NISAは2023年で新規投資ができなくなり、2024年1月からは新しいNISAが始まります。新しいNISAの年間投資枠や非課税保有期間などは、以下の通りです。

成長投資枠 つみたて投資枠
年間投資枠 240万円 120万円
非課税
保有期間
無期限化
非課税
保有限度額
1,800万円
(うち成長投資枠は1,200万円)
利用可能
期間
恒久化
対象年齢 18歳以上
※参考:金融庁「NISAとは?

つみたてNISAは「つみたて投資枠」へ、一般NISAは「成長投資枠」へとそれぞれ役割が引き継がれます。また、現行制度ではつみたてNISAと一般NISAの併用はできませんでしたが、新しいNISAのつみたて投資枠と成長投資枠は併用が可能です

新しいNISAは現行NISAと比較して、1年間に投資できる金額が増えました。また、商品を非課税で運用できる期間や口座を開設できる期間は、無期限に延長される予定です

新しいNISAについて詳しくは、以下の記事をご一読ください。
2024年に始まる新NISAとは?変更点やメリット・デメリットを解説

NISAの主なメリット

たしかにNISAにはいくつかのデメリットはありますが、多くのメリットもあります。NISAの利用を検討する際は、メリットとデメリットの両方を理解することが大切です。

NISAの主なメリットは、以下の通りです。

  • 一定金額までの新規投資で得た利益が非課税
  • 長年にわたって運用益が非課税となる
  • 初心者でも始めやすい

一定金額までの新規投資で得た利益が非課税

株式投資で受け取った配当金や、投資信託を売却して得た利益などには、通常であれば約20%の税金がかかります。しかしNISA口座で運用した利益は非課税になります

たとえば、50万円で購入した株式を1年後に60万円で売却した場合、利益分の10万円が課税の対象です。つまり、「10万円×20.315%=20,315円」の約2万円の税金を納めなければなりません。

しかし、NISA口座であれば10万円の利益がある状態で売却したとしても非課税のため、本来は税金として徴収されるはずの約2万円を手元に残せます。

長年にわたって運用益が非課税となる

現行のつみたてNISAでは、非課税保有期間が20年であるため、投資信託の分配金や売却益が長期にわたって非課税となります。

投資信託の分配金は、資金の運用先である株式や債券から得られた利益を、出資金額に応じて投資家に分配するものです。分配金は、受け取らずに再投資に回すことが可能です。

分配金を再投資に回すと、いわば利息が利息を生んで資産が雪だるま式に増えていく「複利効果」を得られる可能性があります。つみたてNISAにより、本来であれば税金として差し引かれる部分も再投資に回されるので、複利効果の恩恵をさらに受けやすくなるでしょう。

2024年から始まる新しいNISAでは、非課税保有期間が無期限となるため、つみたてNISAを超える長期の投資も可能です。また、成長投資枠で購入した株式で含み損が発生しているときは、株価が再び上昇して含み益に転じるまで、じっくりと待てます。

初心者でも始めやすい

つみたてNISAは、金融機関によっては毎月数千〜1万円から積み立てることが可能です。投資金額が少額であれば、損失が発生したとしても小規模で済みます。そのため、投資の初心者も、つみたてNISAであれば気軽に始められるでしょう。

また、つみたてNISAの対象となっているのは、長期・分散・積立投資に適していると考えられる一定の要件を満たした投資信託です。2023年6月23日時点では、つみたてNISAの対象商品は合計233本となっています。(※参考:金融庁「つみたてNISAの対象商品」)

新しいNISAのつみたて投資枠は、つみたてNISAと同様の商品が対象となる予定です。つみたてNISAやつみたて投資枠であれば、商品数が厳選されているため、投資の初心者でも投資先を比較的選びやすいでしょう。

【監修者コメント】

投資の基本は、「分散して投資する」「長期で保有する」ことです。来年からの新NISAは新規投資枠も広がり、保有期間の条件もないので、この条件に適しています。

NISAで資産形成をするときのポイント

NISAで安定的に資産形成をするとき、以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 積立投資をする
  • 運用期間を長くする
  • 余裕資金で投資をする
  • 資産形成の専門家に相談する

積立投資をする

投資によるリスクを抑えたいときは、積立投資を心がけるとよいでしょう。毎月や毎日など決まったタイミングで一定金額を投資する「ドルコスト平均法」を用いることで、リスクの軽減効果を得られる可能性があります

投資では、商品の価格が低いときに購入し、価格が高いときに売却をすると利益を得られます。しかし、金融商品の値動きを正確に予測するのは専門家でも困難です。まとまった資金を投資すると、その後に価格が下落し続ける「高値づかみ」をしてしまうかもしれません。

ドルコスト平均法は購入金額が一定であり、商品の価格が高いときは少なく、価格が高いときは多くの商品を購入します。そのため、商品の平均購入価格が抑えられて、高値づかみを避けやすくなります

運用期間を長くする

金融商品を運用するときは、投資する時間を分散するのも大切です。時間を分散し、長期にわたってコツコツと投資をすることで、ドルコスト平均法によるリスク軽減効果がより得られやすくなるためです。

また、分配金が再投資に回されるタイプの投資信託を、長期間にわたって積み立てることで複利効果の恩恵を受けやすくなります。

NISAで資産形成をするときは、短期間で大きな利益を狙うのではなく、時間をかけて着実に資産を積み上げていくことが重要です

余裕資金で投資をする

投資にはリスクがあるため、元本割れとなる可能性もあります。そのため、貯蓄しているお金のすべてを投資に回すのはおすすめできません

たとえば、子どもの進学やマイホームの購入に備えて積み立てたお金を運用すると、支払いが必要になったタイミングで元本割れが発生している可能性があります。

その結果「子どもの進学資金が足りなくなった」「マイホームの購入が遠のいた」といった支障が生じるかもしれません。

資産形成をするときは、たとえ損失が発生しても当面の生活や将来のライフイベントに支障がないだけの余裕資金を投資に充てることが大切です。

資産形成の専門家に相談する

NISAで金融商品を運用したいと考えてはいるものの、投資の経験が浅いために何から始めたらよいかわからない人は多いのではないでしょうか。そこで、投資の経験が浅い人は、金融機関やファイナンシャルプランナー・IFAなどの専門家に相談することをおすすめします。

専門家は、相談者の運用目的や予算をもとに、リスクも考慮して資産の運用方法を提案してくれます。

また、複数の専門家へ相談することで、運用目的やリスクに対する考え方、運用の方針がより明確になり、自分に合った運用方法がわかるでしょう。

資産運用の相談先については、こちらの記事で詳しく解説しています。
資産運用の相談はどこにすべき?金融機関、FP、IFAの違いを解説

NISAの注意点

最後に、NISAを始めるうえで知っておきたい注意点をみていきましょう。

口座を開設できるのは18歳以上の人

一般NISAやつみたてNISAの口座を開設できるのは、1月1日の時点で18歳以上である人です。そのため、口座を開設する年の1月1日時点で17歳以下の人は対象外です。

ジュニアNISAであれば、18歳未満の人でも口座を開設できます。ただし、ジュニアNISAの口座を新規で開設できるのは2023年までです。

2024年1月以降は、新しいNISAではジュニアNISAの役割を引き継ぐ制度がないため、口座を開設できるのは、その年の1月1日時点で18歳以上のみとなります

現行NISAは余った非課税枠を翌年に繰り越せない

一般NISAとつみたてNISAは、年間投資枠に余りが生じても翌年に繰り越せません。たとえば、つみたてNISAの年間投資枠40万円のうち、実際に利用したが24万円である場合、残りの16万円は消滅します。

現行NISAで新規投資ができるのは2023年までと限られているため、年間投資枠に余りが生じた分だけ非課税の恩恵が受けられなくなるといえます。

2024年から開始される新しいNISAも同様に 余った年間投資枠を翌年に繰り越せません。一方で、非課税保有期間には限りがなく、1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)の非課税保有限度額に達するまで新規投資ができます。

そのため、新しいNISAでは余った年間投資枠があったとしても、次年度以降の年間投資額を増やしたり、新規投資する期間を長くしたりすることで、挽回(ばんかい)が可能です。

現行NISAで購入した商品は新しいNISAへロールオーバーできない

現行NISAと新しいNISAは、別の制度であり非課税投資枠も別枠で管理されます。そのため、一般NISAやつみたてNISAで投資した商品を、新しいNISAの口座に移管できません

もし現行NISAの口座で保有する商品を新しいNISA口座に移管するのであれば、一度売却して現金化する必要があります。

ロールオーバーについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
新NISAにロールオーバーはできない!現行NISAがどうなるのかを解説

まとめ

NISAには元本保証がないため、損失が発生する可能性があります。また、NISA口座の損失を、他の証券口座の利益と相殺できません。

一方で、NISAには株式や投資信託の商品から得られた利益が非課税になるメリットがあります。また、新しいNISAでは非課税保有期間が無期限になるため、より長期にわたって運用益が非課税となります。

NISAのメリットとデメリットの両方を理解したうえで、将来に向けた資産形成にどのように活用するのかを考えることが大切です。判断に迷う場合は、資産形成の専門家に相談するとよいでしょう。

七十七銀行では、資産形成や将来的なマネープランなどの相談を承っております。NISAを利用すべきかどうか迷われている方は、七十七銀行までお気軽にご相談ください。

【監修者コメント】

資産形成は少額でも早く始めて、長く続けることが大事です。低金利の今、預貯金だけで資産を増やしていくのは困難です。NISAのメリット、デメリットを知り、少額からでも始めてみることをおすすめします。

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【参考サイト】

※この記事は2023年6月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。

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