資産運用2024年に始まる新NISAとは?変更点やメリット・デメリットを解説

NISA(少額投資非課税制度)は、投資による資産形成を後押しするために実施されている税の優遇制度です。保有する株式の配当金を受け取ったときや、投資信託を売却して利益を得たときは、通常は約20%の税金がかかりますが、NISA口座で取引したのであれば非課税となります。

現行のNISA制度は2023年末で終了し、2024年1月からは新しいNISAが始まります。新NISAでは、現行制度よりも制度内容が拡充される予定です。

本記事では、2024年1月から開始される予定の新NISA制度の内容や現行NISAとの違い、メリット、デメリットなどをわかりやすく解説します。

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵(M・Mプランニング 代表)

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵
M・Mプランニング 代表

保育士、営業事務の仕事を経て、ファイナンシャルプランナーに。
独身、子育て世代から定年後の方までお金に関する相談を受けて、16年目になります。
主婦FPとして、等身大の目線でのアドバイスが好評です。
家計・保険・老後、教育資金などの個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っているほか、お金の専門家として、テレビ取材なども受けています。
人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

2024年1月から始まる新NISAとは?主な改正点を解説

2022年12月23日に「令和5年度税制改正」が閣議決定されました。税制改正大綱には、家計の資産を貯蓄から投資へと振り向けて資産所得倍増につなげるために、NISAの抜本的な拡充と制度の恒久化が盛り込まれています。

資産所得とは、自らが保有する株式や投資信託などの資産から得られる所得のことです。日本国民の資産所得を増やせるよう、家計の金融資産が貯蓄から投資へとシフトすることを促すため、2024年1月からNISA制度が改正されることになりました。

現行のNISA制度は、成年が利用できる「一般NISA」「つみたてNISA」と、未成年が利用できる「ジュニアNISA」の3種類。

新NISAでは、新たに「成長投資枠」と「つみたて投資枠」が設けられます。どちらも18歳以上の成年であれば利用できます。一方で、ジュニアNISAのように未成年が利用できる非課税枠は設けられませんでした。

現行NISA(一般NISA・つみたてNISA)と、新NISA(成長投資枠・つみたて投資枠)の制度内容は、それぞれ以下のとおりです。

  現行NISA 新NISA
  一般NISA つみたてNISA 成長投資枠 つみたて投資枠
年間投資枠 120万円 40万円 240万円 120万円
非課税保有期間 5年間 20年間 無期限化
非課税保有限度額 600万円 800万円 1,800万円
(うち成長投資枠は1,200万円)
利用可能期間 2023年末まで 2042年末まで
※新規買付は2023年末まで
恒久化
対象年齢 18歳以上

※参考:金融庁「NISAとは?」

新NISAの主な変更点は、以下のとおりです。

  • 制度が恒久化
  • 成長投資枠とつみたて投資枠に変更
  • 年間投資上限額が最大360万円に拡充
  • 非課税保有期間は無期限に延長
  • 最大1,800万円の生涯非課税限度額が新設

1つずつ見ていきましょう。

制度が恒久化

現行NISAでは、制度の実施期間が一般NISAは2023年末まで、つみたてNISAは2042年までとなっていました。

一方の新NISAでは、制度の実施期間が恒久化されたため、いつでも口座の開設ができます。

「成長投資枠」と「つみたて投資枠」に変更

新NISAでは、一般NISAと同じ役割である「成長投資枠」と、つみたてNISAと同様に長期・積立・分散投資を支援する「つみたて投資枠」があります。

つみたて投資枠の対象商品は、現行のつみたてNISAと同様に長期・積立・分散投資に適した一定の株式投資信託です。

成長投資枠では、現行の一般NISAと同様に上場株式や投資信託などに投資できます。なお、一部高レバレッジ投資信託などの商品は対象から除外されました。

また、一般NISAとつみたてNISAは併用できませんでしたが、新NISAの成長投資枠とつみたて投資枠は併用が可能です。

年間投資上限額が最大360万円に拡充

現行NISAの年間投資枠は、一般NISAが最大120万円、つみたてNISAが最大40万円(月額33,333円)でした。

新NISAの年間投資枠は、成長投資枠は最大240万円、つみたて投資枠では最大120万円へと拡充されています。また、成長投資枠とつみたて投資枠を併用すると、年間で最大360万円まで新規投資ができます。

非課税保有期間は無期限に延長

現行NISAの非課税保有期間は、一般NISAが最長5年間、つみたてNISAが最長20年間でした。非課税期間の満了後は、課税口座(特定口座または一般口座)に払い出されます。

また、一般NISAについては非課税期間の満了後、翌年の非課税投資枠に移管(ロールオーバー)して引き続き5年間にわたって非課税で運用するという選択もできます。

一方の新NISAでは、成長投資枠とつみたて投資枠のどちらも、非課税保有期間が無期限に延長されています。

最大1,800万円の生涯非課税限度額が新設

現行NISAの非課税保有限度額は、一般NISAが最大600万円(120万円×5年間)、つみたてNISAが最大800万円(年間40万円×20年間)です。

新NISAは非課税保有期間が無期限となったため、新たに一生涯の非課税保有限度額(生涯非課税限度額)が設定されました。生涯非課税限度額は、商品の買付金額(簿価)で数えて最大1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで)です。

また、新NISAの口座で保有する商品を売却すると、その商品の買付金額に相当する生涯非課税限度額が再利用できるという現行NISAにはない仕組みがあります。

たとえば、1,800万円の生涯非課税限度額をすべて使い切っているときに、買付時の金額が200万円であった商品を売却すると、新たに200万円の新規投資ができるようになります。

ただし、生涯非課税限度額が復活するのは商品を売却した翌年です。加えて、売却しても年間非課税枠は復活しない点に注意が必要です。

新NISAの主なメリット

新NISAの主なメリットは、以下の2点です。

  • 現行NISAよりも制度内容が拡充されている
  • 現行のNISA口座とは別枠での利用が可能

1つずつ解説します。

現行NISAよりも制度内容が拡充されている

新NISAでは年間の投資枠が最大360万円、非課税保有限度額が1,800万円に拡充されたため、より多くの資金を非課税で運用できる制度となりました。

非課税保有期間は、無期限に延長されました。現行NISAでは、非課税期間の満了までに「課税口座に払い出す」「商品を売却する」「ロールオーバーする(一般NISAのみ)」といった出口戦略を選ぶ必要がありましたが、新しいNISAでは不要です。

また、成長投資枠とつみたて投資枠の併用が認められているため、一般NISAとつみたてNISAを選択する必要があった現行制度よりも投資戦略の幅が広がったと言えます。

たとえば「つみたて投資枠で投資信託を積み立てながら、成長投資枠で現物の株式を取引する」のように、現行NISAではできない組み合わせの運用をすることも可能です。

現行のNISA口座とは別枠で利用できる

2023年度末まで現行NISAで買い付けた商品は、新しいNISAとは別の口座で管理されます。現行のNISA口座で保有する商品は、2024年1月以降も同じ金融機関の口座で引き続き非課税期間が終了するまで運用できます。

新NISAの口座を開設するために、現行NISAの口座で保有する商品を売却したり、通常の証券口座(特定口座・一般口座)に移管したりする必要はありません。

また、2024年1月1日時点で一般NISAやつみたてNISA、ジュニアNISAの口座を持っている18歳以上の人は、新NISAの口座が自動で開設され、新たに非課税枠が付与されます。現行NISAを利用していても、新NISAの非課税枠に影響はありません。

新NISAの主なデメリット

新NISAの主なデメリットは、以下の2点です。

  • 現行NISAの口座で保有する商品は新しい制度へのロールオーバーができない
  • 口座を開設できるのは18歳以上の成年のみ

1つずつみていきましょう。

現行NISAの口座で保有する商品は新しい制度へのロールオーバーができない

一般NISAやつみたてNISAで新規投資した商品を、新NISAの成長投資枠またはつみたて投資枠の口座に移管して運用することはできません。

現行NISA口座内の資産を新NISA口座に移すためには、保有している商品を1度売却し、得られた現金で成長投資枠やつみたて投資枠で取引をする必要があります。

口座を開設できるのは18歳以上の人のみ

新NISAの口座を開設できるのは、18歳以上の成年に限られます。18歳未満の未成年は、本人名義で新NISAの口座を開設できません。現行NISAでは、ジュニアNISAであれば未成年の人でも口座の開設が可能でしたが2023年末で終了となります。

ジュニアNISAは、主に子どもの資産形成をするための非課税制度です。子ども1人につき年間80万円の非課税枠があり「子どもの人数分だけ非課税枠増やせるを増やせる」「親のNISAの非課税枠を消費しない」といったメリットがありました。

2024年以降は、子どもの将来に向けた資産形成を目的にNISAを利用するときも、未成年の場合は親の非課税枠を使う必要があります。

新NISAでの運用益をシミュレーション

では、新NISAで投資をするといくらの収益が期待できるのでしょうか。シミュレーションで確認してみましょう。

毎月の積立額10万円・積立期間15年・想定利回り年3%

新NISAのつみたて投資枠は、年間120万円(毎月10万円)まで非課税で投資できます。つみたて投資枠のみで生涯非課税限度額の1,800万円を使い切る場合、最長15年(1,800万円÷120万円)にわたって積立投資ができます。

毎月10万円を想定利回り年3%で15年間にわたって積み立てる場合、積立金額をシミュレーションすると結果は以下のとおりになりました。

  • 投資元本:1,800万円
  • 運用収益:469.7万円
  • 積立金額の合計:2269.7万円
    ※本シミュレーションでは手数料や税金を考慮していません
    ※本シミュレーションは将来の運用成果を保証するものではありません

シミュレーションの結果、15年間で約469.7万円の運用収益が発生しました。投資元本の1,800万円と合わせると、積立金額の合計は2269.7万円となります。

毎月の積立額10万円・積立期間15年・想定利回り年5%

続いて、毎月の積立額と運用期間はそのままで、想定利回りが5%になった場合の積立金額をシミュレーションします。結果は以下のとおりです。

  • 投資元本:1,800万円
  • 運用収益:872.9万円
  • 積立金額の合計:2672.9万円
    ※本シミュレーションでは手数料や税金を考慮していません
    ※本シミュレーションは将来の運用成果を保証するものではありません

毎月の積立額と運用期間が同じでも、想定利回りが年5%になると運用収益は約872.9万円となり、年3%から約1.9倍に増えました。元本との合計は2672.9万円となりました。

毎月の積立額5万円・積立期間30年・想定利回り年3%

最後に、毎月の積立額を半額の5万円(年間60万円)、運用期間を2倍の30年間に変更し、年3%で運用した場合の積立金額をシミュレーションしました。結果は、以下のとおりです。

  • 投資元本:1,800万円
  • 運用収益:1,113.7万円
  • 積立金額の合計:2913.7万円
    ※本シミュレーションでは手数料や税金を考慮していません
    ※本シミュレーションは将来の運用成果を保証するものではありません

シミュレーションの結果、運用収益は1,113.7万円、積立金額の合計は2913.7万円となりました。想定利回りが年3%であっても、運用期間が30年にわたることで利息が利息を生んで資産がふくらんでいく複利効果が働き、運用収益は1,000万円を超えました。

NISAの制度改定に関するQ&A

最後に、NISAの制度改正についてよくある質問とそれに対する回答をご紹介します。

新NISAはいつから始まりますか?

新NISAは、2024年1月1日から開始予定です。2023年末までは、現行の一般NISAやつみたてNISA、ジュニアNISAの口座を開設できます。

一般NISAやつみたてNISAで投資した商品を新NISAに移行(移管)できますか?

できません。現行NISAと新NISAは、それぞれ別の口座で商品を管理することになります。

「成長投資枠」と「つみたて投資枠」を別々の金融機関で利用できますか?

できません。新NISAの口座を開設できるのは、原則として1人につき1つの金融機関のみです。そのため、成長投資枠とつみたて投資枠は同一の金融機関の口座で管理する必要があります。

ジュニアNISAで非課税期間が終了した後はどうなりますか?

ジュニアNISAでは、5年間の非課税期間が終了した後も、継続管理勘定に移管(ロールオーバー)することで、口座の名義人が18歳になるまで引き続き非課税措置が受けられます。

また18歳になったら、課税口座へ払出しするか、新しいNISAへ移管するかを選択できます。

まとめ

新NISAでは、現行NISAと比較して非課税投資枠が拡充されました。また、非課税期間は成長投資枠とつみたて投資枠のどちらも無期限であるため、より多くの資金を長期間にわたって非課税で運用できます。

日本では長らく低金利が続いており、貯蓄だけで資産を形成するのが難しい状況です。将来に向けて老後資金や教育資金などを準備したいと考えている方は、NISA制度を活用してはいかがでしょうか。

七十七銀行では、NISA制度の活用方法を含めた資産形成に関するさまざまなご相談を承っております。将来に向けた資産形成を始めたいと考えている方は、お近くの七十七銀行の窓口までお気軽にご相談ください。

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【参考サイト】

※この記事は2023年2月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。

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