退職金は、必ずしもすべてを運用する必要はありません。今後使う予定のある資金を確保したうえで、当面使わない資金について運用を検討することが基本です。
この記事では、退職金を使う時期に応じて分ける考え方をはじめ、主な運用方法、簡易シミュレーション、失敗を防ぐポイント、 早期退職や転職後の考え方、NISAを活用する際の注意点まで解説します。
目次
預貯金で持ち続ける判断が合理的な資金もあります。近い将来使う予定のあるお金や、元本割れを避けたい資金は、預貯金などで保有することも選択肢です。
一方、当面使う予定がなく、長期間保有できる資金については、投資信託などを活用して運用する方法もあります。預貯金と投資はそれぞれ特徴が異なるため、どちらか一方に決めるのではなく、資金の目的に応じて使い分けることが大切です。
たとえば、退職後すぐに必要になる生活費や住宅関連費は、使う時期をずらしにくい資金です。反対に、長期間使う予定のない資金であれば、値下がりの可能性も踏まえたうえで運用を検討できます。
退職金は、運用方法を選ぶ前に「いつ使うお金なのか」で分けて考えることが大切です。必要になる時期によって、重視すべき安全性や換金のしやすさが変わるためです。
近い将来に使うお金、数年先に使う可能性があるお金、当面使う予定がないお金に分けて整理すると、運用に回せる範囲を判断しやすくなります。
退職後の生活費や、数年以内に予定している住宅関連費、教育費などは、必要なときに使える状態にしておくことが重要です。
こうした資金は、値動きによって必要な金額を確保できなくなることを避けるため、普通預金や定期預金など、元本割れの可能性が低く、必要に応じて使いやすい方法で保有することが選択肢になります。
ただし、確保しておく金額は人によって変わり、一律ではありません。退職後も働くのか、公的年金をいつから受け取るのかなどによって、必要な手元資金は異なります。
住宅のリフォーム費用や車の買い替え費用など、使う時期は少し先でも、用途がある程度決まっている資金は、必要なタイミングで確保できることを優先して管理します。
こうした資金を値動きの大きい商品へ回しすぎると、使いたい時期に必要な金額を用意できないおそれがあります。運用する場合でも、使う予定が近づいた段階で必要額を現金や預貯金などへ移しておくことを検討しましょう。
今後しばらく使う予定がなく、生活費や大きな支出に備える資金を確保できている場合は、その一部を投資信託などで運用することも選択肢になります。
ただし、当面使わない資金であっても、どの程度の値下がりまで受け入れられるか、どのくらいの期間運用できるかを踏まえて判断することが重要です。
退職金の運用方法には、普通預金・定期預金、個人向け国債、投資信託、株式などがあります。どの方法が一番よいと一律に決めるのではなく、資金を使う時期や、どの程度の値動きを受け入れられるかに応じて選ぶことが大切です。
主な特徴を比較すると、次のようになります。
| 運用方法 | 元本割れの可能性 | 主な特徴 | 換金・引き出し |
|---|---|---|---|
| 普通預金・定期預金 | 原則なし※ | 元本を確保しながら保有しやすい | 普通預金は引き出しやすい。定期預金は満期前の解約条件を確認 |
| 個人向け国債 | 原則なし | 国が発行する債券。一定期間経過後は中途換金が可能 | 原則として発行後1年経過後から中途換金可能。ただし中途換金時には一定額が差し引かれる |
| 投資信託 | あり | 株式や債券など複数の資産に投資できる商品がある | 原則として換金可能だが、受け取りまで日数がかかる場合がある |
| 株式 | あり | 企業の成長による値上がりや配当を期待できる一方、価格変動もある | 市場で売却できるが、価格は変動する |
※預金保険制度の対象となる預金には、保護される金額の上限があります。
普通預金や定期預金は、近いうちに使う予定のある退職金を保有する方法として選びやすいです。
元本を確保しながら保有でき、普通預金であれば必要なときに引き出しやすい点が特徴です。一方、定期預金は満期まで保有することを前提とした商品が多いため、中途解約時の条件も確認しておく必要があります。
個人向け国債は、国が個人向けに発行する債券です。元本を確保しながら、預金以外の方法で運用したい場合の選択肢になります。
2026年8月時点では、原則として発行後1年を経過すると中途換金できます。ただし、中途換金時には直前2回分の各利子(税引前)相当額に0.79685を掛けた金額が差し引かれるため、購入前に条件を確認しておくことが大切です。
投資信託は、多くの投資家から集めた資金をまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。
商品によっては、複数の資産や地域に分散して投資できるため、長期間使う予定のない退職金の運用候補になります。ただし、元本保証ではなく、運用状況によっては購入時より価格が下がる可能性があります。
また、投資対象や手数料、値動きの大きさは商品によって異なるため、内容を確認したうえで選ぶことが重要です。
株式も退職金の運用方法の一つです。企業の成長による値上がりや配当を期待できる一方、企業業績や市場環境などによって価格が大きく変動する場合があります。
退職金のように今後の生活に使う可能性がある資金を投資する場合は、値上がりの可能性だけでなく、値下がりしたときにどこまで受け入れられるかも考えておく必要があります。
運用方法ごとの特徴を把握したら、次に「実際に運用すると資産額がどのように変わるのか」を簡易シミュレーションで確認してみましょう。
退職金を運用した場合の資産額は、運用する金額・期間・利回りによって大きく変わります。そのため、「退職金3,000万円なら将来いくらになる」と一律に答えることはできません。
参考として、1,000万円を追加投資や途中の引き出しをせず、一定の利回りで複利運用した場合を簡易的に試算すると、次のようになります。
| 想定年率 | 10年後 | 20年後 |
|---|---|---|
| 1% | 約1,105万円 | 約1,220万円 |
| 3% | 約1,344万円 | 約1,806万円 |
| 5% | 約1,629万円 | 約2,653万円 |
※元本1,000万円を年1回の複利で運用した場合の簡易シミュレーションです。追加投資や途中の引き出しはなく、税金・手数料は考慮していません。また、一定の利回りで運用できることを前提とした試算であり、実際の金融商品の運用成果や将来の利益を保証するものではありません。
一定の利回りが続くと仮定した場合、運用期間が長いほど複利によって資産額の差も大きくなります。ただし、投資信託や株式などの運用では、毎年一定の利益が得られるわけではありません。価格が下落し、元本を下回ることもあります。
退職金はまとまった金額を受け取ることが多いため、運用を始める際は資金計画を立てたうえで判断することが大切です。ここでは、退職金の運用で注意したい代表的なケースを紹介します。
退職金の大半を一度に投資すると、必要なタイミングで価格が下がっていた場合に、損失を抱えたまま売却せざるを得ない可能性があります。
たとえば、退職後の生活費や住宅関連費など、数年以内に使う予定のお金まで投資に回してしまうと、資金が必要になった時期と相場の下落が重なることも考えられます。
一括投資そのものが必ずしも不適切というわけではありません。投資に回す金額を決める前に、数年以内に使う予定があるかどうかを整理しておきましょう。
「できるだけ増やしたい」と考え、利回りの高さだけを基準に商品を選ぶのは注意が必要です。
高い収益を期待できる商品ほど、価格変動などのリスクも大きくなる傾向があります。また、商品によって手数料や途中換金の条件も異なります。
運用商品を選ぶ際は、期待できる収益だけでなく、元本割れの可能性、値動きの大きさ、手数料、換金のしやすさなども確認しましょう。
退職金をひとつの商品や特定の資産だけに集中して投資すると、その資産の値下がりによる影響を大きく受ける可能性があります。
複数の資産や地域などに分けて投資することで、特定の値動きによる影響を抑える考え方があります。また、購入する時期を分ける方法もあります。
ただし、分散投資をすれば損失を完全に防げるわけではありません。どの程度まで分散するかは、運用期間やリスク許容度に応じて考える必要があります。
退職金はまとまった資金だからこそ、商品内容を十分に理解しないまま購入しないことが重要です。
金融商品には、価格変動リスクだけでなく、手数料や換金条件、投資対象などさまざまな違いがあります。説明を受けた際に分からない点があれば、そのまま契約せず、仕組みやリスクを確認してから判断しましょう。
「退職金の何割を運用すればよいか」と考える人もいますが、適切な割合は人によって異なります。
同じ2,000万円の退職金を受け取った場合でも、退職後の収入や預貯金、住宅ローンの有無、今後の生活費などによって、運用に回せる金額は変わります。
そのため、割合を先に決めるのではなく、今後必要になる資金を確認し、その残りから運用可能額を考えることが大切です。
退職金のうち運用に回せる金額は、退職後の収入や支出、保有資産などによって異なります。
具体的な運用額を考えるために、次の項目を整理してみましょう。
これらを整理すると、今後使う可能性がある資金と、当面使わない資金を分けやすくなります。
定年退職後に給与収入が大きく減る場合は、退職金を運用する前に、日々の生活費や公的年金を受け取るまでの資金を確保することが重要です。
たとえば、退職から年金受給開始まで一定の期間がある場合、その間の生活費を退職金や預貯金から取り崩すことも考えられます。こうした資金まで値動きのある商品に回すと、相場が下落したタイミングで売却しなければならない可能性があります。
早期退職や転職によって退職金を受け取り、その後も給与収入が続く場合は、定年退職後と比べて長い運用期間を確保できる可能性があります。
一方で、住宅ローンや子どもの教育費など、今後大きな支出が残っているケースもあります。また、転職後の収入が以前と同じ水準になるとは限りません。
そのため、年齢が若いことだけを理由に多くの退職金を運用へ回すのではなく、今後の収入見込みと支出予定の両方を確認し、余裕資金の範囲で運用を考えることが大切です。
当面使う予定のない資金を投資信託などで運用する場合は、NISAを活用することも選択肢の一つです。
NISAは、一定の条件のもとで、投資による売却益や配当・分配金などが非課税になる制度です。ただし、NISA自体が元本を保証する仕組みではありません。NISA口座で購入した投資信託なども、価格が下がれば元本割れする可能性があります。
そのため、「退職金があるからNISAを使う」のではなく、まず運用に回せる資金を確認し、そのうえでNISAを利用するか検討することが大切です。
2026年8月時点のNISAでは、年間投資枠は「つみたて投資枠」120万円、「成長投資枠」240万円で、合計360万円です。非課税保有限度額は1,800万円で、このうち成長投資枠で保有できるのは1,200万円までです。非課税保有期間は無期限となっています。
退職金の一部を投資信託などで長期的に運用する場合、NISAを利用することで、課税口座で保有する場合と比べて運用益にかかる税負担を抑えられる可能性があります。
ただし、NISAで購入できる商品や利用方法には条件があります。制度の内容を確認したうえで、自分の運用方針に合うか判断しましょう。
NISAの仕組みや活用方法について詳しく知りたい場合は、七十七銀行の関連記事も参考にしてください。
退職金でNISAを利用する場合は、年間投資枠に上限がある点に注意が必要です。
2026年8月時点では年間投資枠は最大360万円のため、退職金としてまとまった金額を受け取っても、その全額を1年間でNISA口座に投資できるわけではありません。
また、NISAは投資による利益が非課税になる制度であり、元本を保証するものではありません。NISA口座で購入した投資信託や株式も、値下がりによって元本を下回る可能性があります。
そのため、NISAを利用する場合も、生活費や近い将来に使う資金を確保したうえで、運用に回せる範囲で活用することが大切です。
七十七銀行では、NISAの成長投資枠・つみたて投資枠に対応した投資信託をご案内しています。
NISAを活用した資産形成では、運用目的や投資期間、リスク許容度に応じて、自分に合った商品を選ぶことが大切です。
七十七銀行では、お客さま一人ひとりの将来設計に寄り添いながら、資産形成をサポートしています。
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退職金は、必ず運用したほうがよいとは限りません。まずは今後必要になる資金を確保し、そのうえで当面使う予定のない資金について運用を検討することが大切です。
運用方法には、普通預金・定期預金、個人向け国債、投資信託、株式などがあります。利回りだけで判断せず、元本割れの可能性や換金のしやすさなども確認したうえで選びましょう。
また、「退職金の何割を運用する」と一律に決めるのではなく、現在の金融資産や退職後の収入、公的年金、今後の支出予定などを踏まえて、自分が運用に回せる金額を考えることが重要です。
当面使わない資金を投資信託などで運用する場合は、NISAを活用することも選択肢です。制度の特徴やリスクを確認し、自分の資金計画に合うか検討しましょう。
退職金の運用にNISAを活用したい方は、七十七銀行のNISAについてもご確認ください。
※この記事は2026年8月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。