資産運用NISAの口座変更ができるタイミングは?デメリットや変更手順も解説

NISAの口座変更ができるのは、原則として1年に1回です。変更を希望する年の前年10月1日〜当年9月30日のあいだに手続きをすると、NISA口座を開設する金融機関の変更ができます。

ただし、NISA口座での非課税枠を利用して商品を買い付けていると、年内に金融機関を変更できません。

この記事では、NISA口座を開く金融機関を変更する方法や、口座変更のメリット、デメリットなどを解説します。

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵(M・Mプランニング 代表)

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵
M・Mプランニング 代表

保育士、営業事務の仕事を経て、ファイナンシャルプランナーに。
独身、子育て世代から定年後の方までお金に関する相談を受けて、16年目になります。
主婦FPとして、等身大の目線でのアドバイスが好評です。
家計・保険・老後、教育資金などの個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っているほか、お金の専門家として、テレビ取材なども受けています。
人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

NISAの口座変更ができるのは1年に1回

NISA口座は、1人につき1口座のみと決められています。そのため、1つ口座を開設すると別の金融機関でNISA口座を開設できません。別の金融機関でNISAを運用したい場合は口座の変更が必要です。

NISA口座を開く金融機関は、1年に1回のみであれば変更が可能です。口座を変更した後も、変更前の金融機関で買い付けた商品は、変更前の金融機関で非課税保有期間が終了するまで保有できます。

たとえば、2021年にA銀行の一般NISA口座で株式を購入したとしましょう。2023年にNISA口座をB銀行に移管したとしても、2021年にA銀行で買い付けた株式は、5年間の非課税保有期間が終わる2025年まで、引き続きA銀行の口座で保有できます。

NISAの口座変更ができるタイミング

NISA口座を開く金融機関を変更する場合は、所定の期間内に手続きをする必要があります。ここでは、NISA口座の変更手続きができる期間を解説します。

変更したい年の前年10月1日〜当年9月30日まで

NISA口座を開く金融機関を変更するときは、変更したい年の前年10月1日〜当年9月30日までに手続きを済ませなければなりません。

たとえば、2023年にNISA口座を変更したい場合は、2022年10月1日〜2023年9月30日のあいだに口座変更手続きを済ませる必要があります。

2024年1月からは新しいNISA制度が始まり、年間で投資できる金額や商品を非課税で保有できる期間などが変更される予定です。2023年のうちにNISA口座の変更手続きを済ませると、2024年1月に変更後の金融機関で新しいNISAの口座が自動開設されます。

一方、2023年10月1日以降に口座変更手続きをした場合、変更先の金融機関でNISAの取引ができるようになるのは2024年1月からとなります。

たとえ10月中に口座変更を申し込んだとしても、年内に新しい金融機関でNISAの取引ができるようになることはありません。

【要注意】非課税枠を利用していると年内の口座変更はできない

1月1日以降にNISAの非課税枠を消費して金融商品を買い付けていたケースでは、その年は口座変更ができません。非課税枠を1円でも利用している場合、最短で翌年からの変更となります。

たとえば、一般NISAの口座を開設している人が、2023年4月に40万円の非課税枠を消費して株式を購入した場合、口座変更ができるのは早くても2024年分からとなります。また、口座の変更手続きができるのは、2023年10月1日以降です。

なお、2023年10月1日以降にNISA口座の変更手続きをした場合、2024年1月1日以降に変更先の金融機関で新しいNISAの口座が開設されます。

【監修者コメント】

NISA口座の金融機関を選ぶ際は、長く付き合っていける金融機関や、自分の投資したい金融商品がある金融機関などで決めることが多いでしょう。しかし長期で運用していくものですから、状況や考え方が変わることもあります。NISA口座の金融機関は当年の非課税枠を使用していなければ1年に1回のみ変更ができるので覚えておきましょう。

NISAの口座変更をするメリット

NISAの口座変更をする主なメリットは、以下の通りです。

  • 投資したい商品を選べるようになる
  • 手数料を抑えられる
  • 商品の取引や口座の管理がしやすくなる可能性も

口座変更のメリットを1つずつ見ていきましょう。

投資したい商品を選べるようになる

一般NISAでは、国内株式や外国株式、投資信託、ETF(上場投資信託)などの金融商品に投資できます。つみたてNISAの対象商品となっているのは、長期・積立・分散投資に適した所定の要件を満たす投資信託です。

ただし、実際に一般NISAやつみたてNISAで投資できる商品は、金融機関によって異なります。各金融機関が取り扱っているNISAの対象商品を比較したうえで口座を変更すれば、希望する商品に投資できるようになります。

NISA口座を開設している金融機関で、希望する商品が取り扱われていない場合は、口座変更を検討してみるといいでしょう。

手数料を抑えることも可能

金融商品を取引するときは、手数料がかかるケースがあります。たとえば、一般NISAの口座で国内株式や外国株式を取引する場合、約定価格(売買が成立したときの価格)に応じて決まる手数料を支払うのが一般的です。

金融機関によって手数料の設定は異なります。そのため、手数料が安価な金融機関にNISA口座を変更すると、取引時のコストを抑えられます。

ただし、手数料が安い金融機関を選ぶことが一概に良いとはいえません。手数料の金額や決まり方だけではなく、商品のラインナップや取引のしやすさなども踏まえて、変更先の金融機関を検討することが大切です。

商品の取引や口座の管理がしやすくなる可能性も

金融機関の多くは、インターネットで証券口座の管理画面にログインすると、商品の取引や保有資産の管理、投資に関する情報などが閲覧できます。

取引画面や管理画面が見やすい金融機関にNISA口座を変更すると、商品を売買するときのストレスが軽減されるかもしれません。投資に関する情報が充実した金融機関に変更すると、より投資判断がしやすくなる可能性があります。

また、スマートフォンアプリが使いやすい金融機関に口座を変更すると、隙間時間を利用して投資に役立つ情報を得たり、商品の取引をしたりしやすくなるでしょう。

NISAの口座変更におけるデメリット

NISAの口座を変更する主なデメリットは、以下の通りです。

  • 変更前の保有商品を移管できない
  • 商品を管理する手間が増える可能性がある
  • 取引の機会を逃してしまう可能性がある

NISAの口座変更は、デメリットも踏まえて検討することが大切です。

変更前の保有商品を移管できない

NISA口座を開く金融機関を変更した場合、変更前の口座で保有していた商品は原則そのままとなります。新しい金融機関のNISA口座には移管されません。

変更前の金融機関で保有する資産を変更後のNISA口座に移すには、保有商品を売却して現金化する必要があります。

保有する商品の価格が、購入時よりも下がっているときに売却すると、損失が発生してしまいます。新しい金融機関に資産を移したいと考えていても、商品の価格が下落しているために希望通りのタイミングで売却できないかもしれません。

商品を管理する手間が増える可能性がある

NISA口座を変更した後も、変更前の金融機関で引き続き商品を保有する場合、管理する口座数が増えてしまいます。

複数の金融機関で商品を保有すると、Webサイトやスマートフォンアプリも別々になるため、保有資産や運用実績などを確認するときの手間が増えてしまいます。また、管理画面にログインするためのIDやパスワードも複数管理しなければなりません。

そこで、NISA口座を変更したときは、変更前の金融機関で保有する商品が購入時よりも値上がりしているタイミングで売却し、管理する口座を絞るのも1つの方法です。

取引の機会を逃してしまう可能性がある

NISA口座を変更するためには、利用している金融機関と変更を希望する金融機関の両方で申請をしなければなりません。また、新しい金融機関と税務署による審査を受ける必要もあるため、NISA口座の変更が完了するまでは数週間〜1か月ほどかかります。

新しい金融機関のNISA口座で早く取引を始めたいと考えていても、変更手続きが完了していないために新規投資や売却のタイミングを逃してしまうかもしれません。

NISAの口座変更をするときは、新しい金融機関で取引ができるようになるまでに一定の期間がかかるケースを想定して、タイミングやスケジュールを考えることが大切です。

新しいNISAの開始に向けて口座変更をするのもひとつの方法

2024年1月から開始される新しいNISAは、現行の一般NISAやつみたてNISAと比較して、非課税枠が拡充され、非課税保有期間は無期限に延長されます。

現行NISAと新しいNISAの主な違いは、以下の通りです。

  現行NISA 新NISA
一般NISA つみたてNISA 成長投資枠 つみたて投資枠
年間投資枠 120万円 40万円 240万円 120万円
非課税保有期間 5年間 20年間 無期限化
非課税保有限度額 600万円 800万円 1,800万円
(うち成長投資枠は1,200万円)
利用可能期間 2023年末まで 2042年末まで
※新規買付は2023年末まで
恒久化
対象年齢 18歳以上

※参考:金融庁「NISAとは?

新しいNISAでは、一般NISAは成長投資枠、つみたてNISAはつみたて投資枠に、それぞれ役割が引き継がれます。年間投資枠は、成長投資枠が240万円、つみたて投資枠が120万円です。

また、成長投資枠とつみたて投資枠は併用できるため、年間で最大360万円まで新規投資が可能です。

一般NISAとつみたてNISAは併用ができず、区分の変更は1年に1回しかできませんでした。その点、成長投資枠とつみたて投資枠であれば、どちらか一方を選ぶ必要はなく、利用区分を変更する手続きも不要です。

2023年のうちにNISAの口座変更を申請すると、2024年1月以降に変更後の金融機関で新しいNISAの口座が開設されます。現在とは別の金融機関で新しいNISAを始めたいのであれば、2023年のうちに口座変更の手続きをするのも1つの方法です。

新しいNISAの制度内容やメリット、デメリットについて詳しくは、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご一読ください。

2024年に始まる新NISAとは?変更点やメリット・デメリットを解説

NISA口座を変更する手順

では、NISA口座を開く金融機関は、どのような手順で変更できるのでしょうか。大まかな変更手順は、以下の通りです。

  1. 口座を開設している金融機関に申請をする
  2. 金融機関から「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」を受け取る
  3. 変更を希望する金融機関に必要書類を提出する
  4. 金融機関の変更が完了

口座変更の手順を順番に解説していきます。

1.口座を開設している金融機関に申請をする

まずは、NISAの口座を開設している金融機関に「金融商品取引業者等変更届出書」を請求しましょう。

請求後、金融機関から「金融商品取引業者等変更届出書」が送られてくるため、氏名や住所などの必要事項を記入して返送します。

また、届出書を提出するときは、運転免許証やマイナンバーカード(個人番号カード)などの本人確認書類のコピーを添付するのが一般的です。

2.金融機関から「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」を受け取る

利用中の金融機関にNISA口座の変更を申請すると「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」が郵送されてきます。

勘定廃止通知書は、NISA口座の金融機関は変更するものの、これまで保有していた商品を変更前の金融機関で引き続き非課税で保有するときに送られてくる書類です。

非課税口座廃止通知書は、変更前の金融機関にあるNISA口座を廃止し、それまで保有していた商品を非課税では保有しないときに発行されます。

NISA口座を変更するときは、新しく口座を開設したい金融機関に、勘定廃止通知書または非課税口座廃止通知書の原本を提出しなければなりません。

金融機関から送られてきた勘定廃止通知書や非課税口座廃止通知書は、なくさないよう大切に保管しておきましょう。

3.変更を希望する金融機関に必要書類を提出する

勘定廃止通知書または非課税口座廃止通知書を受け取った後は、変更を希望する金融機関に「非課税口座開設届出書」を請求しましょう。

非課税口座開設届出書に必要事項を記入し、勘定廃止通知書または非課税口座廃止通知書と本人確認書類、マイナンバーを確認できる個人番号記載書類などもあわせて変更を希望する金融機関に返送します。

4.金融機関の変更が完了

必要書類を返送した後は、金融機関と税務署による審査が行われます。税務署による審査があるのは、同じ人物が複数のNISA口座を開設していないかを確認するためです。

新しい金融機関と税務署による審査に通過すると、口座の変更手続きは完了します。NISA口座の変更手続きが完了するまでにかかる期間は、金融機関によって異なりますが、数週間〜1か月程度が目安となります。

また、10月1日以降に手続きをしたのであれば、新しい金融機関でNISA口座が開設されるのは、早くとも翌年の1月1日です。

まとめ

NISA口座を開く金融機関は、1年に1回であれば変更できます。すでにNISA口座を持っている金融機関で投資したい商品がない人や、取引時のコストや負担を軽減したい人は、口座変更を検討してはいかがでしょうか。

ただし、1月1日以降にNISAの非課税枠を1円でも利用しているのであれば、口座変更ができるのは翌年からです。また、変更前に保有していた商品は、新しい金融機関のNISA口座に直接移管できません。

NISAの制度内容は、金融や税制の専門家でないと理解が難しい部分があります。そこで、NISAについて不明な点があるときは、七十七銀行までお気軽にご相談ください。資産運用に精通した当行の職員が、NISAの制度内容や活用方法をわかりやすく説明いたします。

【監修者コメント】

2024年からは新しいNISA制度も始まり、本格的に投資を始めようと考える方も多いと思われます。
NISA口座は1人1口座なので金融機関は慎重に決めたほうがいいですが、もうすでにNISA口座を持っている方も、金融機関を変更して新たにNISA口座で始めることもできます。自分に合った金融機関を選びましょう。

※この記事は2023年7月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。

この記事をシェアする

このカテゴリの記事一覧を見る