新卒の給料は、「思っていたより少ない」と感じる人がいるかもしれません。理由は、求人票の金額と実際に使えるお金が違うためです。たとえば、月20万円と書いてあっても、実際に口座へ振り込まれる金額の目安は、15〜17万円ほどになります。
この差を知らないと、生活費の計画がうまく立ちません。そのため、社会人1年目は「いくらもらえるか」だけでなく、「いくら使えるか」を把握することが重要です。
本記事では新卒の平均給料とあわせて、お金の使い方や考え方も整理します。
目次
給料の話では、似た言葉がいくつも出てきます。しかし、それぞれ意味が違うため、混同すると判断を誤ります。
ここでは「初任給」「年収」「手取り」の違いを整理します。
結論として、新卒の給料を比べるときは初任給を見るのが基本です。
理由は、どの会社も同じ条件で比較しやすいためです。初任給とは、新卒で入社した人に支払われる月給のことで、残業代や通勤手当などは含まれません。求人票に書かれている金額がおおよその目安になります。たとえば「月給22万円」とあれば、そこがスタートラインです。就職先を選ぶときの目安として使いやすい指標といえるでしょう。
ただし、固定残業代などが含まれている場合もあるため、内訳の確認が必要です。
初任給が高いからといって、年収も高いとは限りません。年収は、1年間にもらうすべての合計です。
ボーナスや残業代も含まれます。たとえば、月給が低くてもボーナスが多い会社もあります。反対に、月給が高くてもボーナスが少ない場合もあります。
そのため、1年トータルでいくらになるかを確認することが大切です。
最もギャップを感じやすいのが「額面」と「手取り」です。
額面は、税金や保険料を引く前の金額です。一方で手取りは、それらを差し引いた後の実際手元に残る金額です。
たとえば額面20万円の場合、実際に振り込まれるのは15万〜17万円ほどになります。
イメージとしては、「もらった給料の一部は先に天引きされる」と考えるとわかりやすいでしょう。
生活費は、この手取りベースで考える必要があります。
入社してすぐの給料は、「思ったより多い」と感じる場合があります。しかし、その後に減るケースもあります。
理由は、保険料や税金の引かれ方が変わるためです。さらに2年目になると6月分の給与から住民税の支払いも始まります。その結果、手取りが数万円減ることもあります。
最初の月に余裕があっても、「ずっとこの金額が続く」と考えない方が安全です。
給与明細は項目が多く、最初はわかりにくいです。そのため、まずは1つだけ確認すれば十分です。
見るべきポイントは「差引支給額」です。これが実際に使えるお金です。
余裕があれば、以下もチェックすると理解が深まります。
毎月軽く目を通すだけでも、お金の感覚が身につきます。
新卒の給料は「どこに就職するか」で大きく変わります。全員が同じ金額からスタートするわけではありません。
主に影響するのは、学歴・業界・会社の規模・地域です。それぞれの違いを知ると、自分の位置が見えやすくなります。
ここでは厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」(以下、令和7年のデータ)を見ながら解説していきます。
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
結論として、学歴が高いほど初任給は高くなる傾向があります。企業が専門知識やスキルを評価するためです。
令和7年のデータによると、大学院卒の新規学卒者賃金は約29万9000円です。これに対して、大学卒は約26万2300円、高校卒は約20万7300円となります。
このように、最終学歴の違いが数万円の給料差を生み出します。取得した学位に応じて、企業が支払う報酬の基準が異なります。
どの業界に入るかで、給料の水準はかなり変わります。特に専門性が高い分野は高めになりやすいです。
令和7年のデータで20~24歳の賃金を産業別に見ると、鉱業・採石業・砂利採取業が28万5100円と高い水準にあります。学術研究・専門技術サービス業(約28万円)や金融業・保険業(約26万7000円)も上位に位置しています。
なお、年齢全体では電気・ガス・熱供給・水道業が44万4000円と最も高くなっており、長期的なキャリアを見据えた業界選びも重要です。
会社の規模も見逃せないポイントです。一般的に、大企業のほうが給料は高めです。
令和7年のデータでは、大企業の20~24歳の平均賃金は25万8000円となります。一方で中規模企業は23万7000円、小企業では22万6000円にとどまりました。
大手ほど給料が高い理由はシンプルで、資金に余裕があるためです。人材確保のために好条件を提示しやすくなります。
ただし、中小企業でも成長性が高い会社はあります。そのため、規模だけで判断せず総合的に見て判断しましょう。
勤務地によっても給料は変わります。特に都市部は高い傾向です。
令和7年のデータでは新卒だけのデータはないため、全体的な平均として紹介します。
東京都が41万8300円と全国で最も高い水準にあります。対照的に、青森県は26万3900円、鳥取県は27万8700円、宮崎県は26万8300円という結果でした。
このように、地域間で最大15万円以上の格差が存在しています。これは物価や最低賃金の違いが影響しています。都市部では地方にくらべて生活費も高額になりがちです。生活コストと収入のバランスを考慮して勤務地を選ぶことが大切です。
新卒の平均給料を知っておくことで、自身の希望の企業が基準よりも高いのか低いのかを判断できたり、その後の生活をイメージしやすくなります。
平均を知る最大のメリットは、比較できることです。提示された条件が高いか低いか見えてきます。
たとえば平均より低い場合、昇給やボーナスの仕組みを確認する必要があります。反対に高い場合は、その内訳に注意することが大切です。
冷静に判断するための「基準」として活用できます。
平均給料が分かると、生活のイメージが具体化します。いくら使えるかが見えてくるためです。
たとえば、
などを事前に考えられます。
いわば「一人暮らしの予行練習」ができる状態です。準備しておくほど、社会人生活は安定しやすくなります。
平均給料を知ると、就職や生活の判断がしやすくなります。しかし、数字だけを信じるのは少し危険です。ここでは、上手な使い方を整理します。適切な判断基準を身につけて、より良い選択ができるように備えてください。
提示される金額が高いという理由だけで、優れた企業だと断定するのは危険です。報酬が相場より優れていても、他の労働条件が厳しい可能性があるからです。
また、最初は支給額が低くても、社内の研修制度が充実しており長期的な成長を支援する優良な組織も存在します。
お金の数字面だけでなく、働きやすさやキャリアアップの道筋も含めて考える必要があります。長い目で見たときの価値も考えることが大切です。
待遇を確認する際は、額面だけでなくその他の条件に目を向けましょう。実際に入社して使えるお金は、保険料などを引いた後の金額になるからです。
また、家賃補助などの福利厚生が手厚い会社は、実質的な生活のゆとりを生み出します。さらに、定期的な昇給制度が整っているかどうかも、将来の生活を左右する大切な要素です。
初年度の金額にとらわれず、数年後の状態も見据えて総合的に判断しましょう。
求人票の金額が相場より高く見える場合、その内訳を必ず確認してください。企業によっては、あらかじめ残業代を含めた総額を提示しているケースがあるからです。
この場合、一定時間の労働をしても追加の手当は手に入りません。また、特定の条件を満たした時だけ支給されるお金が含まれていることもあります。基本の報酬がいくらなのかを明確に把握しましょう。
見かけの数字に惑わされないように注意することが重要です。
限られた収入で一人暮らしを成立させるには、適切な家計の管理が欠かせません。生活費をどのように配分し、資金を確保していくべきかを知ることが大切です。
ここでは、実家暮らしとの違いも踏まえながら、無理のないお金の使い方を解説します。
手取りが20万円の場合の生活費を具体的に計算してみます。
以上、合計11万円ほどが固定支出になります。
残りは約9万円です。ここから日用品や交際費、貯金をやりくりします。「意外と余裕はない」という感覚を持つ人も多いのではないでしょうか。
実家に住める場合、かなり有利です。大きな負担となる家賃や光熱費を節約できるからです。状況によっては、手取りの40%から50%という高い割合を貯蓄に回すことが可能な場合もあります。
そのため、勤務先と実家が通勤できる範囲なのであれば、社会人1〜2年目は「貯める期間」として実家を出ない選択もよいでしょう。
一人暮らしを始める際の住居費は、収入の30%以内が目安です。それ以上は日々の食費や交際費が圧迫されやすくなります。
たとえば手取りが20万円の場合、上限は6万円となります。会社に家賃補助や社宅制度がある場合は、それらを最大限に活用しましょう。
毎月必ず発生する固定費はあとから下げにくいため、安く抑えることが、家計を安定させるための近道になります。
単身生活で無理なく貯蓄していくには、手取り月収の10%から15%が目安です。最初から高すぎる目標を立てると挫折の原因になりかねません。
たとえば、手取りが20万円であれば、毎月2万円から3万円を設定しましょう。また、ボーナスが支給された場合は、その30%から40%を回すことをおすすめします。
まずは少額の貯蓄を習慣化し、生活に余裕が出てきたら少しずつ額を増やす方法が最も確実なやり方です。
社会人になりたての時期は、資金管理の方法を身につける絶好のタイミングです。お金が貯まる生活を構築するには、ルールに基づく家計の把握が必要です。
給料が入ったら、消費する分と将来のために保管する分を明確に分けましょう。手元にあるお金を無計画に使ってしまう傾向を防ぐためです。
生活費と貯蓄の境界線をはっきりと引くことで、無駄遣いを抑制しやすくなります。
お金を節約する際は、固定費の見直しからはじめます。毎月決まって支払う出費を減らすほうが、節約効果が高いからです。
たとえば、スマートフォンの通信プランを安いものに変更するだけで、月に数千円の節約に繋がります。また、使用頻度の低いサブスクリプションは解約することも重要です。
確実にお金を貯めるには、先取りを実践することです。生活費が余ったら回そうという考え方では、すべて使い切ってしまうリスクが高まるからです。
毎月の収入が振り込まれたら、真っ先に決めた金額を別の場所へ移してしまいましょう。銀行の自動積立サービスを利用すれば、毎月自動でお金が移動するため「気づいたら貯まっている」という状態を作ることが可能です。
資金確保を成功させるコツは、普段使う口座と保管専用の口座を完全に分けることです。一つの場所で全てを管理すると、境界が曖昧になり、つい手をつけてしまうからです。
お金を別の場所に移すことで、簡単には引き出せない状態を作り出せます。目に見えて残高が増えていくと、モチベーションの維持にも繋がるでしょう。
資金確保の習慣が身についてきたら、次は資産を増やすステップへ進みましょう。社会人1年目から運用を始めることで、時間を味方につけた長期的な成長が期待できます。
運用を始める前に、まずは不測の事態に備える資金をしっかりと確保することが重要です。病気やケガによる休職など、急にお金が必要になる場面が訪れる可能性があるためです。
傷病手当金の受け取りには時間がかかるケースもあります。そのため、単身生活の場合は3か月分程度の生活費を手元に置いておくのが目安とされています。現金を安全な形で確保した上で挑戦しましょう。
資産運用を始める際に検討すべき制度として、NISAやiDeCo、企業型DCなどが挙げられます。
これらは国が用意した税制優遇の仕組みであり、得た利益が非課税になるメリットがあります。通常の取引では利益に対して税金がかかりますが、これらの制度を利用すれば効率よくお金を増やすことが可能です。それぞれの特徴を理解して上手に活用してください。またそれぞれの制度は併用も可能です。
NISAは、柔軟に資産を形成したい人に適した制度です。運用益が非課税になる利点に加え、いつでも好きなタイミングで資金を引き出せる点が魅力です。
数年後に必要となる結婚資金や車の購入費用など、中期のライフイベントに向けた準備に向いています。
毎月少額から積立を始められるため、経験がない新入社員でも安心してスタートできるでしょう。使い勝手の良さが特徴的な仕組みです。
iDeCoは、老後の生活資金を確実に準備したい人に向いています。
ただし、原則として60歳までお金を引き出すことができません。そのため、途中で使う予定のない余剰資金で運用することが大前提となります。
将来の不安に備えて、若いうちから時間をかけて資産を育てたい人に適した制度と言えるでしょう。
企業型DCは会社が掛金を拠出し、従業員自身が運用商品を選んで老後資金を作る仕組みです。なかには自分で掛金を上乗せできるマッチング拠出を導入している職場もあります。
掛金の拠出方法は会社ごとに異なり、事業主が負担する場合もあれば、ライフプラン手当などを活用して拠出する場合もあります。人事や総務部門から配付される資料を読み込み、会社の福利厚生をフル活用しましょう。
どの仕組みを利用すべきか迷った時は、資金の目的と引き出しやすさを基準に判断します。
20代の若い時期はさまざまなライフイベントが控えています。そのため中長期の資産形成には好きなタイミングで売却できるNISAを優先するとよいでしょう。一方で、節税効果を享受しつつ老後のお金を形成したい場合はiDeCoや企業型DCを選択します。
運用を始める決意を固めても、実際に毎月いくら積み立てるべきか悩む人は少なくありません。投資にはリスクが伴うため、生活を脅かさない範囲で金額を設定しましょう。
ここでは新社会人が無理なく資金を振り分けるための考え方を解説します。
投資額を決定する前に、手取り収入の中から残すお金の合計をいくら確保するかを決めます。新卒の場合は収入の10%から20%を目標として設定しましょう。
たとえば、手取りが20万円であれば2万円~4万円です。その予算の中で、現金での確実な保管と、リスクを取る運用の割合を決定します。
最初のうちは現金比率を多めにして安全な基盤を作ることが大切です。徐々にバランスを調整していく方法をおすすめします。
運用に割り当てる具体的な金額の目安は、総収入の5%から10%程度が妥当です。少額からスタートすることで、価格変動による心理的なストレスを軽減できるからです。
手取りが20万円であれば、毎月1万円~2万円を積立に回す計算になります。市場の値動きに慣れてきたり、昇給で余裕ができたりしたタイミングで、少しずつ掛金を引き上げると失敗を防げます。
金銭的な余裕がある場合でも、過度な投資への偏りは避けるべきです。運用はお金が増える可能性がある半面、価値が下がるリスクもあるからです。
手元の残ったお金をすべて投資に回してしまうと、突然のトラブルに対応できなくなる可能性があります。また、日々の生活の質を極端に落としてまで資金を捻出するのは本末転倒です。
今を楽しむための支出と将来に備える積立のバランスを常に意識してください。
毎月の積立額を決める際、賞与の支給を前提とした強気の設定は控えましょう。会社の業績や独自の事情によって、支給されなかったり少額になったりするリスクがあるからです。
あくまでも毎月の給与の範囲内で継続できる金額を設定し、臨時収入が入った時はスポットで投資に回すのが安全な方法です。
初心者が失敗を避けるためには、長期・積立・分散の原則を忠実に守ることが欠かせません。長期間保有し続けることで、一時的な下落リスクを抑えられるからです。
また、毎月一定額を継続して買うことで、相場が高い時に買いすぎる事態を防ぎます。さらに複数の資産に投資先を分ければ、一つの市場が崩れても全体への影響を最小限にとどめられるでしょう。
短期間で利益を狙わず、地道に資産を育てていく姿勢が大切です。
ここまで解説した知識を踏まえて、実際にお金の計画を立てるための具体的な手順をステップごとに紹介します。
初めての給与明細を受け取ったら、以下の順番に沿って自分だけの確実な家計ルールを構築してください。
計画を立てる第一歩は、自分が自由に使える正確な金額を把握することです。予算のベースとなるのは、税金などが引かれた後の差引支給額だからです。総支給である額面で計算すると、後で資金が不足する事態に陥ります。
また、社会人2年目の6月分からは住民税の天引きが始まり、受取額が減る可能性があることも考慮に入れましょう。常に保守的に収入を見積もることを心がけるのが、安全な資金管理の秘訣です。
自由に使える額を確認したら、次に毎月必ず発生する支出を洗い出します。自分が何にいくら使っているのかを可視化することで、無駄なポイントが明確になるからです。
家賃や通信費などの固定費をノートやアプリに書き出してください。続いて、食費や日用品代の予算をおおまかに設定します。
最初の数か月は家計簿をつけて、自分の消費のクセを正確に把握することが効果的です。現状を知ることから始めましょう。
支出の全体像が見えたら、不測の事態に備える資金の目標額を設定します。
このお金は決して投資に回さず、銀行の預金などすぐに引き出せる形で保管してください。最優先で貯めることが、精神的な余裕と安定した日々の土台作りに貢献します。
防衛資金の目標が決まったら、毎月の収入からいくらを保管に回すかを決定します。決めた予算は、給料日に自動で別の口座へ移すよう銀行の手続きを行います。
残った範囲内で、日々の食費や交際費をやりくりするサイクルを確立しましょう。この仕組みを早い段階で作ることが、着実に資産を増やす最大のポイントです。無理のない額から始めてください。
安全網がある程度確保でき、毎月の家計にも余裕が生まれてきたら運用を取り入れます。NISAやiDeCoといった非課税制度の中から、自分のライフプランに合ったものを選択してください。
NISAは金融機関によって最低投資額が異なりますが、100円や1,000円程度から始められる場合があります。iDeCoは月5,000円から拠出できるため、自分に合った無理のない金額で始めやすい制度です。相場の変動に慣れていない段階で大きな金額を投じるのは避けましょう。時間を味方につけて資産を育ててください。
計画は一度決めて終わりではありません。生活スタイルの変化に合わせて、定期的に状況を見直すことが大切です。
昇給による収入アップや、ライフイベントに伴う出費の増加など、環境は常に変化します。保管のペースは順調か、無駄な支払いが膨らんでいないかなどを半年から1年ごとにチェックしてください。
定期的なメンテナンスを行うことで、より精度の高い管理が可能になります。
新卒の給与平均は、学歴や勤務地などによって大きく異なります。しかし、額面の初任給だけでなく、税金や保険料が引かれた手元のお金を正確に把握することが、生活設計の第一歩となります。
初めての報酬を受け取ったら、まずは不測の事態に備える資金を確保し、収入の10%から20%を目安に先取りで保管する習慣を始めましょう。余裕が出てきたら、NISAやiDeCoなどの制度を活用して積立投資に挑戦するのも効果的です。
資金の管理は、早く始めるほど将来の不安を減らし、人生の選択肢を広げてくれます。焦らずに自分のペースで豊かな資産形成を進めていってください。毎月の地道な継続が、数年後に大きな差となって表れるはずです。
※この記事は2026年3月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。