マイホーム購入は人生における大きな出来事の一つです。住宅ローン減税は、その経済的な負担を和らげてくれるでしょう。住宅ローン減税とは、住宅ローンを利用した際に所得税から一定額が控除される仕組みです
住宅ローン減税は、住宅取得を力強く後押しし、家計にゆとりを生む可能性があります。とくに2025年現在、低金利が続いている日本では、減税効果を合わせることで月々の返済額や総支払額をさらに抑えることが可能です。
本記事では、この住宅ローン減税の仕組みや要件を分かりやすく解説します。理想の住まいを手に入れるために、賢く活用しましょう。
目次
住宅ローン減税は、ご自身の住まいを住宅ローンで購入する際に、所得税から一定額が控除される制度です。正式名称は「住宅借入金等特別控除」で、住宅取得を後押しし、経済を活性化する目的で設けられました。
この減税制度には複数のメリットがあります。2025年現在、日本の金利は歴史的に見て低い水準で推移していますが、低金利と減税効果を組み合わせることで、毎月の返済額や総支払額を実質的にさらに軽減できます。
また、政府は省エネルギー性能が高い住宅の普及に力を入れています。そのため、こうした住宅を選ぶと、より手厚い減税措置を受けられます。これから住宅の購入やリフォームを検討されている方にとって、この制度は資金計画を立てるうえで心強い支えとなるはずです。
「住宅ローン減税」と「住宅ローン控除」は、どちらも同じ制度を指す通称で、正式名称は「住宅借入金等特別控除」といいます。呼び方が異なっても、制度の内容や適用要件、計算方法に違いはありません。
住宅ローン減税は、住宅の種類や性能、世帯の状況によって適用要件や控除額が細かく決められています。
とくに2025年は、省エネルギー性能が高い住宅への優遇措置が大きいため、賢く選択することで大きな減税メリットを得られます。ここでは、現在の要件から控除額の計算方法、そして具体的なシミュレーションまで、全体像を分かりやすくお伝えします。
住宅ローン減税の適用を受けるには、いくつかの要件を満たす必要があります。まず共通して満たすべき要件があり、それに加えて住宅のタイプや取得方法によって異なる追加要件があります。自身のケースに当てはまるか確認しましょう。
新築住宅の場合、共通要件に加え、以下の要件を満たす必要があります。
買取再販住宅とは、主に宅地建物取引業者が買い取ってリフォームし、再販売する住宅を指します。これらの住宅は、共通要件と新築住宅の追加要件に加え、主に以下の固有の要件も満たす必要があります。
既存住宅の場合、共通要件と新築住宅の追加要件(床面積・居住開始時期)に加え、以下の要件を満たす必要があります。
2022年の税制改正により築年数要件は撤廃され、新耐震基準に適合していれば築年数に関わらず対象となりました。これにより、昭和56年以前に建築された住宅でも、耐震基準適合が証明できれば住宅ローン減税を利用できます。
リフォームの場合は、共通要件に加え、以下の条件を満たす必要があります。
主なリフォームの対象は以下の通りです。
2022年の税制改正によって、住宅の性能に応じた控除額が導入されました。とくに、省エネ性能が高い住宅は、より手厚い控除を受けられるようになっています。
新築住宅の場合、2024年1月以降に建築確認を受けた住宅は、省エネ基準への適合が必須です。この基準を満たさない新築住宅は、原則として住宅ローン減税の対象外となります。
ただし、2023年12月31日以前に建築確認を受けた住宅、または2024年6月30日以前に建築された住宅であれば、例外的に適用を受けることが可能です。その際の借入限度額は2,000万円、控除期間は10年間です。
一方、既存住宅(中古住宅)の場合は、省エネ基準への適合が必須ではありません。基準を満たさない住宅も対象となりますが、控除限度額は省エネ性能が高い住宅に比べて低く設定されています。
主な住宅の種類と、それに対応する控除の優遇は以下の通りです。
住宅購入を検討する際は、これらの省エネ性能要件と控除優遇措置を十分に考慮し、長期的な視点で最適な住宅を選ぶことが重要です。
住宅ローン減税の控除額は、基本的に「年末時点の住宅ローン残高」に「控除率(0.7%)」を掛け合わせて計算します。
控除額 = 年末の住宅ローン残高 × 控除率(0.7%)
ただし、計算で出た金額がそのまま控除されるわけではありません。控除額には上限が設けられており、その上限額は住宅のタイプによって異なります。とくに省エネルギー性能が高い住宅は、この上限額が優遇される仕組みです。2025年に入居する場合の控除上限額は、以下の表のとおりです。
また、住宅ローン減税の控除が適用される期間は、基本的に13年間です。これは、住宅ローンを組んで自宅に住み始めた年を始まりとして、その後13年にわたり、毎年所得税から控除を受けられることを意味します。ただし、中古住宅の購入やリフォームの場合、控除期間は最長で10年間となります。
住宅の種類 | 子育て世帯・若者夫婦世帯以外※1 | 子育て世帯・若者夫婦世帯※1 | 控除期間 | |
---|---|---|---|---|
新築・住宅買取再販 | 長期優良住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 | 13年 |
低炭素住宅 | ||||
ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 | ||
省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 4,000万円 | ||
その他の住宅 | 原則対象外※2 | |||
既存住宅 | 長期優良住宅 | 3,000万円 | 10年 | |
低炭素住宅 | ||||
ZEH水準省エネ住宅 | ||||
省エネ基準適合住宅 | ||||
その他の住宅 | 2,000万円 |
※1 子育て世帯(入居した年の12月31日時点の現況で判定):年齢19歳未満の扶養親族を有する者。若者夫婦世帯:年齢40歳未満であって配偶者を有する者、又は年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者を指します。
※2 2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅で省エネ基準を満たさない住宅は原則対象外。ただし、2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅、または登記簿上の建築日付が2024年6月30日以前の住宅については、借入限度額2,000万円・控除期間10年間として適用されます。
(注)上記の控除上限額は、2024年・2025年に入居する場合のものです。2026年以降は制度が変更される可能性があります。
住宅ローン減税を適用すると、具体的にどのくらい税金が安くなるのか、シミュレーションで確認しましょう。
ここでは、新築の省エネ基準適合住宅を住宅ローンで購入した場合を例に、減税効果を試算します。
年数 | 年末ローン残高 (概算) |
控除額 (年末ローン残高 × 0.7%) |
控除上限額 (省エネ基準適合住宅) |
実際に控除される金額 |
---|---|---|---|---|
1年目 | 3,900万円 | 27.3万円 | 21万円 | 21万円 |
2年目 | 3,800万円 | 26.6万円 | 21万円 | 21万円 |
3年目 | 3,700万円 | 25.9万円 | 21万円 | 21万円 |
… | ||||
13年目 | 2,700万円 | 18.9万円 | 21万円 | 18.9万円 |
このシミュレーションでは、控除上限額の21万円が適用されるため、最初の数年間は控除額が上限に達しています。13年間での減税効果の合計は、年末ローン残高と控除上限額を考慮すると、およそ260万円となります。
ただし、この金額はあくまで概算です。実際の控除額は、年収、家族構成、住宅ローンの返済状況、住宅の性能などによって変わります。また、年間の所得税額が控除予定額より少ない場合は、控除しきれない分は翌年の住民税から控除されます(上限は年間9.75万円)。
このように住宅ローン減税を上手に使うことで、住宅取得後の家計の負担を大きく減らすことが可能です。
住宅ローン減税の適用を受けるには、自身で手続きを行う必要があります。とくに、住宅ローン減税を初めて利用する方は、必ず確定申告が必要です。
初めて住宅ローン減税を利用する際の手続きの流れと必要書類を確認しておきましょう。
確定申告は、通常、住宅に入居した年の翌年の2月16日から3月15日までの期間に行います。
確定申告の際に提出する主な書類は以下のとおりです。
必要書類 | 概要 |
---|---|
確定申告書 | 国税庁ホームページや最寄りの税務署で受け取る。 |
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | 国税庁ホームページや最寄りの税務署で受け取る。 |
源泉徴収票 | 会社員の方の場合に必要。勤務先で受け取る。 |
住宅ローンの年末残高証明書 | 借り入れをした金融機関から毎年送付される。 |
土地・建物の登記事項証明書 | 法務局で取得。 |
不動産売買契約書または工事請負契約書の写し | 住宅の取得費や建築費を確認する書類。 住宅取得時にもらう。 |
住民票の写し | 新しい住所に移転していることを証明する。 お住まいの自治体で取得。 |
マイナンバー(個人番号)が確認できる書類および本人確認書類 | - |
長期優良住宅、低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅の場合:それぞれの認定通知書や証明書の写し | 新築・既存住宅の購入の場合に必要。 所管行政庁に申請して交付。 |
また、リフォームによって住宅ローン減税を申請する場合には、上記の書類に加えて以下の書類が必要になります。
さまざまなケースが考えられるため、これらの書類について不明な点があれば、国税庁のウェブサイトや「住宅ローン控除を受ける方へ」などの情報も参考にしてください。
e-Tax(国税電子申告・納税システム)を使えば、ご自宅のパソコンやスマートフォンから確定申告書の作成・提出ができます。
会社員など給与所得者の方であれば、住宅ローン減税の適用を2年目以降は年末調整で受けることができます。これにより、確定申告の手間を省くことが可能です。
税務署から送付される「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」は、ご自身で控除額を計算し記入する書類です。
記入方法がわからない場合は、国税庁のウェブサイトを参照するか、税務署の窓口で相談することも可能です。
この書類には、住宅借入金等の年末残高、居住開始年月日、住宅の種類(長期優良住宅など)、その年の合計所得金額の見込み額といった主な項目を記入し、これらの情報をもとに控除額を計算して記載します。
住宅ローン減税の申請では、いくつかの間違いが起こりやすい点があります。スムーズに控除を受けるために、注意すべき点を解説します。
提出書類に不備があると、税務署から連絡が入り、手続きが遅れることがあります。とくに、以下の書類は添付漏れや記載内容の誤りなどが起こりやすいので、提出前に再度確認しましょう。
控除期間は原則13年間ですが、既存住宅の取得やリフォームの場合は最大10年間です。ご自身の適用期間を正確に把握し、間違えないように注意しましょう。なお、期間の起算日は「居住を開始した年」となります。
住宅ローン減税は、実際に住んでいる住宅が対象です。そのため、住民票の住所と実際に住んでいる物件の所在地が一致している必要があります。引っ越し後、速やかに住民票を移転するのを忘れないようにしましょう。
また、共有名義で住宅を取得した場合、持分割合に応じてローンを組んでいるか、所得税を納めているかなど、個別の状況に合わせた確認も必要です。不明な点があれば、税務署や税理士に相談することをおすすめします。
住宅ローン減税は、マイホーム取得の大きな助けとなる制度ですが、その適用期間には期限があり、常に改正の可能性があります。
ここでは、現行制度の期限と、2026年以降に考えられる制度の見直しについて、ポイントを絞って解説します。住宅取得を検討中の方は、将来を見越した計画を立てるうえでぜひ参考にしてください。
現在適用されている住宅ローン減税の制度は、2025年12月31日までに入居した方が対象です。この期限までに入居すれば、現行の制度内容が適用されます。
ただし、新築住宅や買取再販住宅の場合、契約締結日によって適用される制度が異なるケースもあるため、注意が必要でしょう。
現在のところ、2026年以降の住宅ローン減税の延長や内容変更について、正式な発表はありません。しかし、これまでの税制改正の動向や社会情勢を考えると、何らかの見直しが行われる可能性は十分に高いといえます。
過去の住宅ローン減税は、景気対策や住宅政策の一環として度々改正されてきました。とくに近年は、少子高齢化の進展や環境問題への意識の高まりから、住宅政策も変化しています。
例えば、政府は2050年カーボンニュートラルの実現に向けて住宅の省エネ化を強く推進しており、今後、省エネ性能の要件がさらに厳しくなったり、省エネ性能が低い住宅への優遇措置が縮小されたりする可能性があります。
また、経済や財政状況によっては、控除率や控除上限額が見直されることも考えられますし、制度の公平性を保つため所得制限の要件が変更される可能性もゼロではありません。
住宅ローン減税は国の政策によって内容が変動する可能性があるため、住宅の購入やリフォームを検討する際は、必ず国税庁のウェブサイトや関係省庁の発表など、常に最新の情報を確認することが重要です。住宅メーカーや金融機関の担当者も最新情報に詳しい場合があるので、相談してみるのも良いでしょう。
住宅ローン減税の恩恵を最大限に受けるためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。ここでは、ポイントを2つ紹介します。
住宅ローン減税は、入居時期によって適用される制度が異なります。とくに、現行制度が2025年末までとなっているため、それまでに確実に入居できるようなスケジュールで、住宅の購入やリフォーム計画を進めることが大切です。
新築の場合は工事期間も考慮し、余裕を持った計画を立てましょう。また、省エネ性能が高い住宅は、より多くの控除を受けられるため、長期的に見ると初期費用が高くなっても、維持管理にかかる費用や減税効果を考慮するとお得になる場合があります。
住宅ローン減税は税金面で大きなメリットがある一方で、住宅ローン自体の条件も重要です。とくに、総返済額に影響を与える金利はよく確認しましょう。
低金利であることに越したことはありませんが、将来の金利変動リスクを考慮し、固定金利型と変動金利型のどちらがご自身に合うか慎重に検討することをおすすめします。
さらに、住宅ローンを借りる際には、保証料や事務手数料、印紙税などさまざまな諸費用が発生します。これらの費用も踏まえ、総合的に判断することが大切です。
住宅ローン減税は、マイホームの取得を考えている方にとって有利な制度です。2025年12月31日までの入居であれば現行の制度が適用され、とくに省エネ性能の高い住宅は大きな減税効果を期待できます。
住宅は人生における大きな買い物ですが、この減税制度を上手に活用することで、経済的な負担を軽減し、理想の住まいを実現する大きな手助けとなるでしょう。
制度の適用要件や申請手続きは複雑に感じるかもしれませんが、ご自身の状況を把握し、必要な書類を漏れなく準備することが重要です。不明な点があれば、税務署や専門家、または金融機関に相談しながら、手続きを進めてください。
七十七銀行では、お客様の住宅取得をサポートいたします。住宅ローンのご相談はもちろんのこと、住宅ローン減税に関するご不明な点も、お気軽にお尋ねください。
※この記事は2025年6月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。