「為替」という言葉を一度は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、その意味をきちんと理解している人は意外に少ないかもしれません。
本記事では、為替とはなにかについてわかりやすく解説します。為替レートが決まる仕組みや円安・円高が私たちの生活に与える影響なども紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
為替には、内国為替と外国為替の2種類があります。それぞれについて見ていきましょう。
内国為替とは、現金の輸送を伴わず国内でのお金のやりとりを指します。日本国内への銀行振込や口座振替・小切手での決済などが、内国為替です。
今はインターネットバンキングでの振込などが当たり前のため、内国為替は頻繁におこなわれています。
外国為替とは、異なる2つの通貨を交換する取引を指します。日本円と米ドルやユーロなどの外貨を交換したり、米ドルとユーロなどの外貨同士を交換する取引が外国為替です。
商品の輸出入や外国株式の購入などにあたって外貨が必要となるため、外国為替が発生します。そのため、グローバルな現代社会において外国為替は頻繫におこなわれる取引です。
また、一般的に「為替」というとこの外国為替を指すことが多いです。
為替レートとは、外国為替において異なる通貨を交換する際の比率のことです。
例えば、1米ドルを手に入れるために150円が必要な場合、為替レートは1米ドル=150円となります。各通貨の日本円との為替レートは次のとおりです。
通貨 | TTS(円貨→外貨) | TTB(外貨→円貨) |
---|---|---|
米ドル | 160.10 | 158.10 |
ユーロ | 171.83 | 168.83 |
スイスフラン | 179.26 | 177.46 |
イギリスポンド | 205.37 | 196.68 |
オーストラリアドル | 107.90 | 103.90 |
カナダドル | 117.82 | 114.62 |
香港ドル | 20.82 | 19.96 |
*2024年6月21日11時30分現在
円を売って外貨を買う際の為替レートがTTS、外貨を売って円を買う際の為替レートがTTBです。
金融機関が通貨を交換する際に手数料が発生するため、TTSとTTBの値が異なります。
上記表を参考にすると、2024年6月21日11時30分現在において、1米ドルを買うには160.10円が必要です。また、1米ドルを売ると158.10円が手に入ります。
為替レートは、常に変動します。
例えば、2023年1月~2024年6月にかけての米ドル/円の為替レートの動きは次のとおりです。
日付(1日) | 為替レート(仲値*1) |
---|---|
2023年1月 | 132.70 |
2023年2月 | 129.90 |
2023年3月 | 136.41 |
2023年4月 | 133.53 |
2023年5月 | 136.84 |
2023年6月 | 139.19 |
2023年7月 | 144.99 |
2023年8月 | 142.45 |
2023年9月 | 145.73 |
2023年10月 | 149.58 |
2023年11月 | 151.47 |
2023年12月 | 147.88 |
2024年1月 | 141.83 |
2024年2月 | 146.85 |
2024年3月 | 150.31 |
2024年4月 | 151.43 |
2024年5月 | 157.97 |
2024年6月 | 156.74 |
*1…TTSとTTBの中心値
1年半の間に、為替レートは大きく変動しています。2023年1月と2024年6月との為替レートの差は約24円です。
では、なぜ為替レートはこのように変動するのでしょうか。
為替レートが決まる仕組みは、モノやサービスの価格の決まり方と同じです。欲しい人が多いモノやサービスの価格は上がり、需要が低い場合は価格が下がります。
同様に、為替レートも各通貨の需要によって交換比率が決まる仕組みです。
例えば、米ドルを欲しい人が増えると米ドルの価値は上がるため、1米ドルを購入するために多くの円が必要になります。同時に円の人気が下がると、米ドルを購入するのにはさらに多くの円の支払いが必要です。
このような状況では、1米ドル=150円だった為替レートが1米ドル=200円などに変動します。
逆に日本円の需要が高まり、米ドルの需要が低下すれば、1米ドル=150円だった為替レートが1米ドル=100円などに変動します。
では、そもそもなぜ通貨の需要は変動するのでしょうか。通貨の需要の変動要因はさまざまですが、次のような傾向が見られます。
それぞれ内容を確認しましょう。
景気が良い国の通貨は買われやすい傾向にあります。
これは景気の良い国が投資対象となりやすいことが要因です。景気が好調な国では企業の業績も良くなるため、外国投資家からの株式投資が増加します。
株式を買うにはその企業の国の通貨をまず購入する必要があるため、通貨の需要が高まる仕組みです。景気の良し悪しを判断する指標はいくつかありますが、代表的なものは次のとおりになります。
これらは投資家も注目する指数となるため、各国の景気を知りたい人は確認しておきましょう。
「金利」も通貨の需要を決めるうえでの重要な判断材料となります。
金利が高い国の通貨は、保有するだけで多くの利息が手に入るため、買われやすいです。
例えば、金利が年率1%の定期預金と年率0.01%の定期預金があるとします。100万円分保有した場合、前者は毎年1万円の利息をもらえる一方で、後者でもらえる利息は毎年100円(為替レート・税金は考慮しない)です。
この条件であれば、金利が年率1%の定期預金にお金を預けたいと思う人が多いでしょう。そのため、金利の高い通貨は買われやすく、需要が高まる傾向にあります。
当行が取り扱う日本円の定期預金(スーパー定期)と外貨定期預金(77オープン型外貨定期預金)の預金金利は次のとおりです。
通貨 | 金利(年率) |
---|---|
円 | 0.025% |
米ドル | 1.000% |
ユーロ | 0.030% |
オーストラリアドル | 0.100% |
*2024年6月17日9時現在
*外貨定期預金にはリスクがあります。77オープン型外貨定期預金についてのリスク、詳しい情報はこちらをご覧ください。
77オープン型外貨定期預金|七十七銀行
もっとも利息がもらえる米ドルの定期預金にお金を預けようと思った人もいるかもしれません。これが金利の高い通貨が人気を集める理由です。
ただし、通貨によっては金利は高くても値動きが激しく安定的な資産形成には向いていないものもあるため、投資家は利息と値動きを見ながらどの国の通貨を保有するか判断します。
要人の発言も為替レートに影響します。
大統領、総理大臣、中央銀行(日本銀行やFRBなど)の総裁や財務長官などの発言は、その国の政策や経済動向を見極めるうえで重要な手掛かりとなります。
特に金融政策の変更を示唆する発言などは、為替への影響が大きいです。
一般的には、物価が適正水準より高い・経済について強気の見方を示す発言は、その国の通貨が上昇しやすくなります。一方、物価が適正水準より低い・経済について弱気の見方を示す発言は通貨が下落しやすくなります。ただし、これらの動きは確実ではないので、発言を通して市場がどのように動くのかを見極めることが大切になります。
「円安」「円高」という言葉をニュースなどで聞いたことがある人も多いかもしれません。
円安・円高は、外貨との為替レートの変動によって起こります。
外貨に比べて円の需要が増え、円の価値が高まる状態が円高です。今まで1米ドル=150円だった為替レートが1米ドル=100円になるような状態を指します。
一方で、外貨に比べて円の需要が減り価値が低くなる状態が円安です。今まで1米ドル=150円だった為替レートが1米ドル=200円になるような状態を指します。
【監修者コメント】
あくまでも過去の実績・統計からにはなりますが、1990年から2023年までの米ドル為替の平均値は112円になっています。それからすると、2024年6月までの状態は円安ドル高ということになります。
円安・円高になると、私たちの生活にどのような影響が出るのでしょうか。
円安になると海外旅行に行きづらくなり、円高になると海外旅行に行きやすくなります。これは、円安時には旅行先での買い物や宿泊費が高くつき、円高時には旅行費用を抑えられるためです。
例えば、旅行先で10米ドルの食事をするとします。同じ10米ドルでも為替レートによって日本円での価格は異なります。
為替レートが1米ドル=100円であれば食事代は1,000円ですが、1米ドル=200円の場合は2,000円です。
このように円安時には支出がかさんでしまうため、金銭的な理由で海外旅行に行きづらくなります。
【監修者コメント】
海外の方が日本に旅行にくる場合は、円安ドル高の状態がいいです。日本人が海外に行く場合は、円高ドル安の方が買い物をするのも安く買えます。
円安になると外貨建て資産の価格が上がり、円高になると外貨建て資産の価格が下がります。
外貨建ての資産とは次のようなものです。
これらの資産は、円安になると円換算での価格が上がります。
例えば、1株100米ドルの米国企業の株式を保有している場合、為替レートが1米ドル=100円の場合の円換算価格は1万円です。一方で、為替レートが1米ドル=200円の場合の円換算価格は2万円になります。
株価自体は変動しなくても、円安の進行により円換算での資産価格は上昇します。一方で、円高時には円換算での価格は下落します。
株式以外にも外貨建ての投資商品は同様に円安・円高の影響を受けるため、投資家は為替レートの変動を頻繁に確認しています。
【監修者コメント】
ドル高の要因は、日本と海外の金利差にあります。金利が高い方が魅力的なので、ドルの金利が高ければ買う人が多くなります。それにより円が売られて円安になるという傾向になるわけです。
円安になると外国からの観光客が増え、円高になると外国からの観光客が減りやすいです。これは、円安時には外国観光客が日本で安く買い物できることが理由となっています。
例えば、アメリカからの観光客が日本で1,000円の食事をする際、1米ドル=100円の為替レートだと10米ドルの支払いが必要です。
一方で、円安が進行して1米ドル=200円になった場合、5米ドルで1,000円分の食事ができます。そのため、円安時には割安で日本で買い物や宿泊ができるため、外国人観光客は増えやすいといえるでしょう。
一般的に、円安になると輸出産業が盛り上がり、円高になると輸入産業が盛り上がります。
例えば、為替レートが1米ドル=100円のときに10万米ドルでアメリカ企業に商品を輸出すると、売上は1,000万円(100円×10万米ドル)です。一方で、1米ドル=200円の場合は売上が2,000万円(200円×10万米ドル)に倍増します。
そのため、円安時には輸出産業は日本円換算で売上が増え、業績が伸びやすいです。一方で、輸入産業は円高時に有利です。
10万米ドル分の商品をアメリカから輸入する場合、1米ドル=200円の為替レートだと購入に必要な金額は2,000万円(200円×10万米ドル)ですが、1米ドル=100円だと1,000万円(100円×10万米ドル)で同じ商品を輸入できます。
円安・円高は事業にも大きな影響を与えることを覚えておきましょう。
外国為替取引は、金融機関などでおこなえます。
当行では窓口での両替やインターネットでの外貨預金振替(円貨口座と外貨口座間での通貨交換を伴う振替)が可能です。
外貨送金などもできるため、外貨のやりとりを行う人が多いことはぜひ利用してみてください。外貨預金について詳しくは以下でご確認ください。
外貨預金|七十七銀行
為替は、私たちの生活と密接に関係しています。
本記事で紹介したとおり、円高になることで海外旅行へ行きやすくなったり、円安になることで外貨建ての資産価格が上がったり外国人観光客が増えたりと、その影響はさまざまです。
いきなり投資するのは不安という場合は、為替レートの変動を定期的に確認することからはじめてみましょう。
【監修者コメント】
為替商品は分からないという方も、これを機に為替とは何か、そして円だけでなくドルで持つ資産も考えてみてはいかがでしょうか。
【七十七銀行 関連ページ】
※この記事は2024年6月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。