毎月の住宅ローンの返済が負担に感じる方は、借り換えを検討してみましょう。住宅ローンの借り換えによって、毎月の返済額や総返済額が減らせる可能性があります。
ただし、金利だけを比較して借り換えたことで支払額が増えてしまったり、借り換えにより住宅ローン控除が利用できなくなったりするなど注意点もあります。
この記事では住宅ローンの借り換えのメリット・デメリット、注意点を解説しています。
目次
住宅ローンの借り換えとは、別の金融機関で新たに住宅ローンを組み直し、現在利用している住宅ローンを一括返済することです。
今よりも金利が低い住宅ローンに借り換えができれば、毎月の返済額や利息を含めた総返済額が減らすことができます。
住宅ローンの借り換えにより、変動金利の金利変動リスクを抑えられる、返済負担が軽減する、団体信用生命保険を拡充できるといったメリットがあります。各メリットについて、詳しく紹介します。
住宅ローンの借り換えにより、変動金利の金利変動リスクを避けられます。住宅ローンは大きく分けて、変動金利と固定金利の2つがあります。
変動金利とは、借入期間中に適用される金利が変動するタイプのローンです。変動金利タイプも住宅ローンは、半年に一度、金利の見直しが行われます。
一方、固定金利は、借入時の金利が返済開始から終了まで変わらないタイプのローンです。世の中の金利情勢に変化が起こっても、借入時の金利が上がったり、下がったりすることはありません。
今後、変動金利の金利が上昇すると考えられるときは、固定金利への借り換えにより、変動金利の金利上昇リスクを避けることができます。
なお金利タイプには、借入時から一定期間、金利が固定される「固定金利選択型」という住宅ローンもあります。固定金利期間終了後は一般的に変動金利になりますが、改めて固定金利選択型を選ぶことも可能です。固定金利期間終了時も、借り換えを検討するタイミングの1つといえるでしょう。
一般的に固定金利よりも変動金利のほうが、適用金利は低い傾向があります。そのため日本では、約7割が変動金利タイプを選んでいます。
【利用した住宅ローンの金利タイプ】
期間 | 変動型を選択した割合 |
---|---|
2021年10月~2022年3月 | 73.9% |
2022年4月~2022年9月 | 69.9% |
2022年10月~2023年3月 | 72.3% |
2023年4月~2023年9月 | 74.5% |
2023年10月~2024年3月 | 76.9% |
出典:住宅金融支援機構 住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)
2016年1月に日銀がマイナス金利の導入を決定して以来、低金利が続いており、変動金利の住宅ローン金利が上がる可能性は低いと考えられていました。
理由として、住宅ローンの変動金利は、短期プライムレートの影響を受け、短期プライムレートは日銀の政策金利の影響を受けるからです。
しかし2024年3月に日銀は、17年ぶりにマイナス金利の解除を決めました。これを受け、変動金利の住宅ローン金利を上げる金融機関が増えています。
今後は変動金利の住宅ローン金利における利上げのリスクを考慮して、固定金利に借り換える動きも増えていくことが予想されます。
より金利の低い住宅ローンに借り換えることで、毎月の返済額や総返済額を減らせる可能性があります。
住宅ローン残高が3,000万円、借入期間が残り30年、金利1.2%の住宅ローンを0.7%で借り換えるとどれくらい毎月の返済額や総返済額が減らせるか計算してみましょう。
借り換え前 | 借り換え後 | 差額 | |
---|---|---|---|
金利 | 年1.2% | 年0.7% | ▲年0.5% |
毎月の返済額 | 10.4万円 | 9.9万円 | ▲0.5万円 |
総返済額 | 3,744万円 | 3,564万円 | ▲180万円 |
諸費用 | - | 70.5万円 | 70.5万円 |
見直し効果 | ▲109.5万円 |
0.5%低い金利への借り換えにより、毎月の返済額が5,000円減り、総返済額も諸費用を含めても109.5万円減らせました。
借り換えを機に、団体信用生命保険(以下、団信)の見直しができます。
団信とは、住宅ローンの契約者が死亡あるいは高度障害状態となった場合、住宅ローンの残債がゼロになる保険です。
住宅ローンを利用する場合は、原則、団信に加入しなければなりません。
近年では、死亡や高度障害状態に限らず、がん、三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)になったときや、病気やケガで就業不能状態が12ヵ月継続した場合も残債がゼロになるタイプもあります。
団信の保障内容は進化しているため、見直しをしたいという方もいるでしょう。ただし団信に加入できるのは、ローン契約時の1回限りで、ローン契約後は別の保障に切り替えることはできません。
しかし住宅ローンを借り換るタイミングであれば、団信の保障内容を見直すことが可能です。
単純に金利が低いからといって諸費用を考慮せずに借り換えをすると、借り換え前よりも総支払額が増えてしまう可能性があります。
また借り換え手続きも、新規申込時と同等の手間がかかります。住宅ローン借り換えのデメリットも確認しておきましょう。
一般的に住宅ローンの借り換え効果が出る可能性が高いのは、以下の要件に該当するケースと言われています。
住宅ローン残高が2,500万円、借入期間が残り20年、金利1.0%の住宅ローンを0.8%で借り換えた場合のケースを比較してみましょう。
借り換え前 | 借り換え後 | 差額 | |
---|---|---|---|
金利 | 年1.0% | 年0.8% | ▲年0.2% |
毎月の返済額 | 11.5万円 | 11.3万円 | ▲0.2万円 |
総返済額 | 2,760万円 | 2,712万円 | ▲48万円 |
諸費用 | - | 61.5万円 | 61.5万円 |
見直し効果 | +13.5万円 |
より金利が低い住宅ローンに見直した場合、毎月の返済額や総返済額は下がります。しかし諸費用を含めると、見直し後のほうが支払額が増えてしまう可能性がある点に注意が必要です。
とはいえ、上記の3つの要件を満たしていないからといって、必ずメリットがないわけでもありません。
住宅ローンの借り換え効果を見るときは、諸費用を含めた金額で実際にシミュレーションで比較をすることが大切です。
住宅ローンを新規で申し込む際に、多くの書類や手続きが必要だったことを覚えているかもしれません。
住宅ローンの借り換えも新規で借り入れたときと同様、申し込みをして必要書類を提出した後、金融機関の審査に通過しなければなりません。
住宅ローンの借り換えをする際に必要な主な書類は以下の通りです。
必要書類のなかには、発行後3ヵ月以内のものなど要件を設けている場合もあります。
借り換えは手続きに手間がかかるため、利用する前に借り換えメリットを十分確認しておくことが大切です。
住宅ローンの借り換えを申し込んでも、金融機関の審査に通らず、借り換えできない場合もあります。
仮に以下に当てはまる場合、借り換えが難しいケースがあることも理解しておきましょう。
また、住宅ローン返済中に健康状態に変化があり、借り換え後の団信に加入できなくなる場合もあります。住宅ローンは原則、団信の加入が必須のため、団信に加入できなければ借り換えができません。
また住宅ローンの借り換えは、あくまでも「別の金融機関で新たに組み直す」ことを指します。同じ金融機関で住宅ローンの借り換えはできません。
債務者の名義変更、夫婦でそれぞれ借りている住宅ローンを、どちらかの単独ローンに借り換える、借入中の住宅ローンよりも返済期間を延ばすこともできません。
このように借り換えには、一定の制限が設けられている場合があるため、自身の借り換え目的を正確に金融機関に伝えましょう。
住宅ローンの借り換えで失敗しないためには、借り換えのニーズと結果が合っているか、シミュレーションで確認をすることが大切です。
また住宅ローンの借り換えにより、住宅ローン控除の適用要件から外れて利用できなくなるリスクもあります。住宅ローン控除の適用要件も、しっかり確認しておきましょう。
借り換え前と借り換え後で、毎月返済額や総返済額がどれくらい変わるのか、事前にシミュレーションで必ず確認をしましょう。比較をするときは、諸費用を含めて計算することが大切です。
多くの場合、住宅ローンの借り換えは返済負担を軽減するために行いますが、将来の金利上昇リスクを避ける目的で変動金利から固定金利への借り換える場合もあります。
一般的に変動金利よりも固定金利のほうが金利が高いため、変動金利から固定金利に借り換えすると毎月返済額や総返済額が増えます。
シミュレーションは、借り換えによって自身が期待した効果が得られるかどうか、十分確認したうえで検討しましょう。
借り換えを機に要件から外れてしまい、住宅ローン控除が利用できなくなる場合があります。
借り換え後も住宅ローン控除を利用したい方は、要件を満たしているか必ず確認しましょう。借り換え後も住宅ローン控除を受けるためには、以下の要件を満たしている必要があります。
出典:No.1233 住宅ローン等の借換えをしたとき|国税庁
借り換えは、借入中の住宅ローンよりも返済期間を延ばせませんが、返済期間を短くすることは可能です。しかし、借り換えを機に返済期間を10年以下にしてしまうと、住宅ローン控除が利用できなくなるので注意が必要です。
住宅ローンを借り換えるまでの流れを紹介します。ほぼ同じタイミングで行われるため、金融機関によっては、以下の手続きの順番が前後する可能性もあります。
1. 相談
金利や諸条件を比較して、金融機関に相談してみましょう。諸費用を含め、借り換え前後でどれくらい効果があるのか試算もしてもらえます。なおこの時点で提示される諸費用は、あくまでも目安となります。
2. 申し込み・必要書類提出
自身のニーズに合った借り換えができる金融機関が見つかったら、申し込みをします。発行までに時間がかかる書類もあるため、早めに準備を始めましょう。
3. 事前審査
金融機関の審査を受け、年齢や返済負担率、勤続年数、健康状態、年収、物件の評価額(担保評価)などから借入可能額や諸費用額が決まります。
4. 本審査
事前審査で提示された内容に問題がなければ、本審査に申し込みます。なお事前審査に通過しても、本審査に通過するとは限りません。
5. 契約
本審査通過後、借換先の金融機関と住宅ローン契約(金銭消費貸借契約)を締結します。
6. 今のローンの完済
融資金が入金されたら、現在返済中の住宅ローンを一括で繰上返済します。
7. 抵当権抹消、新たに抵当権設定
一括で繰上げ返済をしたら、その日のうちに抵当権抹消に必要な書類を金融機関から受け取り、司法書士に提出します。
司法書士は借り換え前の金融機関の抵当権を抹消し、借り換え後の金融機関の抵当権を設定します。
8. 返済開始
借り換え後の金融機関への返済が開始します。
住宅ローンの借り換えにより、毎月返済額や返済総額が減らせる、将来の金利変動リスクを避けられるといったメリットがあります。日本ではもともと金利が低い変動金利で住宅ローンを組むケースが多く、借り換えをする余地が少ない方が多かったかもしれません。
しかし2024年3月にマイナス金利を解除して、変動金利の金利が上昇する金融機関も出てきました。今後は金利上昇リスクを避けるための借り換えも増える可能性があります。
ただし借り換えは、諸費用を含めると総支払額が借り換え前より増える可能性があるため、自身の借り換えニーズと合っているか、事前にシミュレーションで確認しておくことが大切です。
また住宅ローン控除を借り換え後も利用したい方は、住宅ローン控除の要件から外れないよう注意しましょう。
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【参考サイト】
※この記事は2024年9月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。