近年、日本の金融事情が大きく変わる中で、金融リテラシーの必要性が高まっています。
金融リテラシーを身に付けるにはお金の勉強が必要ですが、勉強の始め方や方法がわからない人は少なくありません。本記事では、お金の勉強が必要な理由や勉強のメリット、具体的な勉強方法を解説しています。年代別のおすすめ勉強内容も紹介しているため、参考にしてみてください。
そもそも、なぜお金の勉強が必要なのでしょうか?
金融庁は、高校生への金融リテラシー講座の中で、金融知識を身につけることを「究極的には金融面での個人の良い暮らし(well-being)を達成するため」としています。
“個人の良い暮らし(well-being)”の定義は人によって異なりますが、どのような生き方を選択しても人生にお金の問題は付きものです。人生の選択肢を広げて生き抜く力を身につけ、お金に関する不安をなくすことが、多様な社会における個人の良い暮らしにつながるのではないでしょうか。
近年は働き方や家族形態、ライフスタイルが多様化し、人生の選択肢も広がっています。
一方で、経済力がともなわなければ、「本来選べるはずの道を経済的な理由で選べない」ということになりかねません。お金の勉強は、基本的な経済力を身につけることで人生の選択肢を広げ、個人が多様な人生を楽しむためにも必要と言えます。
2024年現在、世界情勢は不安でインフレが進行し、生成系AIなど想像もできなかったテクノロジーが登場しています。日本国内においては物価高が進む一方で、物価の上昇に賃金が追いついていない状況になっています。
このように世の中が不安定で先が見えない時代では、真面目に働くだけで個人の良い暮らしを実現することが難しくなっています。お金の勉強はビジネスや経済感覚を養うことにもつながるため、不安定な時代を生きるための力も同時に身に付きます。
お金に関して不安があると、人はときに判断や選択を間違えることがあります。その結果、投資詐欺といった大きなトラブルに巻き込まれる可能性があるため、リスク対策としてもお金の知識は不可欠です。
たとえば突然失業したとき、知識があれば失業時に使える公的制度を活用するほか、今までの預貯金や投資で、家計の維持に努めるでしょう。しかしお金の知識がない状態で失業すると、過度な不安からハイリスクな投資や安易な儲け話に乗ってしまう可能性も考えられます。
間違った判断や選択から生じるトラブルを防ぎ、自分の身を守るためにも、お金の勉強で知識を身につけることが大切です。
【監修者コメント】
私たちは生活の中で、商品やサービスを買う、給料や代金を受け取る、お金を貯める、借りるなどお金に関わって暮らしています。お金に関する知識や判断力を身に付けるために、お金の勉強は大事です。
お金の勉強をすると、貯める力、増やす力、守る力、お金を使う力が身に付きます。この4つ力をバランス良く伸ばせれば、経済的に自立しやすくなるのです。
経済的に自立できれば、個々の多様な人生をより楽しめるようになるでしょう。ここでは、勉強によって得られる4つの力がもたらすメリットを解説します。
お金を貯める力は、収支のバランスをコントロールする力です。
この力が身に付けば、正しい節約方法がわかったり、自身のライフプランをふまえて、教育資金や住宅購入費など必要資金の目標を設定できるようになったります。
また、預貯金や貯蓄型保険など各金融商品やサービスの特性を知ることで、目標達成に向けて計画的な貯蓄・資産形成の方法がわかるようになります。無理せず自然にお金を貯める力が身に付くでしょう。
お金を増やす力は、労働所得以外の収入源を持つ力です。
貯めたお金をうまく増やしていく方法が身に付けば、違う資金を貯めるときも役立ちます。個々の選択肢も、ますます広がるでしょう。
具体的には、目的に適した資産形成の方法がわかるようになるため、効率よく資産を増やし、目標達成に近づけます。
お金を守る力とは、リスク管理で資産を減らさないための力です。守る力がなければ、せっかく築き上げた資産を一瞬にして失いかねません。
リスク対策の方法を身に付ければ、失業や病気など、突発的な収入減少にともなう支出に対処しやすくなります。
また、お金に関する法律について知っておくことで、不当な契約や勧誘などの金融詐欺・トラブルを未然に防げます。
こうした知識は、自分だけではなく家族を守ることにもつながるため、身近なところで金融トラブルが発生しても、適切に対処できるようになるでしょう。
お金を使う力とは、収入の範囲でやりくりする力です。突発的な支出があっても、適切な方法で家計をやりくりしたり、節約したりできます。結果として、家計管理で困ることは少なくなるでしょう。
また、日本の社会保障制度や税制、金融商品の特性などを理解することで、より効率的なお金の使い方が身につきます。
お金の勉強分野は多岐にわたりますが、お金の専門家であるファイナンシャルプランナーは、以下の分野を勉強します。
いずれも、人生のあらゆる場面で必要な知識です。とはいえ、「どの分野から勉強を始めればいいかわからない」人もいるでしょう。ここでは、年代別に優先して知っておきたい内容を紹介していきます。
キャリア初期の10代~20代は、他の年代に比べると収入は少なめで、貯蓄できる金額も限られています。そのため、まずは収入を適切に使う力と貯める力が必要です。
「基本の家計管理」と「社会保障制度・税金」の知識を一通り身につけましょう。家計簿などで収支を把握し、収入の範囲でやりくりする、先取り貯蓄で生活防衛資金を作るなど、勉強した内容を少しずつ実践していくことが重要です。
余裕があれば、資産運用の勉強もはじめ、NISAや少額投資などもはじめてみるのもいいでしょう。
また、さまざまな税金の支払い義務も生じる年齢でもあります。どのような税金があるのか、社会保障にはどのような内容があるかなども知っておくことが大切です。
【監修者コメント】
社会人として経済面で自立する時期ですが、収入のうち一定金額を貯蓄や投資をするなど計画を立てましょう。
30代~40代では、10代~20代で築いた資産・貯蓄を守り、ライフプランにあわせて増やしていく力が必要です。
まずは「ライフプランニングと資金計画」を勉強し、結婚や出産、マイホーム購入といったライフイベントを考慮して今後の人生設計を具体的に考えてみましょう。
また、「資産運用」や「リスク管理」の勉強も不可欠です。ライフプランニングで今後必要な教育費や住宅購入資金を算出した後は、適切にリスク管理をしつつ、資産運用で効率的に必要資金を形成していきましょう。住宅購入の予定がある場合は、不動産(住宅ローン)の勉強も必要になります。
【監修者コメント】
ライフイベントの時期によっては、大きな支出が必要になる場合もあります。そのときに備えて貯蓄や投資などで将来に向けた資産形成を考えましょう。
50代以降は老後(定年退職後)の過ごし方を考えながら、「老後の生活設計」や「相続対策」について学ぶ必要があります。
老後の生活設計では、定年退職後の公的年金や退職金、老後の労働収入などをすべて計算し、生活費に不足はないかを確認します。老後資金が不足しそうなときは資産運用を始めたり、資産運用の金額を増やしたりして調整しましょう。
人生100年時代、50代以降で資産運用を始めるのは遅いことではありません。退職金を元手に資産運用を始める人もいます。
相続対策では、親の財産を棚卸ししたうえで相続税がかかるかどうかを確認します。預貯金はあまりない家庭でも、不動産や貴金属類などが思わぬ評価額となり、相続税が課されるケースは少なくありません。財産の種類や金額、相続人の数に応じた相続対策は何か、勉強を通じて考えてみてください。
【監修者コメント】
年金収入がどのくらいあるのかを把握して、足りない分を貯蓄や投資などで備えましょう。
ここからは実際の勉強方法を解説します。
お金の勉強はインプットするだけでは身に付きません。以下の3ステップを意識して進めるようにしましょう。
まずは、基本的な知識を一通り頭に入れる「インプット」から始めます。インプットには3つの方法があります。
社会保障制度や税制の知識・情報は、厚生労働省や国税庁といった公的機関のサイトを見るほうが確実です。しかし、公的機関の情報は難しい表現が多く、わかりにくいと感じる人は少なくありません。
そのため、最初は自身が読みやすいと思うお金の勉強本(漫画でも可)を何冊か購入し、一通り読んでみることをおすすめします。書籍は著者のほか、編集者、制作会社、出版社など多数の検閲を経て発行されているため、信頼性の高い情報を収集しやすくなっています。インターネットの記事と比べると情報量も多いことから、勉強に適した媒体と言えるでしょう。
社会保障制度や税制は途中で変わることがあります。本で基礎知識を習得した後は、インターネットで最新の情報にアクセスするようにしてください。
インターネットは利便性が高い一方で、情報の内容は玉石混交です。基本的には公的機関や金融機関、大手企業など、社会的に信頼できるサイトや動画を中心に情報収集しましょう。本で読み、信頼できるお金の専門家を見つけたら、その専門家が発信する情報をSNSやブログなどで収集する方法もあります。
本とインターネットで広範囲の情報・知識を得た後は、セミナーや各種講座に参加して知識を深掘りする方法もあります。自治体や金融機関、FP団体などで多数のマネーセミナー・講座が開催されており、最近はオンライン開催のものも豊富です。
「子育て世帯向けの教育資金準備の方法」「家族トラブルを避ける相続対策」など、多彩なテーマのセミナー・講座があるので、興味を持てるものを探してみるといいでしょう。
アウトプットによって知識を定着させるため、勉強した内容を実生活に応用していきましょう。具体的な実践方法は以下の3つです。
毎月の収支を記録して家計を「見える化」しましょう。把握した収支を元に、さまざまな節約術を試しながら貯蓄を始めていきます。
収支を把握する方法はどのようなものでも問題ありません。たとえば家計簿ノート、家計簿アプリ、自作した家計簿などが挙げられます。実践しながら、ご自身に適した家計管理や貯蓄の方法が何かを探してみてください。
今後の人生の予定や目標を織り込んだライフプラン表を作成し、そのために必要な資金はいくらになるのか計算してみましょう。たとえば結婚したばかりの夫婦であれば、「子どもはほしいのか、何人ほしいのか」「どのような家に住みたいのか」など、理想の子育てや住環境、老後の生活について2人で話し合い、そのひとつ1つをライフプラン表に落とし込んでいきます。
もちろん、実際の人生がライフプラン表のとおりにいくとは限りません。大切なのは、家族と相談したり、自問自答したりする過程で、人生やお金に関する思わぬ価値観に気付き、共有することです。そして希望の人生に必要な金額を把握することにあります。具体的に必要な金額を把握すれば、資産形成の道筋ははっきりするはずです。
ライフプラン表は、日本FP協会のサイトや金融機関など、さまざまなサイトでツールが公開されています。家計管理の本に表が付属しているケースもあるので、それらを活用して作ってみるのもいいでしょう。
新NISAやiDeCoといった税優遇制度を活用して、ご自身で資産運用を始めてみましょう。運用を始めるときの金額は少額でかまいません。たとえ少額でも、自分のお金を使って運用することで、運用商品の値動きが毎日どうなっているのか、投資や運用はどのようなものかを体感できます。
七十七銀行でも、500円から投資を始められる「ワンコイン投資」サービスを提供しています。少額で投資を体感できるので、勉強も兼ねて少額投資サービスを活用してみてはいかがでしょうか。
家計管理や資産運用は自ら実践できる一方で、リスク管理としての保険活用や住宅ローン契約は簡単にアウトプットできません。どちらも金融機関と契約する商品であり、審査もあるため気軽に実践して身に付けることはできないのです。
このようにアウトプットが難しい分野は、専門家への相談がおすすめします。保険や住宅ローンの選び方、そのほか疑問に思うことがあれば、金融機関の担当者やFPなどの専門家に相談してみましょう。
ひと口に専門家と言っても、お金に対する考え方や価値観は人によって違います。できれば複数人に相談し、多角的な知見を得るようにしてください。さまざまな知見を参考にしたうえで、最終的な判断はご自身でおこなうことが大切です。相談料無料の窓口もあるため、気軽に利用してみるといいでしょう。
お金の勉強によって金融リテラシーが身に付くと、人生の選択肢が広がり、先が見えない時代でもお金の不安を感じることなく生きやすくなります。本記事でご紹介した年代別のお金の勉強方法を参考に、ご自身に適した方法で勉強を始めてみてください。
勉強をする際に大切なのは、ただ知識を詰め込むだけではなく、体験をともなうことです。
本やインターネットでインプットした内容を家計管理や資産運用に反映したり、わからない点は専門家に相談したりすれば、より実践的な知識を得ることができます。勉強と実践を繰り返しながら、ご自身に適した金融リテラシーを身につけていきましょう。
【監修者コメント】
情報を得たり、専門家のアドバイスを受けたりしたのち、実際に経験をすることが重要です。たとえば、iDeCoやNISAを活用して投資をしてみる、家計簿をつけて収支の確認をするなどできることから始めてみましょう。
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※この記事は2024年7月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。