教育扶養家族とは?税金・社会保険の種類別「扶養に入る条件」を一挙解説

「夫の扶養に入るために、パートの収入を制限する」
「育休中は、パートナーの扶養控除を受けられる」
このような話を見聞きすることがありますが、そもそも「扶養に入れる制度」にはいくつか種類があることをご存じでしょうか。

扶養には、税法上の扶養と社会保険上の扶養があり、利用する制度によって適用条件や控除額等が異なります。

本記事では各制度における扶養家族・扶養親族の条件をわかりやすく解説しています。2024年の定額減税における扶養親族についても解説しているため、参考にしてみてください。

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵(M・Mプランニング 代表)

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵
M・Mプランニング 代表

保育士、営業事務の仕事を経て、ファイナンシャルプランナーに。
独身、子育て世代から定年後の方までお金に関する相談を受けて、16年目になります。
主婦FPとして、等身大の目線でのアドバイスが好評です。
家計・保険・老後、教育資金などの個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っているほか、お金の専門家として、テレビ取材なども受けています。
人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

扶養家族とは?定義と扶養のメリット

「扶養家族」「扶養親族」とは、世帯主(扶養者)の収入によって養われている家族や親族のことを言います。

たとえば、夫が主に働き生計を立て、妻が主に家事や育児を担っている家庭があるとします。この場合の扶養者は夫で、妻は被扶養者(扶養家族)です。税法や社会保険では、こうした扶養者や被扶養者が一定の要件を満たすことで、税金や社会保険料の負担を軽減する制度を設けています。

そのため、利用する制度によって扶養家族や扶養親族の定義や条件、負担軽減額は違います。特に、働きながら扶養家族になろうとする場合は、収入要件の違いに注意が必要です。

【税金・社会保険(厚生年金・健康保険)別】扶養家族・親族の定義とメリット

制度 定義 メリット
税法上の扶養家族(親族) 所得控除における「控除対象扶養親族」「控除対象配偶者」に該当する家族・親族のこと 扶養者・被扶養者の税負担を軽減できる
社会保険上の扶養家族(親族) 厚生年金 厚生年金保険における「被扶養者」に該当する配偶者のこと 被扶養者は第3号被保険者として国民年金に加入でき、年金保険料の支払いは免除される
各健康保険 扶養者の加入健康保険における「被扶養者」に該当する家族・親族のこと 被扶養者は扶養者の健康保険に加入でき、健康保険料の支払いは免除される

税法上の扶養家族・親族とは、「配偶者控除」「配偶者特別控除」「扶養控除」といった所得控除に該当する人のことです。各所得控除を受ける扶養者は課税所得の削減により、所得税・住民税を軽減できます。扶養家族・親族に該当した被扶養者は年収が一定以下になるため、自身の所得税は非課税になるか、極めて少額になります。

一方、社会保険上の扶養制度では、主に被扶養者にメリットがあります。厚生年金保険も健康保険も、要件を満たす扶養家族・親族が社会保険に加入できるうえ、保険料負担も免除されます。

なお、国民年金や国民健康保険、各国民健康保険にはこうした扶養制度がありません。個人事業主や自営業者として生計を立てている人は、配偶者や親族を自身の年金・健康保険の扶養に入れることはできないので覚えておきましょう。

【監修者コメント】

税法上の扶養と社会保険上の扶養は異なります。それぞれの内容をしっかりと押さえましょう。

税法上の扶養家族・親族の条件と控除額

税法上の扶養家族や親族の条件・控除額は、適用を受ける所得控除によって異なります。

<扶養者が受けられる所得控除の種類>

  • 「扶養控除」:16歳以上の子どもや親、親族が対象
  • 「配偶者控除」「配偶者特別控除」:配偶者が対象

それぞれの条件と控除額を見ていきましょう。

「扶養控除」は16歳以上の子どもや親・親族が対象

扶養控除とは、扶養者に所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合に受けられる、所得税・住民税の軽減制度です。

【条件】

扶養控除の対象となる親族は、控除を受ける年の12月31日時点で、以下5つの要件のすべてに当てはまる人のことです。

  • 16歳以上
  • 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)または、都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人
  • 納税者と生計を一にしている
  • 年間の合計所得金額が48万円以下(所得が給与のみの場合、給与収入が103万円以下)
  • 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと
    または白色申告者の事業専従者でないこと

上記に該当する扶養親族のうち、年齢や同居の有無によって受けられる控除額が変わります。

【控除額】
区分 所得税の控除額 住民税の控除額
一般の控除対象扶養親族
(16歳以上)
38万円 33万円
特定扶養親族
(19歳以上23歳未満)
63万円 45万円
老人扶養親族
(70歳以上)
同居している、扶養者または配偶者の父母・祖父母 58万円 45万円
同居していない扶養対象控除親族 48万円 38万円

出典:国税庁「扶養控除」

扶養控除では、16歳未満の子どもを扶養していても扶養控除は受けられません。しかし、後述する健康保険や、2024年実施の定額減税では、16歳未満の子どもも扶養の対象です。

また、扶養控除の控除額(所得から軽減される額)は、所得税と住民税とで異なります。このように、制度によって対象者や控除額は微妙に異なるため、各制度を混同しないよう気をつけてください。

「配偶者控除」「配偶者特別控除」は配偶者が対象

配偶者控除や配偶者特別控除は、扶養者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に受けられる、所得税・住民税の軽減制度です。

【条件】

配偶者控除や配偶者特別控除の対象となる配偶者とは、控除を受ける年の12月31日時点で、以下4つの要件のすべてに当てはまる人のことです。

  • 民法の規定による配偶者(内縁関係は該当しない)
  • 納税者(扶養者)と生計を一にしている
  • 納税者(扶養者)の年間の合計所得金額が1,000万円以下
  • 配偶者の年間の合計所得金額が133万円以下であること(給与収入のみの場合は給与年収201万円以下)

上記に該当する配偶者のうち、年齢や合計所得金額によって「配偶者控除」「配偶者特別控除」どちらかの区分が適用されます。詳細は以下の表をご覧ください。

【控除額】
区分 配偶者の合計所得金額 所得税の控除額 住民税の控除額
配偶者控除 一般 48万円以下
(給与収入103万円以下)
納税者の年収により
13万~38万円
11万~33万円
70歳以上 納税者の年収により
16万~48万円
13万~38万円
配偶者特別控除 48万円以上133万円以下
(給与収入201万円以下)
納税者・配偶者の年収によって
1万円~38万円
1~33万円

出典:国税庁「配偶者控除」「配偶者特別控除」

上記のとおり、2つの所得控除を重複して受けることはできません。配偶者の年齢や収入によって、配偶者控除または配偶者特別控除どちらかの適用を受けることになります。また、夫婦間で互いに控除を受けることもできません。

【監修者コメント】

配偶者の扶養から外れていても、配偶者特別控除を受けることができる場合があります。

2024年実施の「定額減税」における同一生計配偶者・扶養親族とは?

令和6年(2024年)は、所得税・住民税の軽減策として「定額減税」が実施されます。

定額減税とは、納税者1人につき、所得税3万円・住民税1万円(合計4万円)の定額減税額が控除される特別控除制度です。納税者に同一生計の配偶者と扶養親族がいる場合(いずれも居住者に限る)は、人数に応じた定額減税額を受けられます。

定額減税では16歳未満の子どもも「扶養親族」の対象

定額減税の対象者は、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である人(給与収入のみの場合、給与収入が2,000万円以下)です。

本人が同一生計配偶者と扶養親族を扶養している場合は、1人につき合計4万円の定額減税額を受けられます。

【同一生計配偶者の条件】

控除を受ける年の12月31日時点で、以下の要件のすべてに当てはまること

  • 民法の規定による配偶者(内縁関係は該当しない)
  • 年間の合計所得金額が48万円以下(給与収入のみの場合は、給与収入が103万円以下)
  • 納税者と生計を一にしている
【扶養親族の条件】

控除を受ける年の12月31日時点で、以下の要件のすべてに当てはまること

  • 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)または、都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人
  • 納税者と生計を一にしている
  • 年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合、給与収入が103万円以下)
  • 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと
    または白色申告者の事業専従者でないこと

なお、配偶者・扶養親族はいずれも日本国内に住所がある居住者に限ります。

出典:国税庁「定額減税について」

所得控除の扶養控除では、16歳未満の子どもは控除の対象外でした。しかし、定額減税においては16歳未満の子どもも対象となり、1人あたり3万円の控除を受けられます。ここで、4人家族だと定額減税がいくらになるのか計算してみましょう。

【定額減税の計算例:4人家族の場合】

前提:会社員の夫が主たる生計維持者で、妻はパート勤務の控除対象配偶者、子どもは扶養親族にあたる未就学児(3歳・5歳)が2人という家庭

この場合、夫の定額減税額は以下となります。

  • 所得税3万円 × 4人分=12万円
  • 住民税1万円 × 4人分=4万円
  • 定額減税額:合計16万円

なお、扶養親族の判定日は令和5年(2023年)12月31日です。令和6年(2024年)に生まれた子どもは、定額減税の対象外となります。

社会保険上の扶養家族・親族の条件

社会保険上の扶養家族や親族の条件は、適用を受ける社会保険の種類によって異なります。

<扶養者が受けられる社会保険の種類>

  • 「厚生年金保険」年収130万円以下の配偶者が対象
  • 「各健康保険」一定要件を満たす配偶者・親族が対象

それぞれの条件と控除額を見ていきましょう。

厚生年金は年収130万円以下の配偶者が対象

厚生年金保険では、以下の要件を満たす被扶養者が国民年金に加入できる扶養制度があります。扶養者・被扶養者ともに年金保険料の負担はありません。

【第3号被保険者(被扶養者)の認定を受ける条件】

以下の要件のすべてに当てはまること

  • 厚生年金保険の加入者(第2号被保険者)に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者
  • 年収130万円未満※ かつ配偶者の年収の2分の1未満
  • 国内に居住していること(留学生、外国に赴任する扶養者に同行している場合などを除く)

※年収130万円未満でも、厚生年金保険の加入要件に当てはまる人は対象外

参考:日本年金機構「第3号被保険者」

ここでの「年収」とは、年間の見込み収入額のことです。雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金なども含めた見込み収入額となるため要注意です。なお給与収入のみの人は、月額10万8,333円以下が目安となります。詳細は年金事務所や扶養者の職場に確認してみてください。

健康保険は配偶者以外の親族も対象

健康保険は厚生年金保険と異なり、配偶者以外の親族も扶養の対象です。同居の子どもや親も、一定の要件を満たせば健康保険の扶養に入れて、保険料負担を抑えることができます。

注意点としては、扶養者が加入している健康保険の種類によって、扶養条件の設定が異なる可能性があります。

<勤め先によって違う、会社員の健康保険の種類>
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ):主に中小企業の会社員が加入する
  • 各組合管掌健康保険(組合健保):主に大企業の会社員が加入する。企業によって加入する組合健保は異なる
  • 各共済組合:主に公務員が加入する

扶養に入る条件は、厚生年金保険の条件を勘案して年収130万円以下と設定している健康保険が多くなっています。

とはいえ、保険者が1つのみの協会けんぽに対し、組合健保や共済組合は扶養者の職場によって加入する組合が異なります。特に組合健保は令和4年(2022年)度時点で保険者が1,388組合※あるため、条件について一概には言えません。組合健保によっては条件が違う可能性もあります。

このように、厚生年金保険と健康保険の扶養条件は必ずしも一致しないため、詳細は各健康保険に問合せて確認しましょう。

出典:健康保険組合連合会「健康保険組合の現勢」

まとめ

仕事を辞めたり、休業・休職で収入が減少したりする場合、家族の扶養に入ることで
税金や社会保険料の負担を軽減できる可能性があります。

扶養家族・扶養親族になるための条件は制度によって細かく異なります。本記事で紹介した各制度の定義とメリットを参考に、各制度の活用方法を検討し、各家庭のライフプランに役立ててください。

【監修者コメント】

最低賃金や収入が上がった際、扶養内で働くか、扶養から抜けて社会保険に加入するか迷うという方も多いと思います。目先の手取りだけでなく、将来の年金の加算なども考えてどちらにするのか考えてみるといいでしょう。

※この記事は2024年6月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。

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