「20代の皆は、いくらくらい貯金しているんだろう?」と人それぞれとわかってはいても、周囲が気になる人は少なくありません。
本記事では、単身世帯から2人以上の世帯まで、20代の平均的な貯金傾向の調査結果を紹介します。あわせて、貯金が必要な理由や貯金額の目安、貯金を無理なく始める方法も解説していきます。20代で貯金額等に不安がある人は、参考にしてみてください。
なお、金融業界で「貯金」と言えば郵便局の通常貯金等を指すことがありますが、一方で貯金には「お金を貯めること」という意味もあります。本記事では、銀行・郵便局の預貯金から株式、投資信託といった有価証券、保険商品まで金融商品全般を包括して「貯金」という意味合いで使用しています。
目次
そもそも、20代のうち貯金している人はどの程度いるのでしょうか。
金融広報中央委員会の世論調査によると、20代のうち約6割の世帯は何らかの形で貯金をしています。ただし、貯金の有無や貯金額は年収や世帯構成によって変わります。
ここでは単身世帯と2人以上の世帯に分けて、20代の貯金の平均像を見ていきましょう。
出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和4年)」より
「単身世帯調査」「二人以上世帯調査」
金融広報中央委員会の調査によると、20代の単身世帯では全体の57.9%、2人以上の世帯では全体の64.3%が何らかの金融資産を保有しています。
何らかの金融資産とは、銀行や郵便局の預貯金、株式・債券・投資信託などの有価証券、生命保険や財形貯蓄など、資産価値のある金融商品のことです。
裏を返せば、20代の4割はまったく金融資産を保有しておらず、無貯金ということになります。
出典:各種分類別データ(令和4年)― 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](平成19年以降)|知るぽると 「per12201.xlsx(単身世帯向け)」「per22201.xlsx(二人以上世帯向け)」いずれも統計表の番号2を参照
同調査によると、20代の金融資産保有額は単身世帯で176万円、2人以上の世帯で214万円。
独身者も既婚者も、平均貯金額は100万円以上でした。
<20代の金融資産保有額(金融資産非保有世帯を含む)>
平均貯金額だけを見ると「20代でこんなに貯金しているのか」と感じるかもしれません。
しかし、同調査の金融資産残高でもっとも回答数が多かったのは項目は「100万円未満」です。貯金の中央値を見ると、平均貯金額は100万円以上であっても、実際には数十万円程度の貯金をしている20代が大半でした。
<20代の金融資産保有額(金融資産非保有世帯を含む)>
中央値とは、データの数値を小さい順あるいは大きい順に並べていったとき、ちょうど真ん中にくる値を指します。平均額は特定の値に大きく左右される傾向があるため、調査対象に高額金融資産保有者が数名いると、それだけで平均貯金額が跳ね上がるという特性があります。
一方で中央値は特定の極端な値に影響されにくいため、平均像を調べる際は中央値も見ることが大切です。今回の調査でも、全体の数%程度だった高額金融資産保有者が平均額を押し上げていました。
貯金額は家族構成だけではなく、世帯主の年収によっても変わります。年収別の金融資産保有額は以下のとおりです。
<20代単身世帯の年収別金融資産保有額>
年収(回答の実数) | 平均 | 中央値 |
---|---|---|
収入はない(65) | 18万円 | 0 |
300万円未満(272) | 99万円 | 9万円 |
300~500万円未満(173) | 203万円 | 100万円 |
500~750万円未満(34) | 850万円 | 295万円 |
750~1,000万円未満(1) | 100万円 | 100万円 |
1,000~1,200万円未満(3) | 1,367万円 | 1,800万円 |
※年収750万円以上の回答者の総数は4名であり、母数があまりに少ないため平均・中央値とも極端な数値になっている点には留意が必要です
出典:設問間クロス集計(令和4年)家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](平成19年以降)
上記のとおり、年収が上がれば貯金額は平均・中央値ともに上がっていく傾向があります。ただ、当調査の20代でもっとも回答数が多かった年収帯は「300万円未満」で、このゾーンになると貯金の中央値は9万円です。特に給与が少ない20代前半は日々の生活で精一杯で、少額の貯金も難しいという世帯が多いのではないでしょうか。
国税庁の給与調査によると、20代前半の平均給与は269万円、20代後半の平均給与は370万円となっています。一般的には年齢を重ねるごとに年収も貯金額も上がる傾向にあるため、平均額を見て過度に心配しすぎず、ご自身にできる範囲で貯金を始めるのがいいでしょう。
先述したとおり、20代は一般的に年収が少なく、貯金が難しい世代です。また、「若い時期は貯金よりも自己投資が大切」「まだ若いのだから貯金は必要ない」という考えで貯金をしていない人もいるかもしれません。
実際に貯金が必要かどうかは、個々の価値観や収入・資産の状況、家族構成、今後のライフプランによって変わるため、一概に論じることはできません。一方で、20代は社会人としてさまざまな支払いが必要になり、ある程度貯蓄がなければ万が一のトラブルに対処しづらいのは事実です。ここでは、貯金がないと困る事態について見ていきましょう。
20代で学生から社会人になると、以下のようにさまざまな支払いが発生します。
<20代で支払いが必要なものの一例>
たとえば転職のため一定期間失業状態になっても、健康保険料や年金保険料等の支払いは引き続き求められるのが一般的です。もちろん会社都合の失業や病気・災害による大幅な収入減少など、事情によっては保険料が免除されたり、一定期間支払いが猶予されたりする可能性はあります。ただ、免除や納付猶予は誰でも無条件に受けられるわけではないため、注意が必要です。
また、20代は結婚や出産といったライフイベントが発生する可能性があります。自身に限らず、周囲の人が結婚・出産することでお祝い金を用意する場面もあるでしょう。ある程度貯金があれば、さまざまな局面で無理なく家計を回していけるのではないでしょうか。
先ほどの「家計の金融行動に関する世論調査」でも、単身世帯の金融資産保有目的の多数を占めていたのは「病気や災害などへの備え」「老後の生活資金」「特に目的はないが金融資産を保有していれば安心」です。
2人以上世帯でも「老後資金」「病気や災害などへの備え」「子どもの教育資金」として金融資産を保有する家庭が大半でした。老後や災害、冠婚葬祭やライフイベントに備えて貯金をすることは、安心した生活を送るために多くの人が選択している防衛策の一つと言えます。
ここでは、20代で貯金を始める際、貯金額の目安となる金額を解説します。実際に必要な貯金額は個々の家庭によって違います。ここでご紹介する目安はあくまで一つの指標として、貯金を始める際の参考にしてみてください。
20代で仕事を辞める、休むなどして収入が減少すると、その間の社会保険料や生活費等の支払いは貯金から補てんしなければなりません。
会社員の場合は、失業した際に雇用保険から失業給付を、病気等で休職した際に健康保険から傷病手当金を受けられる可能性があります。しかし、これらの給付は申請してすぐに受け取れるわけではありません。また、収入の全額をカバーできるものでもないため、失業・休職時には生活費が不足し、貯金を使い切ることになるかもしれません。
たとえ失業・休職することはなくとも、会社の業績不振により残業やボーナスがカットされ、収入が減少してしまう可能性もあります。特に一人暮らしの人や奨学金返済がある人は簡単に支払いを滞納できないため、万が一に備えて生活防衛資金を用意しておくと安心です。生活防衛資金とは、病気やケガ、災害など不測の事態に備えて用意しておくお金を指します。
一般的に生活防衛資金は、給与の3~6か月分と言われています。20代の平均的な年収を300万円(手取り年収240万円)とすると、生活防衛資金は以下のとおりです。
<生活防衛資金の目安>
貯金ペースで悩んだら、手取り収入の1~2割程度を目安に貯金を始めてみてください。先の調査でも、20代で貯金がある世帯は手取り収入のうち16%※を貯金に回していて、現実的に貯金しやすい割合いと言えます。
手取り月収が20万円の場合、毎月2~4万円、年間25万~50万円程度を貯金するイメージです。まずは手取り月収のうち1~2割を貯金に回してみて、貯金を始めてから個々の世帯の実情にあわせて調整してみてはいかがでしょうか。
※出典:金融広報委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和4年)」(単身)表8 「家計の金融行動に関する世論調査(令和4年)」(二人以上世帯)表8
20代では、結婚や出産等のライフイベントが発生する可能性もあります。以下の平均費用を参考に、できる範囲で貯金を用意しておくと安心です。
平均初婚年齢は30歳前後ですが、初婚が20代という方は多く、30歳時点の女性の初婚累計は70%、男性の初婚累計は66%となっています。自分だけではなく、友人や同僚が結婚して結婚祝いをする機会が出てくる可能性があります。
結婚費用の目安として、友人や同僚の結婚式に出席する際のお祝儀は3万円程度です。ご自身が結婚式を行う際の平均は挙式、披露宴・ウェディングパーティの総額平均は300万円程度です。参考にしておきましょう。
出生数は年々減少していますが、20歳代で初めて出産するという母親は少なくありません。出産費用の目安として、友人や知人、同僚などの出産祝いの目安は5,000円程度です。
ご自身が出産する際の出産費用は、全国平均で約47万円(正常分娩のみ)です。出産費用については公的健康保険から支給される出産育児一時金があり、2023年4月より50万円(以前は42万円)に引き上げられました。
ただし、出産費用の他に妊婦健診の自己負担額やベビーカー、車のチャイルドシートなどの出産準備費用が必要です。自治体の妊婦健診助成費用や家庭環境によって必要な費用は違いますが、10~20万円ほどを目安に用意しておくと安心です。
出典:厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
厚生労働省「出産育児一時金について」「出産育児一時金の支給額・支払い方法について」
20代で貯金をしたいけど「なかなか貯金が続かない」「一向に増えない」という人は、以下2つのコツを意識してみてください。
いずれも、少し意識するだけで貯金を続けやすく、増やしやすくなります。詳しく見ていきましょう。
先取り貯蓄とは、給与が入ったら真っ先に一定額を貯金し、残りの金額で生活することです。
いろいろ支払って余った金額を貯金するのではなく、貯金を差し引いた残りの金額を収入と見なして生活することがポイントです。
勤務先に財形貯蓄制度があれば、給与天引きで強制的な貯金ができるため、利用してみてください。勤務先に財形貯蓄制度がない人や個人事業主・自営業等の人は、銀行の積立預金を利用するといいでしょう。給与の振込口座などご自身のメイン口座で給料日に一定額を定期預金に移す積立預金を設定すれば、あらかじめ貯金が差し引かれた給与で生活する癖が身につきます。
生活防衛資金など万が一の備えは、元本割れしない預貯金を持つことが大切です。一方で、預貯金だけで資産を効率的に増やすことは容易ではなく、インフレに対応するためには資産運用を検討する必要があります。
20代は老後まで働ける時間が長く、リスクをとりやすい年代です。時間を味方につけ、長期でリターンを得られる可能性がある長期積立投資であれば少額でも始められるため、金融機関等に相談して始めてみてはいかがでしょうか。
NISA制度は、運用で得た利益に対する税金約20%が非課税になる少額投資非課税制度です。来年から新制度が始まりますが、2023年中に始めてもまったく問題はありません。
NISA制度については以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
2024年に始まる新NISAとは?変更点やメリット・デメリットを解説
【監修者コメント】
20代は、一人暮らしをしている人、実家から通っている人、または奨学金の返済がある人とない人、すでに家庭を持っている人などさまざまです。支出の差があるので、貯蓄や投資に回すお金が違ってくるのは当然です。
しかし、最初が肝心なので何かしら手立てをして貯金体質をつけることが将来的にもお金が貯まる人と貯まらない人との差になるのかと思います。まずは、NISAで積み立て投資から始めてみてはいかがでしょうか。
20代のうち6割は何らかの貯金をしていますが、一方で貯金がまったくない人が4割程度います。20代はまだまだ収入が低く生活が不安定な年代ですから、何をおいても貯金すべきとは一概に言えません。
ただし、貯金がなければ突発的なトラブルが起きた時に対処しにくく、さらに生活が不安定になる可能性があります。自分や周囲が結婚・出産することで支出が増える可能性もあるため、最低減の備えがあれば安心です。
貯金を無理なく継続して効率良く資産を増やすコツは、先取り貯金と少額の積立投資にあります。銀行の積立預金等で給与を先取り貯金して安全資産を作りながら、同時に少額の積立投資を始め、時間を味方につけた資産形成をしてみてはいかがでしょうか。七十七銀行では先取り貯金しやすい積立預金や少額投資できるNISA口座のご用意があります。無料相談も受け付けているため、20代で貯金を始めたい人はお気軽にご相談ください。
【監修者コメント】
社会人になり働き始めて給与の中で家計を管理することになりますが、最初が肝心です。1年でいくら貯めたいという目標を立てて、月々で難しい場合は、ボーナスなどで補てんするというのもいいでしょう。将来に向けて、お金の管理は大事です。できることから始めていきましょう。
【七十七銀行 関連ページ】
【参考サイト】
※この記事は2023年8月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。