老後資産終活とは?活動の内容やおこなうメリット・始めるべきタイミングを解説

「終活」という言葉を聞いたことがあっても、具体的にどのような活動をするのかわからない方も多いのではないでしょうか。

終活は、遺言書の作成や葬儀の準備など、人生の最期に向けた活動のことを指します。健在なうちに終活をしておくと、万が一のときに家族の負担が軽減されやすくなります。また、残された人生をより充実したものにできるかもしれません。

今回は、終活をする意味やメリットなどを解説します。終活でおこなうとよいことについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵(M・Mプランニング 代表)

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵
M・Mプランニング 代表

保育士、営業事務の仕事を経て、ファイナンシャルプランナーに。
独身、子育て世代から定年後の方までお金に関する相談を受けて、16年目になります。
主婦FPとして、等身大の目線でのアドバイスが好評です。
家計・保険・老後、教育資金などの個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っているほか、お金の専門家として、テレビ取材なども受けています。
人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

終活をする意味や必要性とは

終活とは、人生の終わりに向けておこなう活動のことです。遺言書の作成や葬儀・お墓の準備、医療・介護の意思表示、財産の整理など、終活を通じておこなうことはさまざまです。

終活で決めたことをエンディングノートにまとめたり、残された家族に向けてメッセージを書いたりする人もいます。

終活をする主な目的は、万が一のときに残された家族や周囲の人に苦労をかけないようにすることです。また、終活を始めると残された人生をどのように生きるのかを考えるよいきっかけにもなるでしょう。

終活をする4つのメリット

終活をする主なメリットは、以下の4つです。

  1. 残された家族の負担が軽減されやすくなる
  2. 家族間のトラブルを防ぎやすくなる
  3. 充実した余生を送りやすくなる
  4. 死に対する不安を軽減できる

1つずつみていきましょう。

1.残された家族の負担が軽減されやすくなる

葬儀やお墓について何も決めないまま亡くなると、残された家族は悲しみの中多くのことを決めなくてはならなくなり、大きな負担となります。

終活をしておくことで、自分自身が亡くなった後の家族への負担を軽減できます。

たとえば、葬儀を依頼する葬儀会社や形式、参列者などの意思を明確にしていれば、残された家族が決めるべきことを減らせるでしょう。また、お墓の種類や建てる場所を生前に決めて購入まで済ませていれば、家族が改めてお墓を選んだり購入したりする必要はありません。

2.家族間のトラブルを防ぎやすくなる

亡くなった人が遺言書を作成していなかった場合、相続人が全員で話し合う「遺産分割協議」をして、遺産の引き継ぎ方を決めます。遺産分割協議をすると、分割方法で相続人同士が揉めてしまう「争続」が発生し、家族が仲違いしてしまうケースがあります。

そこで、遺産分割時のトラブルを防ぐために、終活で財産の分け方を明確にしておくのも方法です。健在なうちに家族と話し合いをして財産の分割方法を決めておき、必要に応じて遺言書を作成することで、相続時のトラブルを防ぎやすくなるでしょう

3.充実した余生を送りやすくなる

多くの方は、終活を通じてこれまでの人生を見つめ直し、自分自身が大切にしていることや今後実現したいことを考えて、余生をどう生きるのかを計画します

残された時間をどのように暮らしていくのかをあらかじめ決めることで、より充実した老後生活を送りやすくなるでしょう。

4.死に対する不安を軽減できる

終活を通じてさまざまな準備を進めることで、自分自身の整理がつき、死に対する不安を解消できる可能性があります。

「死について考えることは縁起が悪い」という意見もありますが、不安を解消するために終活を通じて自分自身の最期と向き合ってみるのもよいかもしれません

【監修者コメント】

終活をすることで、自分の死後、残された家族等がスムーズに手続きなどできるようにするだけでなく、人生のエンディングを考えることで、今をよりよく生きることにつながるのではないでしょうか。

終活を始めるタイミング

終活を始めるタイミングは人それぞれです。50歳代や60歳代から終活を始める人もいれば、40歳代から始める人もいます。

また、定年退職や子どもの独立、孫の誕生などのライフイベントが起こったときや、余命宣告を受けて残りの人生を意識し始めたときも、終活を開始する代表的なタイミングです。

終活を始める年齢に決まりはありませんが、健在なうちに始めることが望ましいでしょう。財産の整理や遺言書の作成、葬儀の準備などをするときは、ある程度の体力や判断力が必要になるためです。

終活でおこなうとよいこと7つ

では、終活では具体的に何をすればよいのでしょうか。ここでは、終活をする際におこなうとよいことを7つご紹介します。

1.遺言書を作成する

遺産相続におけるトラブルを防ぐために遺言書を作成し、遺産を引き継ぐ人を指定しておくのも方法です。

自筆証書遺言は、財産を所有する本人の自筆で作成しますが、相続財産の一覧である「財産目録」については、パソコンで作成できます。

ただし、民法で規程された方法で作成しなければ、遺言書に記載した内容が無効になってしまう可能性があります。そのため、自筆証書遺言を作成する際は、弁護士や司法書士などの専門家にも相談するとよいでしょう。

また、公証人という法律の専門家に作成を依頼する「公正証書遺言」を選ぶのも方法です。公正証書遺言の作成には、ある程度の費用はかかりますが、公証人のサポートを得られるため、自筆証書遺言よりも記載内容が無効になるリスクは低くなります。

2.保有する財産の情報をまとめておく

終活をする際は、預貯金や不動産、株式などに関する情報をまとめておくとよいでしょう。具体的には、以下の通りです。

  • 預貯金口座:金融機関名・口座番号・残高
  • 有価証券(株式・投資信託・債券など):金融機関名・口座の種類(特定口座・一般口座・NISA口座など)・保有する商品
  • 生命保険:商品の種類・契約先の保険会社名・証券番号・保険金の受取人・担当者名
  • 不動産:種類(マンション・戸建て住宅・土地など)・名義人・住所・時価
  • 自動車・美術品・貴金属・骨董品などその他の財産
  • 借金や未払金などマイナスの財産

ネット銀行やネット証券は、実店舗や通帳がなく残された家族が存在を見落としやすいため、一覧表にまとめておくと親切でしょう。

すでに使用していない預貯金口座や証券口座がある場合は、解約することをおすすめします。

土地や建物などの不動産を所有しているのであれば、引き継ぎ方を決めておきましょう。不動産は分割しにくい資産であるため、相続のときに家族間でトラブルに発展しやすいです。

不動産相続のトラブルを防ぐ方法には「生前に売却する」「特定の人に生前贈与する」などがあります。税理士や金融機関などの専門家に相談し、最も都合のよい方法を選ぶことが大切です。

3.身のまわりの整理をする

亡くなった人の遺品が多いと、残された家族は片付けや処分に手間がかかるかもしれません。健在なうちに身のまわり品を整理して、不要なものは処分しておくとよいでしょう

趣味の道具やコレクションなど、捨ててしまうことに抵抗があるものは、大切に扱ってくれそうな人に売却したり譲ったりする方法があります。

また、スマートフォンやパソコンに保管されている、写真や動画、連絡先などのデジタルデータもあわせて整理しておきましょう。WebサイトやSNSのID・パスワードは、一覧表にまとめておくことで、残された家族は退会の手続きがしやすくなります。

4.医療や介護の意思表示をする

突然大きな病気を患ったり認知症が進行したりすると、治療や介護の希望を自分自身で家族や主治医、介護の担当者などに伝えられなくなるかもしれません。そこで、健在なうちに以下のような医療や介護の希望を決めておくとよいでしょう。

  • 延命治療の有無
  • 余命宣告を隠さず伝えて欲しいか
  • 希望する介護の内容・介護を受ける場所・介護費用を支払う方法

特に、延命治療の有無については、家族と話し合って希望を明確にすることをおすすめします。本人の代わりに延命治療をすべきか判断することは、家族にとって精神的に大きな負担になりかねないためです。

5.葬儀やお墓のことを決める

終活をする際は、葬儀の形式や参列して欲しい人、遺影に利用する写真、返礼品などできるかぎりのことを決めておくのがおすすめです。生前に葬儀会社との契約を済ませたり、生きているあいだに葬儀をする「生前葬」をしたりするのも方法です。

葬儀とあわせて決めておきたいのがお墓です。お墓には、家族や同じ姓の親族の遺骨を納める「家墓」の他にも、共同墓地や納骨堂、樹木葬などさまざまな種類があります。それぞれの特徴やアクセスのしやすさ、費用などを比較して選ぶとよいでしょう。

また、生前に墓地の権利や墓石を購入しておくのも方法です。墓地の権利や墓石などは相続財産には含まれず、相続税の課税対象外となるためです。現金を墓地や墓石に変えることで、相続税の負担を軽減できる効果が期待できます。

6.老後生活の希望をリストアップする

老後にやりたいことや実現したいことを整理するのも、大切な終活の1つです。やりたいことや実現したいことが明確であれば、残された人生をより楽しく過ごせるようになるでしょう

やりたいことが思いつかないときは、自分自身が興味のあることをリストアップしてはいかがでしょうか。旅行やスポーツ、読書、語学の勉強など、これまでの人生で興味があったことを書き出してみると、残された人生でやりたいことがわかるかもしれません。

また、ボランティア活動や地域の交流イベントに参加する方法もあります。新しく始めたいことが見つかったり、新たな交友関係ができたりする可能性があります。

7.エンディングノートを作成する

エンディングノートであれば、財産の情報や医療・介護の希望、葬儀の希望など、終活で検討したことのすべてを書き溜めておけます

終活で決めたことをエンディングノートに書いていれば、家族が手続きや申請などをする際に必要な情報を確認しやすくなります。また、保有する財産をエンディングノートにまとめることで、相続が発生したときに遺産分割や相続税の申告などがスムーズに行いやすくなります。

ただし、エンディングノートは遺言書とは異なり法的な効力はありません。遺産の引き継ぎ方に明確な希望があるときは、法律の規定に沿った遺言書を作成しておきましょう。

エンディングノートには、個人情報やパスワード、暗証番号なども記載するため、厳重に保管するのが望ましいです。しかし、家族がエンディングノートの存在に気づかなくては意味がありません。そのため、作成後は保管場所を家族に伝えておきましょう。

七十七銀行では、オリジナルのエンディングノート「77コのWISHノート」を配布しています。
七十七銀行オリジナルエンディングノート「77コのWISHノート」使い方動画

【監修者コメント】

元気なうちには話しにくいことでも、エンディングノートなどに書いておくことで、家族の手続きが少しでもスムーズにいくこともあるでしょう。残される家族のため、ご自身のためにも書いて残しておくことは大切です。

終活時に検討するとよい契約

終活をする際は、老後生活や亡くなった後に備えられる契約の締結を検討するとよいでしょう。ここでは、終活をするときに検討するとよい契約をご紹介します。

財産管理委任契約

財産管理委任契約とは、所有している財産の管理や本人の生活を維持するために必要なこと(身上監護)などを特定の人に委ねられる契約のことです。預貯金口座の管理や生活用品の購入、入院費・施設の入居費用の支払い、市区町村役場での申請などを委任できます。

財産管理委任契約は口約束のみでも成立しますが、念のために公正証書で契約書を作成しておくとよいでしょう。

任意後見契約

任意後見契約とは、認知症をはじめとした理由で正常な判断ができなくなったときに備えて、代理人を指定する契約のことです。判断能力が低下したとき、財産の管理や入院の手続きなどをあらかじめ決めた任意後見人に任せることができます。

任意後見人に指定できるのは、身内や友人、弁護士、司法書士などです。契約を結ぶ際は、公正証書を作成する必要があります。

見守り契約

見守り契約とは、契約時に決めた支援者が定期的に本人の健康状態を確認し、任意後見契約を開始する時期を判断してもらうための契約のことです。

支援者が、本人と面会や電話連絡などで面談をして健康状態や生活状況を確認することで、より適切なタイミングで任意後見契約を始めやすくなります。

死後事務委任契約

死後事務委任契約とは、亡くなった後の事務的な手続きを委任する人を決める契約のことです。遺体の引き取りや葬儀、サービスの解約手続きなどを、信頼できる人に任せることができます。

死後事務委任契約では、配偶者や子どもなどの血縁者だけでなく、友人や内縁関係にあるパートナーも手続きを任せられる人に指定できます。そのため、身寄りがいない人や家族と離れてくらしている人などが結ぶことの多い契約です。

家族信託(民事信託)

家族信託(民事信託)とは、財産の管理を配偶者や子どもなどの信頼できる家族・親族に任せられる契約のことです。

たとえば、認知症によって判断能力が低下したとき、あらかじめ受託者に指定されていた人が本人の代わりに財産の管理や処分などができます。

また、家族信託であれば本人が健在であるうちから、家族や親族に財産の管理・処分を託せます。加えて、遺言のように遺産相続の内容を決めることも可能です。

ペット関連の契約

犬や猫などを飼っている人は「負担付死因贈与契約」や「ペット信託」を活用する方法があります。

負担付死因贈与契約は、亡くなったときに財産を贈与する代わりに、特定の負担を負う契約のことです。たとえば「私が亡くなったときは500万円を贈与するので、飼っていた犬の世話をしてほしい」という内容の契約を結ぶことができます。

ペット信託は、あらかじめ信頼できる人や団体などに財産を託すことで、飼い主が万が一のときに備えられる制度です。飼い主が病気やけが、死亡などでペットを飼うことができなくなったときは、あらかじめ託された財産から新しい飼い主に飼育費用が支払われます。

終活に向けて計画的に資金を準備することが大切

終活では、お墓の購入費用や葬儀の準備費用、家具や家電などの処分費用、弁護士や司法書士への相談費用などで、数十万〜数百万円の費用がかかる可能性があります。そのため、老後生活だけでなく終活についても考慮して老後資金を準備することが大切です。

老後資金を準備するときは、貯蓄だけでなく生命保険や投資も活用するとよいでしょう

たとえば「終身保険」に加入すると、一生涯にわたって死亡と所定の高度障害状態に備えられるため、葬儀費用や遺品の整理費用の準備に活用できます。また、途中で解約して受け取った解約返戻金を老後の生活費や医療費の支払いに充てることも可能です。

iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する方法もあります。iDeCoは、自分自身で掛金を拠出して投資信託や生命保険などで運用することで、老後の年金を積み立てる制度です。掛金の運用先に指定した商品から得られた利益には、税金がかかりません。

また、掛金と同額が年間の所得から控除されるため、所得税や住民税を節税できる可能性があります。

他にも、老後資金の準備方法にはさまざまな種類があります。金融機関やファイナンシャルプランナーにも相談し、ご自身に合っていると考えられる方法を選び、老後に向けた資産形成を始めるとよいでしょう。

まとめ

終活をして、自分自身が亡くなったときに向けた準備をしていれば、万が一のときに家族の負担を軽減できるだけでなく、相続時のトラブルも防ぎやすくなるでしょう。また、終活を通じて今後の人生をよく考えることで、充実した余生を送りやすくなります。

一方、終活では葬儀の準備やお墓の購入、不要品の処分などでまとまった資金が必要になることがあるため、計画的に準備をすることが大切です。

七十七銀行では、預金や生命保険、iDeCoなどを用いた老後の資産形成についてご相談が可能です。相続手続きを支援するサービスもご用意しておりますので、終活や相続でお悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。

【監修者コメント】

終活といっても、何からしていいか分からないという方は、まずエンディングノートを作成することをお勧めします。市販のノートでいいので、上記を参考にして記入してみて下さい。書くことで整理することも分かってきます。

【七十七銀行 関連ページ】

※この記事は2023年5月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。

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