相続相続手続きは何からすべき?具体的な流れと期限をわかりやすく解説

相続は、あるとき急に発生します。しかし一生にそう何度も経験するものではないため、何から手続きをすればよいかわからずに困る人は少なくありません。

相続の手続きには、それぞれ期限があるので注意が必要です。特に相続税に関わる手続きは、期限を過ぎてしまえば追徴課税などのペナルティが課されることもあります。

本記事では相続発生時に必要な手続きの流れを、期限の目安ごとに分けて解説します。

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵(M・Mプランニング 代表)

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵
M・Mプランニング 代表

保育士、営業事務の仕事を経て、ファイナンシャルプランナーに。
独身、子育て世代から定年後の方までお金に関する相談を受けて、16年目になります。
主婦FPとして、等身大の目線でのアドバイスが好評です。
家計・保険・老後、教育資金などの個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っているほか、お金の専門家として、テレビ取材なども受けています。
人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

【期限付き一覧】相続発生時に必要な手続きの流れ

相続発生時の一般的な手続きの流れは以下のとおりです。表には各手続きの期限も記載していますが、すべての手続きを期限内に対応しなければならないわけではありません。正式に期限の定めがない手続きについては、【目安】という印を付けています。

それぞれ、参考にしながら手続きを進めてください。

期限の目安 手続きの内容
死亡日(死亡を知ったとき)から7日以内
  • 死亡診断書の受け取り
  • 死亡届の提出
死亡日から5日~14日以内
  • 老齢年金の受給停止手続き(受給権者の死亡届提出)
  • 遺族年金の確認と手続き
  • 各健康保険の資格喪失届提出
  • 介護保険の資格喪失届提出
  • 世帯主変更届提出

※被相続人が世帯主で、世帯員が2人以上いる場合

【目安】死亡日から1か月以内
  • 遺言書の有無を確認
  • 法定相続人の調査と確定
  • 相続財産の調査と把握
  • 生命保険金の請求手続き
  • 遺産分割協議の着手
死亡日(相続開始を知った日)から3か月以内
  • 相続の放棄・限定承認の選択
死亡日(相続開始を知った日)の翌日から4か月以内
  • 被相続人の所得税の準確定申告
【目安】できるだけ4か月以内に
  • (遺言書がない場合)遺産分割協議の実施、協議書の作成
  • 相続財産の整理(預貯金や有価証券の解約、名義変更、不動産の相続登記)
死亡日(相続開始を知った日)の翌日から10か月以内
  • 相続税の申告・納付

※被相続人:死亡した人
※法定相続人:民法で定められた、被相続人の財産を相続できる権利を持つ人

それぞれの手続きについて、以下で詳しく説明します。

死亡日から7日以内におこなう手続き

被相続人の死亡がわかったとき、最初にするべき手続きです。医療機関で死亡診断書を発行してもらい、死亡届を提出しましょう。

【死亡診断書の受け取り】

医療機関で発行してもらい、入手します。死亡診断書は被相続人の死亡を証明する重要な書類です。火葬の申請や保険金の請求などの手続きで必要なため、5部ほどコピーをとっておくとよいでしょう。

【死亡届の提出】

死亡診断書の用紙には死亡届が一緒に添え付けられています。死亡後7日以内に必要事項を記入して、被相続人の本籍地か死亡した地域、または届出人の所在地の市区町村役場に提出します。

死亡日から5日~14日以内におこなう手続き

相続に直接関わるわけではありませんが、すべての人に欠かせない手続きです。遺言書の確認など相続手続きとあわせて進めていきましょう。

【公的年金(老齢年金)の受給停止手続き】

被相続人が老齢年金受給者であれば、年金受給停止手続きが必要です。厚生年金は死亡後10日以内、国民年金は死亡後14日以内に、年金事務所または年金相談センターに「年金受給権者死亡届」を提出します。

※日本年金機構にマイナンバーを届けている場合、原則として死亡届は不要

【公的年金(遺族年金)の確認と手続き】

被相続人によって生計を維持されていた遺族がいる場合は、遺族年金を受けられる可能性があります。年金事務所や年金相談センターにて条件を確認のうえ、受給対象であれば手続きを進めましょう。

【健康保険(国民健康保険・会社員の健康保険)の手続き】

自営業者は死亡後14日以内に、国民健康保険の資格喪失届を市区町村役場に提出します。
会社員は死亡後5日以内に会社経由で健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届を提出します。会社員の場合は勤務先が手続きをおこなうため、勤務先の指示に従い手続きを進めてください。

【介護保険の手続き】

被相続人が介護保険の被保険者の場合は、死亡後14日以内に資格喪失届を市区町村役場に提出します。

【世帯主の変更届】

被相続人が世帯主で、世帯員が2人以上いる場合は世帯主の変更届が必要です。死亡後14日以内に変更届を市区町村役場に提出します。

【目安】死亡日から1か月以内におこなう手続き

以下の手続きには明確な期限の定めがありませんが、いずれも相続に関わる重要な手続きです。1か月以内を目安に、できるだけ早くおこなうことをおすすめします。

【遺言書の有無を確認】

相続手続きを始める際は、遺言書の有無を確認します。
遺言書が自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要です。
遺言者が公証人という法律の専門家と共同で制作した公正証書遺言は検認手続きが不要で、その遺言内容どおりに相続手続きを進めていきます。

【法定相続人の調査と確定】

遺言書がない、あるいは遺言書で分割方法が決まらない相続財産がある場合は、法定相続人で話し合って相続財産を決めることになります。
法定相続人の調査には、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本・除籍謄本などが必要で、いずれも被相続人の本籍地がある市長村役場で入手できます。

【相続財産の調査と把握】

被相続人が保有していた資産や借金がないかを調査し、すべての相続財産を把握します。
銀行の預金通帳やカードの残高証明書、証券会社から送付される運用報告書、生命保険会社の保険証券、不動産の登記簿謄本、自宅保管のタンス預金など、財産を特定できそうな書類をすべて集めましょう。相続財産には借金も含まれるため、借金の有無も必ず確認しておきます。

【生命保険金の請求手続き】

被相続人が生命保険契約に加入していた場合は、生命保険金の請求手続きを行います。生命保険金は受取人固有の財産としてみなされるため、被相続人に借金があり相続を放棄した場合でも受け取れます。相続税の納付資金としても活用できるため、早めに請求しましょう。

【遺産分割協議の着手】

遺言書がない場合は、法定相続人全員で相続財産の分け方を協議しなければなりません。時間がかかることもあるため、法定相続人と相続財産が確定したら速やかに遺産分割協議に着手しましょう。

死亡日から3か月以内におこなう手続き

相続人の意思にかかわらず、被相続人の死亡日(死亡を知った日)から3か月経過すると、借金も含めてすべての相続財産を受け継ぐことが決まってしまいます。そうなる前に、相続財産を受け継ぐかどうか決める手続きを行いましょう。相続の選択肢は以下の3つです。

  • 相続の放棄:遺産相続のすべてを放棄すること
  • 限定承認:借金など負債は相続せずプラスの財産のみを相続すること
  • 単純承認:遺産相続のすべての権利も義務も引き継ぐこと

流れとしては、最初に財産を相続するか放棄するかを決め(相続の放棄の選択)、次に相続財産に負債がある場合は限定承認するかどうかを選択します(限定承認の選択)。どちらの方法も家庭裁判所で死亡日から3か月以内の手続きが必要です。

また、借金など負債がなくすべてを引き継ぐ場合は、何もしなければ自動的に単純承認されます。

死亡日から4か月以内におこなう手続き

被相続人がフリーランスや自営業者で事業所得があったり、不動産賃貸業を営んでいて不動産所得があったりする場合は、代わりに確定申告をしなければなりません。被相続人が年度の途中で亡くなってしまったときは、以下の手続きを行いましょう。

【被相続人の所得税の準確定申告】

死亡日より4か月以内に、被相続人の所得に対する申告と納税が必要です。準確定申告では、1月1日から被相続人が亡くなった日までの所得を確認して申告しなければならないため、場合によっては手続きには時間がかかります。税務署に相談し、早めに着手しておきましょう。

【目安】死亡日から4か月以内におこなう手続き

以下の手続きに明確な期限の定めはありませんが、長引くと他の手続きにも関わってくるため、4か月以内を目安に行いましょう。

【遺産分割協議の実施】

相続財産の調査や把握が終わったら、相続人全員の同意を得て遺産分割協議書を作成し、遺産分割を行います。遺産分割協議がまとまらなければ調停が必要になる可能性もあるため、目安を決めて取り組みましょう。

【預貯金や有価証券の解約・名義変更】

遺産分割協議が成立したら、相続財産である預貯金や有価証券などを解約・名義変更を行っていきます。一般的には、金融機関ごとに相続人全員の署名と押印が必要になるため、手続きには時間がかかります。あらかじめスケジュールを調整しておくとスムーズです。

【不動産の相続登記】

被相続人が不動産を所有していた場合は、不動産の所在地を管轄している法務局で相続登記を行います。

死亡日から10か月以内におこなう手続き

相続財産が一定額を超える場合は、相続税の申告・納付手続きが必要です。

【相続税の申告・納付】

被相続人の死亡(相続開始)を知った日の翌日から10か月以内の手続きが必要です。10か月以内に、被相続人の最後の居住地の管轄税務署へ相続税の申告と納付を行います。

ただし、相続税には基礎控除や配偶者の税額軽減特例といった控除枠があります。相続財産が以下の金額以内におさまっていれば、相続税は発生せず、申告の必要もありません。

  • 基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
  • 配偶者の税額軽減:相続人が配偶者の場合、配偶者の法定相続分相当額もしくは1億6,000万円までは相続税がかかりません

相続税の申告と納付手続きの注意点については、次項で詳しく説明していきます。

相続税の申告・納付手続きの注意点

相続税の手続きでは、期限を過ぎたり過少申告をしたりすると、以下のようなペナルティが課される点に注意しましょう。

【延滞税】

相続税の納付期限に遅れたら延滞税が発生します。相続税の申告だけすませていても、納付しなければ延滞税はかかります。

【無申告加算税】

申告期限までに相続税の申告をしなければ、無申告加算税が発生します。

【過少申告加算税】

相続税は自己申告ですが、申告金額が不足していたら過少申告加算税が発生します。

【重加算税】

申告や納税の際、悪質なごまかしがあると判断されると、過少申告加算税や無申告加算税の代わりに重加算税が発生します。最も重いペナルティで、税率も跳ね上がります。

たとえば、無申告のうえに納税もしなければ延滞税と無申告加算税の両方が発生します。さらに、不正行為によって相続税を免れた場合は刑事罰を処せられることもあるため、必ず期限内に正しく申告・納税するようにしましょう。

相続税の納付は原則として期限内に現金一括納付ですが、条件を満たせばクレジットカード納付も可能です。また、災害その他やむを得ない理由のやんだ日から2か月以内に期限の延長申請を行えば、申告期限などが延長されます。

期限内に納付できそうにない場合の対処法

クレジットカード納付や災害時の期限延長などが難しく、どうしても期限内納付ができないときの対処法としては、延納や物納という方法があります。

延納は相続税の支払期限を延長する方法です。相続税の金額が10万円超、金銭での納税が困難な金額であることを証明したうえで、延滞税額や利子税額に相当する担保の提供などが必要です。

物納は金銭以外で納付する方法です。延納でも金銭納付が困難な理由があり、物納に申請できる不動産や船舶といった財産が必要です。

どちらの方法も厳しい要件があるため、簡単に利用できるわけではありません。したがって、基本的には期限内にできる限り納付手続きをすませておくことをおすすめします。

相続手続きを専門家に任せる方法もある

相続手続きは、1つ1つ調べて対応していけば、自分1人でも手続きできるものが多いです。しかし、相続財産の整理や遺産分割協議書の作成、準確定申告や相続税の申告手続きになると、特定の知識や税制に関する理解が不可欠です。

調べればわかると言っても、相続手続きには期限があるものが多く、じっくり調べて対処する時間がないという人がほとんどでしょう。

実は、これらの相続手続きを専門家に代行依頼する方法もあります。代行依頼の相談先候補には、金融機関や税理士、司法書士、弁護士が挙げられます。手続きによって相談先は異なるため、相談したい手続きにあわせて適宜必要な専門家に相談してみるとよいでしょう。

特に気を付けたい相続税の申告・納付手続きなどの税務署対応は、税理士や金融機関に依頼できます。相続財産が多く、申告漏れや計算方法が間違っていないか不安な人は、専門家への確認、相談がおすすめです。

また、被相続人の死亡で生命保険金を受け取り、今後の家計や生活設計をどうしようか悩んでいる人は、家計の専門家であるファイナンシャル・プランナーに相談するのも1つの方法です。大切な保険金を無駄にしないためにも、今後の資金計画をしっかり見直すようにしてください。

まとめ

相続は、あるとき突然発生します。それまで家族と遺産相続について何も話をしてきていない場合は、遺言書の確認から相続税の申告までさまざまな手続きが必要になります。相続人が多く、話し合いが難航してなかなか遺産分割が決まらない場合も考えられます。

相続手続きで特に気を付けたいのは、相続税の納付期限です。納付期限までに納付しなければ、相続税だけではなく延滞税や無申告加算税がかかることもあります。

相続が発生したら、すぐにこれからやるべき手続きと期限を確認し、最後の納付期限までに種々の手続きを終えられるようにスケジュールを調整してください。相続の各種手続きは専門家に代行する方法もあるため、不安な人は積極的に専門家の力を借りましょう。

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※この記事は2022年8月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。

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