教育金融リテラシーとは?必要と言われる理由と高める方法を解説

スマートフォン1つで、投資やキャッシュレス決済などが手軽におこなえる時代になりました。

金融商品や金融サービスが身近なものになる一方で、利用者である私たちには金融リテラシーの必要性が問われています。

金融リテラシーとは、お金と賢く付き合うために必要な基礎知識や判断力のことです。本記事では、金融リテラシーが必要な理由から高め方まで、わかりやすく紹介します。

「金融リテラシーという言葉をよく聞くけど、漠然としていてイマイチよくわからない」という方は、参考にしてみてください。

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵(M・Mプランニング 代表)

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵
M・Mプランニング 代表

保育士、営業事務の仕事を経て、ファイナンシャルプランナーに。
独身、子育て世代から定年後の方までお金に関する相談を受けて、16年目になります。
主婦FPとして、等身大の目線でのアドバイスが好評です。
家計・保険・老後、教育資金などの個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っているほか、お金の専門家として、テレビ取材なども受けています。
人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

金融リテラシーとは?

金融リテラシーとは、お金や経済に関するあらゆる情報を適切に取得して理解し、そのうえで自分に必要な商品やサービスを判断できる力のことです。知識があるだけではなく、情報収集力や理解力、判断力を含めて総合的に「見極められる力」がある状態を指します。

金融リテラシーがあれば、ライフステージごとに生じる家計の悩みや金融商品・金融サービス選びなど、さまざまな局面で役立つと言われています。

たとえば「キャッシュレス決済はどう活用すればいい?」「子どもができたけど、保険は何に入ればいい?」「我が家が住宅ローンを組むなら、いくらまで借りるのがいい?」といった疑問も、自身で解決できるようになるのではないでしょうか。ただし、ここでの解決とは、すべての疑問を1人で解決することではありません。

金融庁が提言している「最低限身に付けておきたい金融リテラシー」 の一つには「外部の知見の適切な活用」とあります。

つまり、自分でわからない領域は専門家の知見を借りつつ、最終的な判断は自分でおこなう力が求められているのです。したがって、金融リテラシーとは人生を主体的に生きる力そのものと言えるでしょう。

日本人の金融リテラシーの状況

「日本人は諸外国に比べて金融リテラシーが低い」との言葉を見聞きすることがあります。

たしかに、米国や英国では、日本よりも早い段階で学校の授業に金融教育が組み込まれています。2022年になってようやく高校で金融教育が導入された日本と比べると、教育制度自体は遅れているのかもしれません。

また、家計の金融資産構成(2021年3月末現在)の比較において、日本は預貯金の割合が54.3%。米国では預貯金の割合が13.3%です。株式の比率についても日本は10.0%、米国は37.8%となっています。投資商品の浸透状況を比較すると、日本ではまだまだ投資に抵抗がある人が多いと言えます。

出典:日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」

とはいえ、諸外国と日本では文化的な背景や社会保障制度、各種税制、販売されている金融商品や金融サービスなどあらゆる事情が異なります。海外と比べる前に、日本における金融リテラシーの浸透状況を自覚して課題を探ることが大切です。

金融広報中央委員会事務局の「金融リテラシー調査2022年」の結果によると、日本人の「金融知識・判断力」の正誤問題正答率は全体で55.7%。「金融教育をおこなうべきと思う」と答えた人は71.8%でした。金融教育の必要性を感じている人は多いものの、まだまだ多数に浸透しているとは言えない状況です。

出典:金融広報中央委員会 知るぽると「金融リテラシー調査2022年」

本調査で問題の正答率が高い人の特徴として「金融トラブルが少ない」「経済ショックへの耐性が強め」「借入れの負担感が低め」などの傾向が見られました。近年は投資詐欺もどんどん巧妙になっているため、金融トラブルから身を守るためにも一定の知識は必要と言えるでしょう。

金融リテラシーが必要と言われる理由は3つ

金融庁への取材を通じて政府広報オンラインが発表した内容によると、金融リテラシーが必要な理由は以下の3つです。

経済的に自立した「確かな暮らし」を送るため

大学を卒業して社会に出ると、家計を管理する力が求められます。また、就職後は結婚・出産、子育てや住宅購入など、ライフステージごとにさまざまな金融商品、金融サービスと出会う機会が増えていきます。

しかし、これまでの学校教育では収入にあわせて計画的に支出を抑えたり、必要であれば収支を適宜改善していく能力を学ぶ機会がありませんでした。種々の金融商品も同様です。

だからこそ金融リテラシーを身に付け、経済的に自立した確かな暮らしを送れるようにすることが大切です。

より良い金融商品・金融サービスを選べるようになる

インターネットの発達やIT技術の向上、金融にかかわる規制緩和を背景に、近年はさまざまな金融商品・金融サービスが登場しています。

例えば急速に発展したキャッシュレス決済、NISA・iDeCoといった非課税投資制度です。利用者の選択肢の幅が広がった一方で、「種類が多すぎて選べない」「何をどう利用すればいいかわからない」という声も聞かれます。

また、悪質な投資詐欺トラブルも絶えません。利用者1人ひとりが十分な知識や情報を持って正しいものを選ぶ力を身に付ければ、質の悪い金融商品や金融サービス、それらを取扱う業者を淘汰することにも繋がるでしょう。

情報や選択肢に溢れる社会で健全で質の高い金融商品・金融サービスを育てていくためにも、利用者自身が高い金融リテラシーを身に付けることが大切です。

資産形成の可能性を広げられる

先述のとおり、日本人の家計金融資産の過半数は預貯金です。しかし、低金利が続く中、預貯金だけでは十分な資産形成が難しくなっています。加えて2022年6月には消費者物価指数(総合)が前年同月比で2.4%上昇し、全国的な物価上昇が家計を直撃しています。

出典:総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」※2022年(令和4年)6月「全国の概況」

低金利に加えて物価上昇の中で資産をうまく積み上げていくには、適度にリスク性資産を取り入れていくことが大切です。

分散投資や長期投資の理解を深めて始めれば、中長期的に安定したリターンを得やすくなります。投資を含めて資産形成の可能性を広げるためにも、金融リテラシーは必要です。

したがって金融リテラシーとは、生きていくうえで避けて通れないお金と向き合い、より良い金融商品や金融サービスをうまく活用し、資産形成の可能性を広げるものと言えるのではないでしょうか。

実際に金融リテラシーが役立つ場面は多い

金融リテラシーが身についていると、普段の生活で役立つ場面は多々あります。たとえば、以下のような場面で活用できるでしょう。

  • 税金や社会保険に詳しくなるため、会社員・自営業者ともに手取り収入を増やせる
  • 家計管理がスムーズになり、安定的に資産形成できるようになる
  • 家計や自身の価値観、リスク許容度に適した金融商品や金融サービスを選択できる
  • ハイリスクや高額な手数料など、怪しい金融商品や金融サービスを避けられる
  • 金融トラブルから身を守れる
  • 金融トラブルの遭遇時に頼れる相談窓口がわかる

また、金融リテラシーは仕事でも活かせます。リテラシーとは適切に情報収集して理解し、行動、判断できることを指します。主体的に考える力は、あらゆるビジネスシーンで役立つでしょう。

また、金融・経済・財務・リスク管理に関する知識は経営層とコミュニケーションを取るうえで欠かせません。家計の改善だけではなく、キャリアアップに繋がる可能性もあると言えるでしょう。

何をどう学べばいい?金融リテラシーの高め方

ここでは、金融リテラシーの高め方を具体的に解説していきます。金融庁が設置した金融経済教育研究会がとりまとめた報告書では、「最低限身に付けるべき金融リテラシー」として以下4つの分野が記載されています。

  1. 家計管理
  2. 生活設計
  3. 金融と経済の知識と、金融商品を選ぶスキル
  4. 外部の知見の適切な活用

上記4分野はテキストを読むだけでは実践的なスキルは身に付きません。読んで頭に知識を入れるだけではなく、実際の生活で身近な経験を重ねて総合的な力を身に付けましょう。以下、具体的な方法をそれぞれ解説していきます。

出典:金融庁「最低限身に付けるべき金融リテラシー」

1. 家計管理を習慣化する

家計管理とは、日々の収入と支出を把握して適切な方向に改善していくことです。以下の流れを参考にして、実際に実践してみてください。

  • 家計簿アプリや紙・Excelなど自身が使いやすいツールを利用して家計簿を付ける
  • 家計の収支状況を可視化し、お金の流れを把握する
  • 把握した収支状況から、問題点を見つけ、改善策を検討する

収入に対して支出が多い、または貯蓄額が少ないといった問題点がある場合は、収入を増やす方法と支出を抑える方法を考えます。

収入を増やす方法の例は、節税対策や副業があげられるでしょう。支出を抑える方法の例には、通信費や保険料など固定費を削減して節約する方法があります。試行錯誤を繰り返し、各家庭で最適な家計管理を見つけましょう。

2. 生活設計を立てる

生活設計とは、結婚や出産、転職や老後の生活など今後のライフプランを立てることです。

今後の働き方、希望する子どもの人数、子どもの進路、車や住宅購入といった、家計の収支や資産状況が変わる大きなイベントの予定時期を書き出します。次に、各イベントにかかるお金と今後の予定収入を書き出しましょう。

ネットで検索すると、さまざまなライフプランシミュレーションツールが無料で提供されています。

オンラインツールで入力して簡単に金額を計算できるものから、Excelをダウンロードして自分でカスタマイズできるものまで、多様なツールがあります。使いやすそうなツールを利用して、将来かかるお金を明確にしましょう。

現在と将来のお金の流れをある程度可視化することで、資産形成の道筋を立てやすくなります。

3. 金融・経済の基礎知識や金融商品を選ぶスキルを身に付ける

金融や経済の基礎知識を学んだうえで、自分にあった金融商品や金融サービスを選ぶ力を身に付けます。

テキストなどで知識を得るだけではなく、実際に少額から金融商品・サービスへの投資に挑戦してみましょう。実際に投資をして資産の増減や相場を体感すると、より理解しやすくなるでしょう。

また、知識を得る方法として資格勉強を始める方法もあります。日本FP協会のファイナンシャル・プランナー資格や金融財政事情研究会のFP技能検定など、お金の専門家であるFPの資格は特に有効です。

4. 専門家や専門機関を活用する

専門家や専門の機関など、外部の知見をうまく活用する癖を付けていきましょう。金融や経済の分野は幅広いため、すべてを1人で網羅するのは困難です。そこで基礎知識を身に付けつつも、わからないことや苦手な領域は専門家へ相談してみましょう。

ほとんどの銀行や保険会社ではお金に関する相談窓口を設置しています。

医療のことを医者に聞くように、お金や経済のことも専門家の話を聞くことが大切です。複数の専門家に相談し、信頼できるアドバイザーを見つけておくと、いざというときにも頼りにできます。

まとめ

規制緩和や技術の向上によって、私たちの身の回りには多様な金融商品、金融サービスがあります。選択肢が多い社会で自分に適したものを見極め、トラブルから身を守るためにも、金融リテラシーが必要です。

金融リテラシーは人生を主体的に生きる力そのものであり、その力はビジネスシーンでも大いに役立つでしょう。

実際に金融リテラシーを身に付けるためには、本を読んで知識や情報を得るだけでなく、実際に経験をすることが重要です。家計簿を付けたり、ライフプランシミュレーションを作成したりして、普段の生活から少しずつ金融リテラシーを身に付けていきましょう。

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【参考サイト】

※この記事は2022年7月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。

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