教育資金の調達方法として、代表的な方法に教育ローンと奨学金があります。それぞれ併用できますが、仕組みや利用条件は異なるため、利用する際は違いをよく理解しておくことが重要です。
本記事では、教育ローンと奨学金制度の違いをふまえて特徴やメリット・デメリットを解説します。銀行と国の教育ローンの違いや、日本学生支援機構の奨学金(第一種・第二種)の違いも紹介していきますので、参考にしてみてください。
目次
教育ローンは「ローン商品」、奨学金制度は「貸与や給付という形で教育資金を支援する制度」という違いがあります。
項目 | 教育ローン | 奨学金 |
---|---|---|
概要 | 教育資金の利用を目的としたローン商品 | 利用者の教育資金を支援する制度 |
種類 |
|
|
利用者 | 学生の保護者または学生(基本的に満20才以上) | 奨学金によって異なる |
借りた資金の受け取り方 | 一括支給 | 奨学金によって異なる |
利用要件 |
|
奨学金によって異なる |
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
教育ローンの主な特徴は以下のとおりです。
教育ローンは奨学金制度と比べて資金の利用使途が広く、基本的に子どもの学力や能力は問われません。幅広い家庭で利用でき、自由度が高く、まとまった資金を柔軟に用意しやすいという特徴があります。
奨学金制度の主な特徴は以下のとおりです。
奨学金制度は種類が多く、給付型と貸与型があるなど制度によって特徴が異なります。もっとも利用者が多いのは国が実施する「日本学生支援機構の貸与型奨学金」です。そのほかにも国内には8,000以上の奨学金制度があります(2020年度調査結果)。
出典:日本学生支援機構「令和元年度 奨学事業に関する実態調査結果」より
奨学金制度は制度によって申込時期や利用要件などが決まっており、幅広い人が利用しやすい教育ローンとは使い勝手が異なります。一方で、利用要件さえ満たせば、一定の給付金を受けられたり、無利息または低利息で借り入れたりできます。経済的メリットが大きい制度です。
給付型奨学金は返済不要のため、各家庭にかかる教育費の負担を大きく軽減できます。国内には多くの給付型奨学金制度があります。
教育資金の調達を考える家庭は、給付型奨学金制度の中から要件に合うものを探してみてください。以下の日本学生支援機構のサイトでは、日本学生支援機構の給付型奨学金のほか、大学や地方公共団体等が実施する奨学金制度も紹介しています。
上記の「大学・地方公共団体等が行う奨学金制度」では、都道府県別に多様な制度を検索・閲覧できます。各家庭の条件に合う制度がないか、探してみるといいでしょう。
給付型奨学金の次に、多くの人が検討するのは教育ローンや貸与型奨学金でしょう。その中でも幅広い人が利用するのは「国か銀行の教育ローン」と「日本学生支援機構の貸与型奨学金(一種・二種)」です。
ここでは、それぞれの借入条件とメリット・デメリットを解説します。
教育ローンには、国が運営するものと銀行や信用金庫など金融機関が提供するものがあります。
項目 | 国の教育ローン | 金融機関の教育ローン |
---|---|---|
名義人 | 保護者または本人 | |
資金の使い道 | 学校納付金、受験費用、下宿・アパート入居費、教科書代、留学費など幅広い | |
利用要件 | 世帯年収が一定以下であること (例)子2人の世帯:世帯年収(所得)890万円(690万円)以下 |
安定した年収が一定以上あるなど、各金融機関が定める利用要件あり |
借入金額 | 子1人につき上限350万円 ※所定の要件を満たせば450万円 |
子1人につき上限300~500万円程度 |
受け取り方 | 一括 ※融資対象は今後1年間に必要な資金 |
一括 |
返済期間 | 18年以内 | 10年程度 |
金利タイプ/貸出金利 | 固定金利/年2.40% (令和6年5月1日現在) |
主に変動金利/年2~4%程度 |
担保・保証人 | 不要 ※保証料が必要な場合もあり |
原則不要 |
国の教育ローンは子どもの人数に応じた所得制限があり、世帯年収が「一定以下」でなければなりません。そのため、世帯年収が低い世帯でも借り入れしやすいのが特徴です。
一方で金融機関の教育ローンは、安定した年収が「一定以上」など、各金融機関の要件を満たす必要があります。国の教育ローンとは逆で、世帯年収が高くても借り入れしやすいのが特徴です。
教育ローンの主なメリットは、以下の5つです。
教育ローンは一括で借り入れできるうえ資金使途が幅広く、いつでも申し込めるため、総じて自由度の高さがメリットです。学力基準はなく保護者が借り入れできるため、子どもへの負担も抑えられます。
教育ローンの主なデメリットは、以下の2つです。
教育ローンは利用しやすい一方、奨学金に比べて金利はやや高めとなっています。また、国・金融機関ともに教育ローンは貸与型奨学金よりも収入要件がやや厳しめです。
【監修者コメント】
教育ローンは、保護者が借入して返済していくので、子どもに返済させたくない場合や、時期や使い道などの自由度が高いのがメリットです。
利用者が多い日本学生支援機構の貸与型奨学金には、無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金があります。
項目 | 第一種奨学金 (無利子) |
第二種奨学金 (有利子) |
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名義人 | 本人 | |
資金の使い道 | 学校納付金、受験費用、下宿・アパート入居費、教科書代など | |
利用要件 | 一定の学力基準(評定平均値3.5以上)と家計基準あり (例)4人世帯:世帯年収803万円(所得552万円)以内 |
一定の学力基準(平均水準以上)と家計基準あり (例)4人世帯:世帯年収1,250万円(所得892万円)以内 |
借入金額 | 学校種別により異なる 大学(自宅通学):月2万~5万4,000円 |
学校種別により異なる 大学(自宅通学):月2~12万円 |
受け取り方 | 分割 | |
返済期間 | 最長20年 (在学中は返済負担軽減措置あり) |
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金利タイプ/貸出金利 | 無利子 | 貸出時期などで異なるが、近年は年0%台で推移(上限は年3%)
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担保・保証人 | 原則、機関保証または人的保証が必要 |
出典:日本学生支援機構「奨学金事業への理解を深めていただくために」
貸与型奨学金のうち、無利子の第一種は有利子の第二種より学力や年収の基準が厳しめです。
そのため、利用者は第一種より第二種のほうが多くなっています。第一種と第二種は併用できるため、両方利用する学生もいます。
貸与型奨学金のメリットは、以下の3つです。
もっとも大きなメリットは、金利負担が小さく長期返済できるため、返済時の負担を極力抑えられることです。また、国の教育ローンだと収入上限を超える高収入世帯や、金融機関の収入要件に満たない生活保護世帯でも利用できるのは心強いポイントです。
貸与型奨学金のデメリットは、以下の4つです。
貸与型奨学金は子ども本人が返済義務を負わなければなりません。また、申込時期は決まっていて、資金は毎月振込で受け取ります。また、留年や停学になると奨学生の資格を失う可能性があり、在学中は卒業に向けて一定の学力をキープする必要があります。教育ローンと比べて種々の制限があるため、計画的に利用することが重要です。
【監修者コメント】
貸与型奨学金は、利用要件により第一種と第二種があります。要件は変更になることもあるので、最新の情報を調べて申し込みましょう。
自由度が高く使いやすい教育ローンと、経済的負担を抑えられる貸与型奨学金。どちらの利用が向いているかどうかは、教育資金が必要なタイミングや各家庭の状況によって変わります。
ここでは、教育ローンが向いている場合と奨学金が向いている場合をそれぞれ解説します。「両方のケースにあてはまる」という家庭は併用もできるため、併用もあわせて利用計画を考えてみるといいでしょう。
一般的に、教育ローンの利用が向いているのは以下のようなケースです。
上記のケースは教育ローンが向いています。貸与型奨学金は入学前でも申し込めますが、実際に資金が振り込まれるのは入学後で、毎月一定額の支給です。また、在学中の後期学費の支払いは9月~11月頃が多いですが、その場合、奨学金の申込みは春頃に済ませなければなりません。
「まとまった資金」を「すぐに」用意したい場合、また子どもに負担させたくない場合は、教育ローンを活用しましょう。
一般的に、貸与型奨学金が向いているのは以下のようなケースです。
子ども本人が了承していて、学力も意欲も高い場合は、負担を抑えられる貸与型奨学金が向いています。
また、在学後の学費や下宿代を用意したいケースも、貸与型奨学金を活用できます。在学中の資金は入学前に申し込むか、入学後、春と秋の募集時期に申し込むことで利用できます。
「今すぐ必要」というケースは教育ローンを、「あらかじめ必要とわかっている」ケースは貸与型奨学金を利用しましょう。
先述のとおり、教育ローンと奨学金は併用できます。
「併用すると返済するお金が増えるのでは……」と不安になるかもしれませんが、利用額は柔軟にコントロール可能です。
たとえば、入学金や短期留学などまとまった資金の支払いは教育ローンで、在学中の学費は奨学金にする方法もあります。それぞれの特性を活かして併用すれば、金利の負担も抑えやすくなるでしょう。どちらか一つに絞る必要はないので、各家庭の状況をふまえて返済プランを考えてみてください。
【監修者コメント】
できるだけ金利の負担を抑えて借入をしたい場合は奨学金、まとまった資金をすぐに用意したい場合は、教育ローンに向いています。
七十七銀行では、教育資金が必要なときにすぐ利用できる「77教育ローン」を提供しています。
※団体信用生命保険を申し込む場合、Web申込は利用できません
このほか、必要なときに都度資金を借り入れできる77教育カードローン(店頭申込のみ)もあります。資金使途が幅広く、最大500万円もの教育資金を用意できる点は同じです。
ご家庭の状況にあわせて、利用を検討してみてください。
教育ローンと奨学金は特徴が異なるため、一概にどちらが良いと言えるものではありません。それぞれのメリット・デメリットにあわせて併用する方法もあるため、各家庭の状況に適した利用方法を考えてみましょう。
七十七銀行では、教育資金を一括で借りられる「77教育ローン」と、必要なタイミングで都度借りられる「77教育カードローン」を取り扱っています。教育資金についてお悩みの方は、お近くの七十七銀行までお気軽にご相談ください。
【監修者コメント】
お子さんの教育費は計画的に用意していくことが必要ですが、予想以上のお金が必要になる場合もあります。
まずは、給付型が対象にならないか、無理な場合は奨学金、緊急時やさまざな用途に使用したい場合は教育ローンというように使い分けるのがいいと思われます。
【七十七銀行 関連ページ】
【参考サイト】
出典:日本学生支援機構「令和元年度 奨学事業に関する実態調査結果」より
出典:日本学生支援機構「奨学金事業への理解を深めていただくために」
※この記事は2024年8月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。