ローン年収ごとのローンの目安はいくら?住宅・自動車ローンのポイント

住宅や自動車など大きな買物をする際、「自分の年収でどのくらいのローンを組めるだろう」と気になる人もいるでしょう。

本記事では、年収ごとの借入金額の目安になる、ローンの返済比率について詳しく解説します。紹介する借入金額の目安を参考に、各家庭におけるローンの適正額を考えてみてください。

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵(M・Mプランニング 代表)

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵
M・Mプランニング 代表

保育士、営業事務の仕事を経て、ファイナンシャルプランナーに。
独身、子育て世代から定年後の方までお金に関する相談を受けて、16年目になります。
主婦FPとして、等身大の目線でのアドバイスが好評です。
家計・保険・老後、教育資金などの個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っているほか、お金の専門家として、テレビ取材なども受けています。
人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

ローンの借入限度額は年収に対する返済比率で決まる

住宅ローンや自動車ローンなど、各ローン商品には「いくらまで借りられるか」という借入限度額(上限額)が設定されています。

借入限度額はローン申込者の年収に対するローン返済額の比率、いわゆる返済比率で決まります。そのため、自分の年収でどの程度の借入れができるかの目安を知るためには、まず返済比率の確認が必要です。

ここでは返済比率とは何か、一般的なローン商品ではどの程度の返済比率が設定されているかを見ていきましょう。

返済比率(返済負担率)とは

返済比率(返済負担率ともいう)とは、ローンを借りる人の年収に対して、ローン返済額の割合がいくらになるかを示したものです。

  • 返済比率(%)=年間のすべてのローン返済額÷年収×100

たとえば、年収500万円の人が毎月10.5万円でボーナス払いなしの住宅ローンを組むとします。住宅ローン以外に返済しているローンがなければ、年間のローン返済額は10.5万円×12か月=126万円。返済比率は以下のとおりです。
<例>年間のローン返済額126万円÷年収500万円×100=返済比率25.2

なお、「年間のローン返済額」には、住宅ローンから自動車ローン、スマホやクレジットカードの分割払い、カードローンまですべてのローン返済額が含まれます。複数のローンを借りている人は、すべての返済額を合算して返済比率を求めてください。

ローンの一般的な返済比率は年収の25~35%以下

返済比率はローンを貸し出す会社によって異なりますが、一般的には年収に対して25~35%以下と言われています。この返済比率を超える借入れをしてしまうと、返済負担が過度に重くなるため、金融機関の審査に通らない可能性が高くなります。

<一般的なローンの返済比率と年間返済額>
年収 返済比率 返済比率の上限に基づく
年間返済額
(毎月の返済額目安)
200万円 25%以下 50万円
(4.2万円)
250万円 30%以下 75万円
(6.3万円)
300万円 90万円
(7.5万円)
350万円 105万円
(8.75万円)
400万円 35%以下 140万円
(11.7万円)
450万円 157万円
(13万円)
500万円 175万円
(14.6万円)
550万円 192万円
(16万円)
600万円 210万円
(17.5万円)

上記はあくまで、年収に対する返済比率の上限から導き出した「理論上、借入れ可能な返済額の上限」です。審査に通すための上限であり、無理のない返済額の目安ではありません。

たとえば年収500万円の場合、税金や社会保険料を差し引いた毎月の手取り月収は33万円程度です。一方、年収500万円の返済比率に基づく返済額の上限は月々14.6万円。上限いっぱいのローンを組めば、月収の半分近くを返済に充当しなければなりません上記の年間返済額はあくまで超えてはいけない目安だと思っておきましょう。

では、実際は年収に対していくらのローンを組めばいいのでしょうか。1つの目安になるのは、「住宅ローンは年収の5倍弱」「自動車ローンは年収の0.3~0.4倍」の借入金額を設定する方法です。以降で詳しく解説します。

【住宅ローン】借入金額は年収の5倍弱が目安

住宅ローンで審査に通るためには、返済額を年収の25%~35%以下(借入限度額以下)にしたうえで、各家庭にとって無理のない借入金額にすることが大切です。

ここでは、金融機関によって違う住宅ローンの借入限度額と、無理のない借入金額の目安について解説していきます。

借入限度額は金融機関によって違う

住宅ローンの一般的な返済比率から導き出される借入限度額は、民間金融機関であれば年収の6.5倍程度、フラット35であれば年収の9倍程度となります。同じ返済比率なのに借入限度額に差がある理由は、民間金融機関とフラット35では審査時に使う金利が違うからです。

民間金融機関の多くは審査時だけ高めの「審査金利」を利用して借入限度額を計算します。一方のフラット35は、審査の際も「借入金利」で借入限度額を計算します。使う金利が違うと借入限度額はどう変わるのかを見てみましょう。

【審査金利使用】民間金融機関の借入限度額は年収の6.5倍

民間金融機関の多くは、審査時に年3~4%程度の審査金利を使用して借入限度額を求めています。民間金融機関は変動金利の扱いが多いため、返済途中で金利が上昇しても返済比率が一定以下に保たれるよう、高めの審査金利を設定して無理のない借入限度額を計算しているのです。

<審査金利を利用した場合の借入限度額と月額返済額>

(前提条件)35年返済/元利均等返済/ボーナス払いなし

年収 返済比率 審査金利4%で計算した
借入限度額
左記の借入限度額を変動金利0.875%で借りた場合の毎月の返済額
400万円 35%以下 2,630万円 7.3万円
500万円 3,290万円 9.1万円
600万円 3,950万円 10.9万円

※審査金利を使って計算した借入限度額は、年収のおよそ6.5倍程度です。

【通常金利使用】フラット35の借入限度額は年収の9倍

フラット35は審査金利を利用しません。これは、フラット35が金利上昇不安のない全期間固定金利であるのが関係していると考えられます。
審査時には、ローンを借りるときと同様の借入金利を使って借入限度額を計算すると公表しています。

そのためフラット35の場合、民間金融機関よりも借入限度額が大きく、年収のおよそ9倍もの借入れが可能です。ここでは、2023年の金利情報を元に年1.7%で計算した借入限度額を見てみましょう。

<通常金利を利用した場合の借入限度額と月額返済額>

(前提条件)35年返済/元利均等返済/ボーナス払いなし

年収 【フラット35】
借入金利1.7%で計算した
借入限度額
左記の借入限度額を借入金利1.7%で借りた場合の毎月の返済額
400万円 3,690万円 11.7万円
500万円 4,610万円 14.6万円
600万円 5,540万円 17.5万円

このように、たとえ同じ返済比率でも金融機関が違えば審査時に使う金利が違うため、借入限度額が違います。実際に審査を受ける際は、金融機関の担当に借入限度額について尋ねてみるといいでしょう。

実際の借入金額の目安は年収の5倍弱

一般的な返済比率を元に計算すると、民間金融機関では年収の約6.5倍、フラット35では年収の約9倍の借入限度額が設定されています。ただし、借入限度額はあくまで審査に通る借入金額の上限であり、無理のない借入金額ではありません。
では、実際に住宅ローンを借りる人はどの程度の借入金額にしているのでしょうか。住宅金融支援機構によると、フラット35利用者の平均的な借入金額は年収の5倍弱程度でした。

<住宅購入者の平均年収と各物件の所要資金>
  購入者の
平均世帯年収
各物件の
平均所要資金
実際のローン
借入金額
年収の何倍のローンか
注文住宅 602万円 3,572万円 2,874万円 4.8倍
土地付き注文住宅 639万円 4,455万円 3,841万円 6倍
新築建売住宅 563万円 3,605万円 3,121万円 5.5倍
新築マンション 788万円 4,528万円 3,562万円 4.5倍
中古戸建住宅 508万円 2,614万円 2,256万円 4.4倍
中古マンション 608万円 3,026万円 2,474万円 4倍

出典:住宅金融支援機構「2021年度 フラット35利用者調査」

たとえば年収500万円世帯の場合、住宅所要資金は3,000万~3,500万円。頭金を500万~1,000万円入れ、2,500万円程度のローンを組んでいることになります。この「年収の5倍弱」は、長期の借入れを考えると妥当な返済額に抑えられるため、悩んだ際は1つの目安にするといいでしょう。

年収別・住宅ローン返済額シミュレーション

住宅ローンの借入金額を年収の5倍弱を目安にすると、家計の負担を抑えやすくなります。ここでは、年収の5倍程度でローンを組むと毎月の返済額はいくらになるのか、年収ごとの返済額を見てみましょう。

<年収ごとの借入金額と月額返済額>

(前提条件)35年返済/元利均等返済/ボーナス払いなし
※額面年収のうち80%を手取り月収として計算

年収
(手取り年収)
借入金額の目安 左記の借入限度額を変動金利0.875%で借りた場合の毎月の返済額 手取り収入※
に占める
返済額の割合
200万円
(160万円)
1,000万円 2.8万円 21.0%
300万円
(240万円)
1,500万円 4.1万円 20.5%
400万円
(320万円)
2,000万円 5.5万円 20.6%
500万円
(400万円)
2,500万円 6.9万円 20.7%
600万円
(480万円)
3,000万円 8.3万円 20.8%
700万円
(560万円)
3,500万円 9.7万円 20.8%

上記のとおり、年収の約5倍のローンを組むと、手取り収入に占める返済額の割合が20%程度になります。返済額を20%程度に抑えればローンの負担が少なくなるため、突発的な収入の減少や支出にも対処しやすいでしょう。

また、住宅の維持にはローンの他に固定資産税や火災保険料、マンション管理費、修繕費などの支払いが必要です。返済額が手取り収入の20%程度であれば、これらの維持費を含めても家計に与える負担を抑えられるため、安定した返済を続けやすいと言えます。

年収200・300万円でも住宅ローンは組める?

結論から言うと、年収が200万円でも300万円でも、年収に見合った返済比率で安定した収入が見込めるのであれば、住宅ローンを組める可能性は十分あります。

銀行など民間金融機関の住宅ローン申込要件は「前年の税込年収200万円以上」「安定した収入のある方」としていることがほとんどで、フラット35については最低年収の制限がありません。

正規雇用で200万円以上の年収があれば、幅広い金融機関で住宅ローンを検討できるでしょう。なお、七十七銀行で取り扱う「77住宅ローン」では、税込年収が150万円以上の方を対象としています。

【監修者コメント】

住宅ローンは、長い期間返済していくので、資金計画はとても大事です。借りられる額と返していける額は違います。無理なく払える毎月の返済額を計算してみましょう。

【自動車ローン】借入金額は年収以下に抑えて

自動車ローンの借入金額はローンの種類や会社によって異なりますが、一般的に言われている返済比率は25~35%以下です。ただしこの返済比率は住宅ローン同様、あくまで審査に通る返済額の上限です。上述したように、返済比率は「超えてはいけない目安」程度に捉えておきましょう。

また、自動車ローンには以下の注意点もあります。

  • 年収以上のローンを組むことはできない(年収=借入限度額となることが多い)
  • ローン自体の借入限度額が500万~1,000万円以下に設定されていることが多い
  • 住宅ローンなど、ほかのローンがある場合はすべてのローンを合算したうえで返済比率を求める

自動車ローンの適正額は、住宅ローンの有無や自動車の維持費、家族構成や資産額など、その他の家庭状況によって大きく異なります。ほかの要素や上記注意点を元に、年収以下の借入れで、家計に無理のない金額になるよう返済額を調整しましょう。

【カードローン等】ほかのローン利用状況にあわせよう

カードローンを始めとしたその他のローンについては、返済比率についての一般的な目安が示されていません。

ただし、消費者金融・信販会社といった貸金業者から借りるローンについては、法律で総量規制が定められており、年収の3分の1を超える借入れはできなくなっています。銀行のカードローンはこうした総量規制の対象外ですが、銀行の場合は自主的な規制ラインを設けていることがほとんどです。貸金業者であっても銀行であっても、年収に見合わない過度な借入れはできません。

また、住宅ローンや自動車ローンなど別の借入れがあれば、借入可能額に影響します。別で大きなローンを借りている場合は、新規で借入れできる金額が少ないか、まったく借入れできない可能性もあるため気をつけましょう。

【監修者コメント】

ローンを組むということは、毎月の返済の支出が増えるということになります。無理なく返済できる額なのか、長い目で見て判断して、利用するようにしましょう。

まとめ

住宅ローンや自動車ローンなどのローンを借りる際は、年間のローン返済額を一定の基準以下に抑えなければ審査に通りません。その基準が「返済比率」で、一般的な基準は年収の25%~35%以下です。

ただし、この返済比率はあくまで審査に通るために守るべき最低限の基準です。この比率で借入れすれば無理なく返済できる、というものではありません。ローンを借りる際は返済比率を守ったうえで、各家庭のライフプランや資産状況にあわせて、無理なく返済していける借入金額を設定することが大切です。

無理なく返済していける借入金額の目安として、まずは住宅ローンを年収の5倍程度に抑えることをおすすめします。年収の5倍であれば手取り収入の20%程度が返済額になるため、毎月の返済負担を抑えたうえでほかのローンの利用も検討できるでしょう。まずは住宅ローンという大きなローンを組んだうえで、自動車ローンなどのローン金額を検討してみてください。

【七十七銀行 関連ページ】

【参考サイト】

※この記事は2023年7月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。

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