ローンローンは一括返済すべき?メリットと注意点、見極めポイントを解説

会社のボーナスや株式の配当金など、まとまったお金が入ると「今返済中のローンを一括返済したほうがいい?」と悩む人もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、ローンを一括返済する際のメリットと注意点、見極めポイントを詳しく解説します。住宅ローン、カードローン、マイカーローンそれぞれの注意点も解説しているので、本記事を参考に一括返済のタイミングを考えてみてください。

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵(M・Mプランニング 代表)

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵
M・Mプランニング 代表

保育士、営業事務の仕事を経て、ファイナンシャルプランナーに。
独身、子育て世代から定年後の方までお金に関する相談を受けて、16年目になります。
主婦FPとして、等身大の目線でのアドバイスが好評です。
家計・保険・老後、教育資金などの個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っているほか、お金の専門家として、テレビ取材なども受けています。
人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

ローンの一括返済(全部繰り上げ返済)とは?

住宅ローンやカードローン、マイカーローンなどのローン商品は、毎月決まった金額を決まった日にちに返済する「約定返済」が一般的です。ローンの一括返済とは、この約定返済中のローン残高(借入残高)を全額返済することを指します

一括返済(全額繰り上げ返済)とは

一括返済とは、名前のとおり借り入れ中のローン残高をすべて一括で返済する方法です。ローン商品によっては、「全額繰り上げ返済」とも呼ばれます。

通常、ローンは借り入れにともない利息が発生するため、返済期間が長引くほど利息がふくらみ支払総額が多くなっていくものです。しかし返済途中で一括返済をすれば、その分の支払利息を軽減できるため、支払総額を安くできます

繰上返済(一部繰り上げ返済)とは

繰上返済(一部繰り上げ返済)はローン残高の一部を返済して利息を軽減する方法で、住宅ローンでよく使われている返済方法です。

たとえば、毎月8万円返済している住宅ローンの残高が2,000万円あるとします。残高2,000万円のうち100万円を返済して残高を軽減する方法が繰上返済で、2,000万円全額を返済する方法が一括返済です。

一括返済も繰上返済も、利息を減らすことにより支払総額を安くする効果があります。本記事では一括返済について重点的に解説していますが、一括返済のハードルが高い場合は繰上返済という選択肢も考慮するといいでしょう。

各種ローンを一括返済する際の共通メリット

実際にローンを一括返済すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。住宅ローンやカードローンなど、各種ローンの一括返済に共通しているメリットは以下の3つです。

  • 支払総額を安くできる
  • ローンという精神的な重圧をなくせる
  • 他の借り入れがしやすくなる

詳しく見ていきましょう。

1.【経済的メリット】利息額の軽減で支払総額を安くできる

あらゆるローンは借り入れが長引くほど利息が増えていきます。一括返済によって利息額を軽減できれば、その分支払総額を安くできます。

カードローンやマイカーローンは住宅ローンに比べて金利が高めに設定されているため、たとえ少額でも返済が長引けば利息はかさみやすくなります。

一方、住宅ローンは低金利ですが、借入金額が高額で返済も長期にわたるため、どうしても一定の利息が発生します。今後支払う予定の利息額をなくし支払総額を安くできる方法が一括返済です。

ただし、もともと低金利の貸与型奨学金などのローンや、残高が少ない、または返済期間が短いローンの場合は利息額自体が少ないため、一括返済による利息軽減効果はあまり期待できません

経済的なメリットを重視する場合は、「今一括返済すると、支払総額はどれだけ安くなるのか」を確認するようにしてください。

2.【心理的メリット】ローンという精神的な重圧がなくなる

一括返済によって、ローンの精神的な重圧を解消できるというメリットもあります。ローンに対する心理的な抵抗は人それぞれですが、借り入れがあることで不安を感じる人もいるでしょう。

特に住宅ローンは多額の借り入れが長期にわたり続くため、重圧を感じている人は少なくありません。

また、住宅ローンの金利タイプが変動金利の人は、「この先金利が上がってしまったらどうしよう」「払っていけるだろうか」という不安もあるのではないでしょうか。ローンがもたらす日々の不安や重圧から解放されるのも、一括返済におけるメリットの1つです。

3.【信用力メリット】他の借り入れがしやすくなる

一括返済によってローンを完済すると、その分ローンの借入枠が空くことになります。よって、これまで契約していたローンとは別で新たに違うローンを組みやすくなるというメリットがあります。

「今のローンを完済して他のローンを借りる必要がある」シチュエーションとして、よくあるのは住宅ローンの新規借り入れです。

現在カードローンやマイカーローンなど複数の借り入れをしている場合、借り入れの内容によっては住宅ローンの審査に影響する可能性があります。そこで今借りているローンを一括返済して、借り入れがない状況にします。

もちろん、審査の基準は金融機関によって異なるため、一括返済をするだけで新規の借り入れ審査に通る保証はありません。しかし、ローンの審査では各金融機関が年収に占めるローンの割合を見るため、住宅ローン以外に借り入れがあると住宅ローンの借入枠が小さくなるのは事実です

少しでも審査に通りやすくするため、他のローンを一括返済するのは1つの方法だと言えるでしょう。

また、個人の返済情報は各金融機関が審査時に照会する信用情報に登録されます。ローンを完済したという履歴があれば、次の審査で良いアピール材料になるかもしれません。これから他の借り入れを考えている人は、自身の信用力を高くするために他のローンを期日内に一括返済する方法もあると覚えておきましょう。

【ローン別に解説】各種ローンを一括返済する際の注意点

ローンを一括返済する際、ローン契約の種類や一括返済の方法によっては所定の一括返済手数料がかかる点に注意が必要です。一括返済をする際は利息軽減額だけではなく、手数料も加味したうえで経済的なメリットを確認してください。

ここではローンの種類ごとの注意点と対処方法を見ていきましょう。

住宅ローンを一括返済する際の注意点

【住宅ローン控除が受けられなくなる】
控除期間(10年~13年)の途中で一括返済をしてしまうと、以後は控除の適用を受けられません。

【手元の資金が一気に減少する】
住宅ローンは借入残高が多いため、一括返済をすれば手元の資金が必要以上に少なくなるおそれがあります。状況によっては急な出費に対応できず、家計の資金計画が狂う可能性も考えられるでしょう。

【団体信用生命保険の保障を受けられなくなる】
住宅ローン契約の維持によって得られていた団体信用生命保険の保障がなくなります。

◆対処法◆
住宅ローンの一括返済は、住宅ローン控除期間や子育て期間が終わり、貯蓄に余裕が出てきてから行いましょう。

近年の住宅ローンは低金利で団信特約も充実しているため、長期で借りても経済的な負担がそこまで大きくないケースもあります。

また低金利の住宅ローンを長く借り入れして、手元の資金は返済ではなく資産形成に充てるという考え方もあります

一括返済に充てる資金をどう使うのか、各家庭のライフプランや資産形成の方法にあわせて考えてみるといいでしょう。

カードローンを一括返済する際の注意点

【家計に影響が出る可能性がある】
カードローンは借り入れの使い道が自由で、人によっては生活費を補填する目的で借りているケースもあります。一括返済しても生活費が足りなくなってしまえば、再度借り入れが必要です。

【突発的な支出に対応できない可能性がある】
余裕資金や保険の備えがなければ、一括返済後の家計の変化に柔軟に対応できません。

◆対処法◆
家計に影響が出ないよう、突発的な家計の変化には余裕資金や保険などで備えるようにしましょう。

特に病気やけが、冠婚葬祭などの突発的な支出に対処できる備えは、カードローン頼りの家計を改善するためにも必要です。今後の家計のやりくりもふまえたうえで、一括返済の時期を考えてみてください。

マイカーローンを一括返済する際の注意点

【一括返済できない可能性がある】
自動車ディーラー等が独自で設定しているマイカーローン契約の場合、中には一括返済ができないものもあります。

【残価設定ローンは売却価格の保証がなくなる】
契約時に残価保証を設定している場合は、その保証を受けられなくなる可能性があります。

【タイミングや契約内容によっては、一括返済の手数料のほうが高くなる】
返済期間が残りわずかで一括返済手数料がかかる場合、一括返済によって軽減できる利息額よりも、一括返済手数料のほうが高くなってしまう可能性があります。

◆対処法◆
マイカーローンには、あらかじめ車両価格から残価を差し引いた価格をローンで支払う残価設定ローンなど、複雑なローンがあります。

契約内容やタイミングによっては一括返済をするほうがデメリットになる場合もあるため、契約をよく理解したうえで一括返済しなければなりません。

まずは契約中のローン会社に確認して、一括返済の有無や手数料を確認しましょう

【監修者コメント】

ローンを一括返済することによる一番のメリットは、ローンの分の毎月の支出が減ることです。この支出が減った分を貯蓄や投資に回すようにしましょう。

ローンの一括返済を悩んだときの見極めポイント3つ

一括返済すべきか判断できないという人は、以下3つの見極めポイントを確認してください。

  • 一括返済の目的を明確にする
  • 一括返済後、家計に支障はないか
  • 一括返済後数年間、お金のいるライフイベントはないか

それぞれを詳しく解説します。

1.一括返済の目的を明確にする

どのような目的で一括返済を行うのかを明確にすれば、今返済すべきかを判断できるでしょう

たとえば、経済的メリットを重視している人は、一括返済によって実際いくらお得になるのかを確認してください。「一括返済することで軽減できる利息額」から「一括返済にかかる手数料・諸経費」を差し引けば、実質どのくらいお得になるのかを知れます。

2.一括返済後、家計に支障はないか

一括返済するお金とは別に、まとまった貯蓄や保険の備えが十分にあるか確認してください。一括返済をした後、もしも病気やケガで無職や無収入になったとしても、数か月生活できるだけの蓄えは残しておくことが大切です

「家計が厳しくなったらまたローンを借りればいい」と思う人もいるかもしれません。しかし、多くのローン商品は無職では借り入れできません。

一括返済してしまうと、万が一の備えがなくなってしまう人は、先に一定の貯蓄を用意するか、貯蓄がない間は保険を活用するなどして、家計のリスク対策をしたうえで一括返済を検討しましょう

3.一括返済後数年間、お金のいるライフイベントはないか

転職や子どもの進学といったライフイベントは、予想外の出費が増える可能性があります。

「今後大きな出費があった際はまた別のローンを借りる」という方法もありますが、各種ローンには審査があります。数年後、現在と同じ条件で借り入れできるかどうかはわかりません。

まずは家族の今後のライフイベントとイベントにともなう支出を書き出してみて、一括返済をしても対処できそうか確認してみてください

まとめ

ローンを一括返済すると、経済的な負担や精神的な不安を軽減し、他のローンを借りやすくなるというメリットがあります。その一方で、一括返済をすると手数料がかかる可能性や、金額によっては家計に影響が出てしまうリスクもあるため、安易な一括返済には気をつけましょう。一括返済すべきかどうか悩んだときは本記事を参考にしてみてください。

また、一括返済の有無に限らず、家計のリスク対策は重要です。突発的なトラブルや病気、冠婚葬祭などに対応する備えがあるのか、この機会に見直してみましょう。

【監修者コメント】

一括返済を考えるときに、緊急予備費や数年後の教育費、また車の購入費などを考えて、本当に使わないお金なのかを見極める必要があります。そして、金利の高いローンから優先的に返済をしていくことで利息軽減につながります。

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※この記事は2023年6月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。

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