遺産相続が発生したときに気になるポイントは、「誰が、どんな順番で、どのくらい受け取れるのか」です。
そこで本記事では、民法で定められている法定相続人の範囲と相続の順位、相続割合について詳しく解説します。相続順位の具体例も紹介していきますので「急な相続発生でとまどっている」人や「家族構成に応じた相続順位を知りたい」という人は、参考にしてみてください。
目次
遺産相続が発生したとき、多くの人が疑問に思うのは「誰が」「どんな順番で」「どのくらい」遺産を受け取れるのか?ではないでしょうか。実は、これらの疑問は民法によって原則が定められています。
このように法定相続人も相続順位も法定相続分も、すべて民法によって定められています。
ただし、民法の内容はあくまで「原則」であり、絶対に変更できないわけではありません。遺言書があれば、民法で定められている原則よりも遺言書の内容が優先されます。また法定相続人全員の話し合いによって全員の意向がまとまれば、相続割合を変更することも可能です。
相続の原則と上記のようなルールについては、次項で詳しく解説していきましょう。
民法で定められている法定相続人の範囲と相続の順位、相続の割合(法定相続分)は、以下表のとおりです。
相続の順位 | 法定相続人の範囲 ※被相続人から見た続柄 |
相続の割合(法定相続分) ※配偶者がいる場合 |
---|---|---|
常に相続人となる | 配偶者 |
|
第1順位 | 子ども ※被相続人の子どもがすでに死亡している場合、子どもの直系卑属である孫やひ孫が相続人となる |
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第2順位 | 父母や祖父母などの直系尊属 ※父母と祖父母が両方いるときは、死亡した人により近い世代である父母を優先する |
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第3順位 | 兄弟姉妹 ※兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子ども(甥・姪)が相続人となる |
|
ここでは、法定相続人や相続の順位について、特に覚えておきたいルールを7つ解説していきましょう。
相続の大原則として、亡くなった人(被相続人)の配偶者は常に相続人になるため、順位が付けられることはありません。
被相続人に親・子ども・兄弟が何人いたとしても、離婚調停が行われていたとしても、婚姻関係のある配偶者は必ず遺産相続の対象者です。ただし内縁の妻や夫、事実婚のパートナーは、法律上の相続人になれません。たとえ長期にわたるパートナー関係があったとしても、婚姻関係がなければ相続権を持てない点に注意しましょう。
内縁や事実婚のパートナーに遺産を残したい場合は、遺言書を作成しましょう。なお遺言書の作成にもルールがあるため、後述するルール3とルール4もあわせて確認しておいてください。
配偶者は常に相続人となるため、相続順位の枠外に位置します。一方、配偶者以外の相続人には相続順位があり、その優先順位は変えることができません。
相続順位は上記<表1:相続の原則>で示したとおりで、細かいルールは以下に記載します。
つまり、第2順位・第3順位の人が相続人になるのは「自分より順位が上位になる人がいない場合」だけです。第1順位の人がいる場合、第2順位・第3順位の人が相続人になることはありません。
被相続人が遺言書を用意している場合は、民法で定められている相続順位や相続割合よりも、遺言書の内容が優先されます。遺言書の種類は、以下の3つです。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
---|---|---|---|
作成した人 | 本人 | 公証人 | 本人 (代筆可) |
証人・立会人 | 不要 | 公証人+2人以上の証人(相続人を除く)が必要 | 2人以上の証人(相続人を除く)が必要 |
主な特徴 | 自分一人で作成でき、費用もかからないため、比較的簡単に作成できる。自身で保管するため、不備や改ざんの可能性がある | 遺言者の意思をもとに公証人が作成するため、作成時間や費用がかかる。その分、公文書として効力があり、原本が公証役場で保管される | 遺言内容を秘密にしたうえで遺せるが、証人が必要で費用もかかる。自身で保管するため、不備や改ざんの可能性がある |
死後の家庭裁判所での検認 | 必要 | 不要 | 必要 |
遺言書の内容が有効と認められれば、先述した相続順位より遺言書の内容が優先されます。
そのため遺言書では、法定相続人ではない第三者に財産を渡したり、一部の相続人に法定相続割合以上の遺産を渡したりすることが可能です。ただし相続人には、最低限取得できるように法律で守られている相続分(遺留分と呼ぶ)があります。遺留分についてはルール4で詳しく解説します。
相遺留分とは、遺言書があっても奪うことができない一定割合の相続分を指します。
遺留分の権利者 | 遺留分の割合 |
---|---|
配偶者・子ども | 遺留分算定の基礎となる財産の2分の1 |
法定相続人が直系尊属のみ | 遺留分算定の基礎となる財産の3分の1 |
遺留分があるのは配偶者と子ども、父母や祖父母など、兄弟姉妹以外の法定相続人に限られています。兄弟姉妹には遺留分の権利がないので、覚えておきましょう。
遺言書の内容が有効であっても、遺留分の財産を侵害することはできません。遺言に不公平感がある人は、遺留分の侵害がないかを確認しましょう。もし遺言書の内容で遺留分を侵害されていることがわかったときは、遺留分侵害額請求権を行使することで、相続人として本来持っている相続の権利を取り戻すことができます。
法定相続人になる人が音信不通や行方不明の状態であっても、失踪宣告前であれば通常どおり相続人となってしまいます。失踪宣告とは、生死不明者に対して「法律上死亡したもの」とみなす効果を生じさせる制度です。
相続人の生死が7年以上明らかでない場合、あるいは戦争や震災などの危機に遭遇して生死が1年以上明らかでない場合には、家庭裁判所に申し立てることで失踪宣告が可能です。失踪宣告を受ければ、相続人からその人を除外することができます。
「失踪宣告の状態に当てはまらないが、長期間連絡が取れない」場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらうことで、遺産分割などの手続きを進められます。
相続発生後3か月以内であれば、法定相続人は相続を放棄することができます。ただし、相続を放棄すればすべての相続権を失うため、相続人の子どもや孫への代襲相続もできない点に注意しましょう。
相続を放棄した人は、最初から相続人でなかったものと見なされます。ローンや借金といったマイナスの財産だけではなく、預貯金や不動産といったプラスの財産も含めてすべての相続権を失うのです。
配偶者が相続を放棄すれば、第1順位の相続人に権利が継承されます。さらに第1順位の全員が相続を放棄すると、第2順位の相続人に権利が継承されます。このように、相続人が相続を放棄すれば相続割合に変更が生じる点にも留意しましょう。
ルール1で先述したとおり、内縁や事実婚など婚姻関係がないパートナーは法定相続人にはなりません。内縁の配偶者との間にできた子どもも同様です。しかし、被相続人が内縁の妻との間にできた子どもを認知した場合は、その子どもは相続人となります。
また、養子縁組を行った子どもは実子と同様に扱われるため、推定相続人※となります。普通養子の場合は実親と養親両方の推定相続人となり、特別養子の場合は養親のみの推定相続人となる点に留意しましょう。
※推定相続人とは、現時点で相続が発生した場合に遺産相続するはずの人を指す
ここでは、相続順位の具体例をご紹介していきます。実際に相続が発生したらどのような相続割合になるのか、具体例を参考に相続割合のイメージを確認してみてください。
被相続人に配偶者と子どもがいる場合の相続割合は以下のとおりです。
法定相続人 | 相続の割合(法定相続分) |
---|---|
配偶者 | 2分の1 |
子ども | 2分の1 |
配偶者は常に相続人となるため、第1順位の子どもと2分の1ずつ分け合う形になります。子どもが複数人いる場合は、2分の1に子どもの人数分を掛け合わせて計算してください。
たとえば、配偶者と子ども3人がいるときの相続割合は以下のとおりです。
被相続人に配偶者と子ども、さらに親がいる場合の相続割合は以下のとおりです。
法定相続人 | 相続の割合(法定相続分) |
---|---|
配偶者 | 2分の1 |
子ども | 2分の1 |
親 | 対象外 |
相続順位において第1順位の子どもがいる場合、親は法定相続人の対象外となります。第2順位の親が法定相続人になるのは、第1順位である子どもがいないときだけです。
たとえば、配偶者と子ども2人、親が2人いるときの相続割合は以下のとおりです。
被相続人に配偶者と子ども、孫がいる場合の相続割合は以下のとおりです。
法定相続人 | 相続の割合(法定相続分) |
---|---|
配偶者 | 2分の1 |
子ども | 2分の1 |
孫(子どもの子ども) | 対象外 ※ただし第1順位の子どもが死亡している場合は、孫に代襲相続が発生する |
この場合も、配偶者と第1順位の子どもが法定相続人です。ただし第一順位である子どもが死亡している場合は、子どもの直系卑属である孫・あるいはひ孫が相続人となる代襲相続が発生します。代襲相続では、本来の法定相続人の相続分がそのまま次世代に引き継がれます。
たとえば、本来の法定相続人である子どもが死亡しており、配偶者と孫が2人いるときの相続割合は以下のとおりです。
相続において、民法で定められている法定相続人の範囲や相続順位を変えることはできません。
しかし、遺言書を使えば法定相続人以外の人に財産を遺したり、遺産相続の割合を変更したりできます。また遺言書がないケースでも、遺産分割協議によって法定相続人全員の意向が一致すれば、相続割合の変更は可能です。このように遺産相続にはさまざまなルールがあります。
相続はいつ発生するかわかりません。だからこそ万が一に備えて家族と話し合い、家族全員が納得できる相続のありかた・相続対策を考えておきましょう。
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【参考サイト】
※この記事は2022年11月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。