ローン住宅ローン控除とは?2022年度税制改正後の制度内容を解説

マイホームは人生で最も高い買い物といわれるほど、取得時に多額の資金が必要となるため、多くの方が住宅ローンを組みます。住宅ローン控除は、住宅ローンを組んでマイホームを取得する人の所得税や住民税の負担を軽減してくれる減税制度です。

住宅ローン控除を受けるためには、所定の要件を満たした上で確定申告または年末調整で申請をする必要があります。

本記事では、住宅ローン控除の制度内容や要件、申請方法、必要書類などをわかりやすく解説します。

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵(M・Mプランニング 代表)

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵
M・Mプランニング 代表

保育士、営業事務の仕事を経て、ファイナンシャルプランナーに。
独身、子育て世代から定年後の方までお金に関する相談を受けて、16年目になります。
主婦FPとして、等身大の目線でのアドバイスが好評です。
家計・保険・老後、教育資金などの個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っているほか、お金の専門家として、テレビ取材なども受けています。
人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

住宅ローン控除とは?2022年度の改正後の概要を解説

住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んでマイホームを取得した人の税金を優遇する制度です。年末時点の借入残高に応じた一定金額が、所得税と一部住民税から控除されます。

2021年12月末で住宅ローン控除は終了する予定でしたが、2022年度の税制改正で制度内容が一部変更された上で、2025年12月末まで4年間延長されました。

ここでは、2022年に改正された住宅ローン控除の控除額や控除期間、制度の対象となる借入額をご紹介します。

年末時点のローン残高の0.7%を控除

取得したマイホームに2022年1月から2025年12月末までに住み始める場合、住宅ローン控除を適用できると「年末時点の住宅ローン残高×0.7%」が所得税から控除されます。

たとえば、年末時点の借入残高が2,000万円である場合、控除額は「2,000万円×0.7%=14万円」です。

所得税から引ききれない金額は翌年の住民税から差し引かれますが、所得税の課税総所得金額の5%(最大9万7,500円)が上限です。

改正前の控除額は「年末時点の住宅ローン残高×1%」であり、住民税から控除される金額の上限は所得税の課税総所得金額の7%(最大13万6,500円)でした。2022年の改正によって、住宅ローン控除の控除額は引き下げられたといえます。

控除期間は最長13年

改正前の控除期間は原則10年間であり、所定の要件を満たして特例措置を適用した場合に限り13年へと延長されるという内容でした。それが2022年の改正では、控除期間が以下の通りに変更されています。

  • 新築住宅・買取再販住宅:13年間
  • 既存住宅(中古住宅など):10年間

買取再販住宅は、宅地建物取引業者が個人などから買い取り、リフォームやリノベーションなど一定の増改築が施された住宅のことです。

借入限度額は住宅の種類によって異なる

借入限度額とは、制度の対象となる年末時点の住宅ローン残高の上限です。改正後の住宅ローン控除では、認定長期優良住宅や認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅といった環境性能が高い住宅は、借入限度額が高く設定されています。

認定長期優良住宅は、長期にわたって良好な状態で使用するための構造や設備があり、所定の基準をクリアして認定を受けている住宅のことです。認定低炭素住宅は、二酸化炭素の排出を抑える対策がなされており、認定を受けた住宅を指します。

ZEH水準省エネ住宅と省エネ基準適合住宅は、断熱等性能と一次エネルギー消費量(暖房設備や冷房設備などの消費量)が一定基準を満たす住宅です。ZEH水準省エネ住宅のほうが、認定基準は厳しく設定されています。

新築住宅と買取再販住宅の借入限度額は、以下の通りです。

新築住宅・買取再販住宅の住宅ローン控除対象借入限度額
  2022年・2023年に入居 2024年・2025年に入居
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
5,000万円 4,500万円
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円
その他の住宅 3,000万円 0円
※2023年までに新築の建築確認がされていた場合は2,000万円

たとえば、認定長期優良住宅を新築して2023年1月に入居した場合、住宅ローン控除の対象となる借入限度額は5,000万円です。たとえ年末時点の借入残高が6,000万円であっても、控除額は最大で5,000万円×0.7%=35万円となります。

その他の住宅に2024年(令和6年)または2025年(令和7年)に入居する場合、2023年(令和5年)までに新築の建築確認がされていなければ、住宅ローン控除の対象になりません。また、対象になった場合でも、借入限度額は2,000万円で控除期間は最長10年となります。

続いて、既存住宅(中古住宅)の借入限度額をみていきましょう。

既存住宅(中古住宅)の住宅ローン控除対象借入限度額
  2022年~2025年に入居
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
3,000万円
その他の住宅 2,000万円

既存住宅の借入限度額は、新築住宅や買取再販住宅よりも低く設定されています。また、入居したタイミングによって、制度の対象となる借入限度額が変わることはありません。

住宅ローン控除でいくらの税金がもどる?

では、住宅ローン控除を適用できると税負担をいくら軽減できるのでしょうか。以下のモデルケースを用いて、所得税と住民税がいくら戻ってくるのかをシミュレーションします。

  • 取得する住宅:認定長期優良住宅(新築)
  • 入居年月日:2023年1月
  • 年末時点の住宅ローン残高:4,000万円
  • 控除を受ける年の所得税額:14万円
  • 翌年の住民税額:24万円

2023年1月に認定長期優良住宅に入居した場合、住宅ローン控除の対象となる借入限度額は5,000万円です。そのため、年末時点の住宅ローン残高4,000万円のすべてが住宅ローン控除の対象となります。

控除額を計算すると、4,000万円×0.7%=28万円です。そのため、住宅ローン控除が適用されると、14万円であった所得税額は0円となります。

所得税から差し引かれた後の控除額14万円は、翌年の住民税から差し引かれます。ただし、住民税から控除される金額は9万7,500円が上限であるため、最終的な税額は24万円-9万7,500円=14万2,500円です。

住宅ローン控除の適用要件

住宅ローン控除を受けるためには、所定の要件を満たした上で取得した住宅に2022年(令和4年)1月1日から2025年(令和7年)12月31日までに入居する必要があります。

ここでは、住宅ローン控除の対象となる要件を解説します。

新築住宅を取得した場合の要件

新築住宅の場合、住宅ローン控除を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 住宅を新築・取得した日から6か月以内に居住すること
  • 住宅ローン控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住すること
  • 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
  • 床面積が50㎡以上であり、かつその2分の1以上が居住用であること
  • 償還期間(返済期間)が10年以上である一定の借入金または債務を借り入れている
  • 居住年およびその前後2年の計5年間に譲渡所得の課税の特例の適用を受けていない
    ※令和2年4月1日以後の譲渡の場合は、居住年およびその前2年、その後3年の計6年間
  • 取得時および取得後も引き続き生計を一にする親族や、特別な関係のある者から取得した住宅でないこと
  • 贈与によって取得した住宅でないこと

※出典:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 国土交通省「住宅ローンの減税制度について」

住宅ローン控除の対象となるのは、基本的には床面積が50㎡以上の住宅です。ただし、住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が1,000万円以下であり、2023年(令和5年)12月31日以前に建築確認を受けた場合は、床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅も対象となります。

制度の対象となる一定の借入金または債務とは、銀行や信用金庫などの金融機関が取り扱う住宅ローンだけでなく、住宅金融支援機構や地方公共団体などからの借入金なども該当します。

親族や知人などからの借入金は対象外です。また、勤務先からの借入金については、無利子または金利が0.2%未満である場合、住宅ローン控除の対象になりません。

譲渡所得の課税の特例には、以下のようなものがあります。

  制度内容
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例 マイホーム(居住用財産)を売却したときの利益(譲渡所得)から最高3,000万円を控除できる特例
特定のマイホームを買い換えたときの特例 マイホーム(居住用財産)を売却し、所定の要件を満たすと譲渡益に対する課税を将来に繰り延べできる特例

取得したマイホームに住み始める年から一定期間内に、上記のような特例を受けていると住宅ローン控除は利用できません。

買取再販住宅を購入した場合

買取再販住宅を購入した場合は、新築住宅の要件に加えて以下をすべて満たす必要があります。

  • 宅地建物取引業者から取得した住宅であること
  • 宅地建物取引業者が住宅を取得してから、リフォーム工事をおこなって再販売するまでの期間が2年以内であること
  • 取得時において、新築日から数えて10年が経過した住宅であること
  • 建物価格に占めるリフォーム工事の総額の割合が20%以上であること
    ※リフォーム工事の総額が300万円を超える場合には300万円以上
  • 増築や改築、バリアフリー改修、省エネ改修などの控除の対象となるリフォーム工事がおこなわれており、かつ工事費用が一定金額を超えていること
  • 建築後使用されたことがある住宅であり、かつ以下のどちらかに該当するもの
    • 1982年(昭和57年)1月1日以後に建築されたもの
    • 地震に対する安全性に係る一定の基準に適合しているもの

※出典:国税庁「No.1211-2 買取再販住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」国土交通省「住宅ローンの減税制度について」

既存住宅(中古住宅)を購入した場合

既存住宅を取得した場合は、新築住宅の要件に加えて以下のAとBのどちらかを満たす必要があります。また、建築後使用されたことがある既存住宅が対象です。

  1. 1982年(昭和57年)1月1日以後に建築されたもの
  2. 地震に対する安全性に係る一定の基準に適合しているもの

※出典:国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」国土交通省「住宅ローンの減税制度について」

リフォームや増改築の場合

リフォームや増改築で住宅ローン控除を受ける場合は、新築住宅の要件に加えて、以下の要件を満たす必要があります。

  • 増築や改築、一定のバリアフリー改修、一定の省エネ改修など控除の対象となる増改築がおこなわれていること
  • 自己が所有し、かつ、自己の居住の用に供する家屋についておこなう増改築であること
  • 増改築の工事に要した費用の額が100万円を超えており、その2分の1以上の額が自分自身が住んでいる部分の工事費用であること

※出典:国税庁「No.1216 増改築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」国土交通省「住宅ローンの減税制度について」

住宅ローン控除の申告方法

ここでは、住宅ローン控除の申告方法や必要書類を解説します。

初年度は確定申告での手続きが必要

初めて住宅ローン控除を受ける場合は、原則として確定申告をしなければなりません。確定申告は、1年分の所得とそれに課せられる所得税を計算し、申告・納税する手続きです。確定申告の期間は原則、毎年2月16日〜3月15日です。

確定申告をするときの主な提出書類は、以下の通りです。

  • 確定申告書
  • (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
  • 「登記事項証明書」など住宅の床面積がわかる書類
  • 本人確認書類:マイナンバーカードなど
  • 家屋の「工事請負契約書」または家屋の「売買契約書」の写しなど家屋の取得対価がわかる書類

※出典:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」

上記の他にも、必要に応じて取得した住宅や実施した工事などを証明する書類を提出します。

確定申告書や(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書は、最寄りの税務署や国税庁のホームページから入手できます。また、国税庁のホームページ内にある「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の指示にしたがって数値などを入力することで、申告書類の作成が可能です。

住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書は、住宅ローンの借入先である金融機関から送付されてきます。

住宅ローン控除の申請に必要な書類は、取得した住宅の種類などで異なるため、最寄りの税務署などに事前に問いあわせて確認しておくとよいでしょう。

申告書類は、住んでいる地域を管轄する税務署に郵送または持参します。また、マイナンバーカードとそれを読み取れるスマートフォンがあれば「e-Tax」を利用して、インターネットで申告をすることも可能です。

2年目以降であれば年末調整でも手続きが可能

住宅ローン控除の申請をする際に確定申告が必須なのは、初年度のみです。会社員や公務員などの給与所得者の場合、2年目以降は年末調整で住宅ローン控除を申請できます。

年末調整で申請する場合は、税務署から送付される「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」を勤務先に提出します。また金融機関から送付される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」の提出も必要です。

住宅ローン控除の注意点

最後に、住宅ローン控除を利用する際に知っておきたい注意点を3つご紹介します。

住宅ローンの借り方で住宅ローン控除の取り扱いが異なる

住宅ローンの借り方には、ペアローンや連帯債務、連帯保証などがあります。

  • ペアローン:夫婦や親子などがそれぞれ住宅ローンを組む方法
  • 連帯債務:債務者と連帯債務者が住宅の持分割合に応じて住宅ローンを返済する方法
  • 連帯保証:一方を主たる債務者、もう一方を連帯保証人として住宅ローンを組む方法

住宅ローンを借り入れる方法によって、住宅ローン控除の取り扱いが異なります。たとえば、夫婦でペアローンを組んだ場合は、夫と妻それぞれの借入額に応じた控除を受けられます。

夫婦で連帯債務型の住宅ローンを組んだ場合は、夫と妻のそれぞれが負担する持分割合に応じた借入額が住宅ローン控除の対象です。

一方で連帯保証の場合、住宅ローン控除を受けられるのは主たる債務者のみであり、連帯保証人は受けられません。

借り換えをしても控除期間は延長されない

返済中の住宅ローンを他の金融機関の住宅ローンに借り換えたときも、所定の要件を満たしていれば引き続き住宅ローン控除を受けられますが、控除期間が延長されることはありません。
控除期間は、取得したマイホームに住み始めた年からカウントされるためです。

そのため、すでに住宅ローン控除を受け終わっている場合、借り換えをしても再び控除を受けられるわけではありません。

繰り上げ返済をすると控除を受けられなくなることも

繰り上げ返済は、毎月の返済とは別にまとまった金額を返済する方法です。返済期間を短縮する「期間短縮型」と、毎月の返済額を軽減する「返済額軽減型」の2種類があります。

期間短縮型の繰り上げ返済をしたことで返済期間が10年未満になった場合も、住宅ローン控除を適用できなくなります。

まとめ

住宅ローン控除を適用できると、年末時点の住宅ローン残高の0.7%が所得税と一部の住民税から控除されます。控除期間は最長13年です。

住宅ローンを組む予定である方は、新築・購入の住宅が住宅ローン控除の要件に当てはまることを確認することが大切です。また、マイホームに住み始めた後は、期限内に確定申告または年末調整で忘れずに申告をしましょう。

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※この記事は2022年9月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。

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