生命保険料控除は、1年間に支払った生命保険料などに応じて、所得から一定額を差し引ける制度です。
ただし、支払った保険料の全額を控除できるわけではありません。「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」ごとに控除額の上限が定められています。
また、2026年分・2027年分の所得税では、23歳未満の扶養親族がいる場合、2012年1月1日以後に契約した保険(新制度)の一般生命保険料控除の上限が6万円となる特例が設けられています。
この記事では、生命保険料控除の上限や新制度・旧制度の違い、控除額の計算方法を解説します。2026年の改正内容や、上限を超えて保険料を支払った場合の扱い、年末調整・確定申告の方法についても紹介します。
目次
生命保険料控除とは、その年に支払った一定の生命保険料などについて、所得から一定額を差し引ける所得控除のひとつです。
生命保険料控除は、主に「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3つに分かれます。
| 区分 | 主な対象 |
|---|---|
| 一般生命保険料 | 死亡保障などを目的とする生命保険 |
| 介護医療保険料 | 医療保険・介護保険など |
| 個人年金保険料 | 一定の要件を満たす個人年金保険 |
なお、生命保険については、加入していればすべての契約が生命保険料控除の対象になるわけではありません。たとえば、保険期間が5年未満の貯蓄保険や、保険金の受取人が所定の要件を満たさない契約などは対象外となります。
対象になるかどうかは、生命保険料控除証明書などで確認しましょう。
2012年1月1日以後に締結した新契約では、所得税と住民税の生命保険料控除の上限は以下のとおりです。
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 一般生命保険料控除 | 4万円 | 2万8,000円 |
| 介護医療保険料控除 | 4万円 | 2万8,000円 |
| 個人年金保険料控除 | 4万円 | 2万8,000円 |
| 合計上限 | 12万円 | 7万円 |
所得税では各区分4万円、3区分を合わせて12万円が上限です。
ただし、2026年分・2027年分の所得税では、一定の子育て世帯を対象に一般生命保険料控除の上限を引き上げる特例があります。
2026年分・2027年分の所得税では、23歳未満の扶養親族がいる場合、新生命保険料に係る一般生命保険料控除の上限が通常の4万円から6万円に引き上げられます。当初は2026年分限りの措置でしたが、その後の税制改正で2027年分まで延長されました。
特例の対象となる場合、控除額は以下の方法で計算します。
| 年間支払保険料 | 控除額 |
|---|---|
| 3万円以下 | 支払保険料の全額 |
| 3万円超~6万円以下 | 支払保険料×1/2+1万5,000円 |
| 6万円超~12万円以下 | 支払保険料×1/4+3万円 |
| 12万円超 | 一律6万円 |
たとえば、新生命保険料を年間12万円超支払っている場合、通常の一般生命保険料控除は4万円ですが、特例の対象者は6万円となります。
特例の対象となる扶養親族は、その年の12月31日時点で23歳未満であることに加え、合計所得金額が62万円以下であることなどの要件を満たす必要があります。所得が給与だけの人であれば、年収136万円以下がこの条件にあたります。
なお、16歳未満の子どもは扶養控除の対象にはなりませんが、この特例では要件を満たせば対象になります。
また、共働き世帯では、同じ23歳未満の扶養親族について、夫婦がそれぞれ新生命保険料を支払っていれば、双方が特例を適用できます。
この特例によって一般生命保険料控除の上限が6万円になっても、生命保険料控除全体の上限が14万円になるわけではありません。
介護医療保険料控除と個人年金保険料控除は従来どおり上限4万円で、所得税における生命保険料控除全体の上限は12万円のままです。
| 通常 | 特例対象 | |
|---|---|---|
| 一般生命保険料控除 | 4万円 | 6万円 |
| 介護医療保険料控除 | 4万円 | 4万円 |
| 個人年金保険料控除 | 4万円 | 4万円 |
| 全体上限 | 12万円 | 12万円 |
そのため、一般生命保険料控除が6万円となっても、3区分を単純に合計した14万円をすべて所得から控除できるわけではありません。
生命保険料控除は、保険契約を締結した時期によって「新制度」と「旧制度」に分かれます。
新制度の上限は前章で紹介したとおりですが、旧制度では区分や上限が異なります。
旧制度では、「一般生命保険料」と「個人年金保険料」の2区分が対象です。
所得税の控除上限は、それぞれ5万円です。
旧制度には「介護医療保険料控除」という独立した区分はありません。旧契約の医療保険や介護保険の保険料は、旧生命保険料として扱われます。
新契約と旧契約の両方に加入している場合は、いずれか一方のみを適用する方法と、双方を合算する方法があります。
一般生命保険料控除と個人年金保険料控除では、新契約と旧契約それぞれの控除額を計算し、所定の上限内で控除額を決定します。合算する場合の上限は、一般生命保険料控除・個人年金保険料控除とも4万円です(特例の対象者は一般生命保険料控除が6万円)。旧契約だけを適用する場合の上限は5万円です。
旧契約だけを適用したほうが控除額が大きくなる場合もあるため、単純に新旧の控除額を合計するわけではありません。
契約ごとの新旧区分は、生命保険料控除証明書で確認できます。
生命保険料控除では、年間に支払った保険料の全額をそのまま所得から控除するわけではありません。
年間支払保険料に応じて、所定の計算式から控除額を求めます。
通常の新制度における所得税の控除額は、以下のとおりです。
| 年間支払保険料 | 控除額 |
|---|---|
| 2万円以下 | 支払保険料の全額 |
| 2万円超~4万円以下 | 支払保険料×1/2+1万円 |
| 4万円超~8万円以下 | 支払保険料×1/4+2万円 |
| 8万円超 | 一律4万円 |
たとえば、年間の一般生命保険料が6万円の場合は、
6万円×1/4+2万円=3万5,000円
となり、所得税の生命保険料控除額は3万5,000円です。
特例の対象となる一般生命保険料については、前章で紹介した計算式を使用します。
旧制度では、新制度とは異なる計算式を使います。
| 年間支払保険料 | 控除額 |
|---|---|
| 2万5,000円以下 | 支払保険料の全額 |
| 2万5,000円超~5万円以下 | 支払保険料×1/2+1万2,500円 |
| 5万円超~10万円以下 | 支払保険料×1/4+2万5,000円 |
| 10万円超 | 一律5万円 |
たとえば、旧制度の一般生命保険料を年間8万円支払っている場合は、
8万円×1/4+2万5,000円=4万5,000円
となります。
住民税にも生命保険料控除がありますが、所得税とは計算式や上限が異なります。
新制度の場合は以下のとおりです。
| 年間支払保険料 | 控除額 |
|---|---|
| 1万2,000円以下 | 支払保険料の全額 |
| 1万2,000円超~3万2,000円以下 | 支払保険料×1/2+6,000円 |
| 3万2,000円超~5万6,000円以下 | 支払保険料×1/4+1万4,000円 |
| 5万6,000円超 | 一律2万8,000円 |
一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料はそれぞれ上限2万8,000円ですが、3区分を合わせた住民税の生命保険料控除の上限は7万円です。
なお、23歳未満の扶養親族がいる場合の特例は、所得税に関する措置です。
※住民税の具体的な税額や取扱いは、お住まいの自治体にご確認ください。
生命保険料を多く支払っても、控除額が際限なく増えるわけではありません。
たとえば、通常の新制度における一般生命保険料控除では、年間支払保険料が8万円を超えると、所得税の控除額は一律4万円です。
そのため、年間10万円でも20万円でも、一般生命保険料控除は4万円を超えません。
特例の対象者についても、新生命保険料を年間12万円超支払った場合の一般生命保険料控除は6万円が上限です。
生命保険への加入や見直しは、控除による節税だけでなく、必要な保障内容や家計とのバランスを踏まえて検討しましょう。
生命保険料控除は所得控除のため、控除額そのものが税金として戻ってくるわけではありません。
控除額を所得から差し引くことで課税所得が減り、適用される所得税率に応じて税負担が軽減されます。
たとえば、所得税率10%の人が4万円の生命保険料控除を受けた場合は、【4万円×10%=4,000円】となり、所得税の負担軽減額は概算で4,000円です。
| 項目 | 金額例 |
|---|---|
| 生命保険料控除額 | 4万円 |
| 所得税率 | 10% |
| 所得税の負担軽減額 | 約4,000円 |
住民税にも生命保険料控除があるため、所得税だけでなく住民税の負担軽減にもつながります。
※復興特別所得税や住民税、その他の所得控除などによって実際の税額は異なります。
また、所得税率は所得によって異なるため、同じ4万円の控除を受けても税負担の軽減額は人によって変わります。
生命保険料控除を受けるには、年末調整または確定申告で申告が必要です。会社員などの給与所得者は勤務先の年末調整、自営業者などは確定申告で手続きします。
会社員などの給与所得者は、勤務先の年末調整で生命保険料控除を申告できます。
主な流れは以下のとおりです。
生命保険料控除証明書には、新契約・旧契約の区分や、その年に支払った保険料などが記載されています。
23歳未満の扶養親族がいる場合の特例を利用する際は、「給与所得者の保険料控除申告書」に扶養親族の氏名や生年月日、所得の見積額なども記載します。
保険会社によっては、生命保険料控除証明書を電子データで取得できる場合もあります。
年末調整で生命保険料控除を申告し忘れた場合でも、確定申告によって控除を受けられます。なお、この申告(還付申告)は、その年の翌年1月1日から5年間行えます。
また、自営業者やフリーランスなど勤務先で年末調整を受けない人は、確定申告で生命保険料控除を申告します。
申告時は生命保険料控除証明書などを確認し、支払った保険料や契約区分に応じて控除額を計算します。
申告前に、以下の項目を確認しておきましょう。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 契約日 | 新制度・旧制度のどちらか |
| 保険の区分 | 一般・介護医療・個人年金 |
| 年間支払保険料 | 生命保険料控除証明書で確認 |
| 扶養親族 | 特例(23歳未満の扶養親族)の対象になるか |
| 控除額 | 各区分の計算式・上限を確認 |
| 申告方法 | 年末調整または確定申告 |
複数の保険契約がある場合や、新制度と旧制度の契約が混在している場合は、契約ごとの生命保険料控除証明書を確認してから申告しましょう。
生命保険料控除には上限があり、新制度では一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除について、それぞれ所得税で4万円、3区分の合計で12万円が上限です。
2026年分・2027年分の所得税では、23歳未満の扶養親族がいる場合、新生命保険料に係る一般生命保険料控除の上限が6万円となる特例が設けられています。ただし、生命保険料控除全体の上限は12万円のままです。
生命保険料控除の計算方法は、契約時期や保険の区分、年間支払保険料によって異なります。生命保険料控除証明書を確認し、自身の契約に適用される控除額を計算しましょう。
会社員は年末調整、自営業者などは確定申告で手続きを行ってください。
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※この記事は2026年9月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。