相続相続税の税率は最高55%!決まり方や税額の計算方法をわかりやすく解説

「家族が遺産を相続すると、何%の税率で相続税が計算されるのだろうか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

相続税の税率は10~55%です。ただし、遺産の総額で税率が決まるのではなく、民法が定める目安にしたがって遺産を分けたときの金額に応じて決まります。

この記事では、相続税の税率や税額の計算方法、税負担を軽減する制度を解説します。少しでも多くの財産を家族に残したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵(M・Mプランニング 代表)

ファイナンシャルプランナー 宮里 恵
M・Mプランニング 代表

保育士、営業事務の仕事を経て、ファイナンシャルプランナーに。
独身、子育て世代から定年後の方までお金に関する相談を受けて、16年目になります。
主婦FPとして、等身大の目線でのアドバイスが好評です。
家計・保険・老後、教育資金などの個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っているほか、お金の専門家として、テレビ取材なども受けています。
人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

相続税の税率は10~55%!早見表で確認しよう

相続税は「超過累進課税」が採用されています。相続人が取得する遺産の金額が大きければ大きいほど、高い税率が適用されるしくみです。

相続税の税率は、国税庁のホームページにある速算表で確認できます。実際に相続税を計算するときは、下記の速算表を用いるのが一般的です。

【相続税の速算表】
法定相続分に応じる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% -
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

※出典:国税庁「No.4155 相続税の税率

たとえば、相続した遺産のうち課税対象になる金額が3,000万円である場合、1,000万円以下の部分は10%、1,000万円超3,000万円以下の部分は15%の税率が適用されます。

相続税の税率の決まり方

相続税の税率は、相続人が実際に取得した遺産の額で決まるのではなく「法定相続分に応じる取得金額」によって決まります。法定相続分は、法律が定める遺産の分け方の目安です。法定相続分に応じる取得金額は、以下の手順で算出します。

  1. 遺産総額から「基礎控除額」を差し引く
  2. 残りを法定相続分にしたがって法定相続人で分ける

法定相続人は、亡くなった人(被相続人という)の財産を相続する権利を持っている人です。法定相続人になれるのは、配偶者と血族(子供・親・兄弟姉妹など)であり、民法で優先順位が定められています。

相続税の基礎控除額は、遺産のうち相続税がかからない金額のことであり「3,000万円+600万円×法定相続人」で算出できます。

たとえば、遺産総額が8,000万円、法定相続人が亡くなった人の配偶者のみであるとしましょう。基礎控除額は、3,000万円+600万円×1人=3,600万円です。これを遺産総額8,000万円から差し引くと、残りは4,400万円となります。

法定相続人が配偶者のみである場合、遺産のすべてが配偶者と法定相続分となるため、法定相続分に応じる取得金額は4,400万円です。よって相続税の税率は、20%となります。

相続人の数によって税率が変わることがある

では、もし法定相続人が配偶者と子供の合計2人である場合、相続税の税率はどのように変わるのでしょうか。

まず法定相続分は、配偶者2分の1、子供2分の1です。また基礎控除額は、3,000万円+600万円×2人=4,200万円となります。

遺産総額8,000万円から基礎控除額4,200万円を差し引いた残りは、3,800万円です。それを配偶者と子供で2分の1ずつ分けると、法定相続分に応ずる取得金額は1人につき1,900万円となります。

その結果、配偶者と子供の相続税率は15%となり、配偶者のみが遺産を取得するケースよりも税率は低くなりました。

相続税を計算する流れとは?シミュレーションを用いて解説

次に、相続税を計算する手順をみていきましょう。計算手順は、以下のとおりです。

  1. 相続財産の評価額を合計して課税価格を求める
  2. 相続税の対象となる金額を計算する
  3. 法定相続分をもとに相続税の総額を計算する
  4. 実際の相続分にしたがって税額を計算する

ここで、以下のモデルケースを用いて相続税を計算します。

  • 法定相続人:配偶者・長女・長男の合計3人
  • 遺産
    • 現金:4,500万円
    • 不動産:4,000万円
    • 株式:2,000万円
    • 借入金や未払金などの総額:300万円
  • 葬儀費用:200万円

1. 相続財産の評価額を合計して課税価格を求める

まずは亡くなった人の保有財産を明らかにして、課税価格の合計額を求めます。

相続の対象となる財産は、預貯金や不動産、有価証券などです。また、相続が発生する前(被相続人が亡くなる前)の3年以内に贈与された財産も、相続税の課税対象となります。

一方で、借入金や滞納家賃などのマイナスの財産や、相続人が負担した葬式費用は、プラスの財産から差し引くことができます。

モデルケースにおけるプラスの遺産の合計は「現金4,500万円+不動産4,000万円+株式2,000万円=1億500万円」です。

ここから借入金・未払金300万円と、葬儀費用200万円を差し引くと、課税価格は「1億500万円−300万円−200万円=1億円」となります。

2. 相続税の対象となる金額を計算する

次に、課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を算出します。

モデルケースの法定相続人は、配偶者・長女・長男の3人であるため、基礎控除額は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となります。

相続税の課税対象となる金額(課税遺産総額)は、1億円−4,800万円=5,200万円です。

3. 法定相続分をもとに相続税の総額を計算する

課税遺産総額を算出できたら、法定相続分に応じる取得金額を求めます。その後、所定の税率をかけて相続税額を算出します。

モデルケースの場合、法定相続分は、配偶者2分の1、長女4分の1、長男4分の1となり、法定相続分に応じる取得金額は以下のとおりです。

  • 配偶者:5,200万円×2分の1=2,600万円
  • 長女:5,200万円×4分の1=1,300万円
  • 長男:5,200万円×4分の1=1,300万円

法定相続分に応じる取得金額が算出できたら相続税の速算表をもとに仮の相続税額を計算して合計します。

  • 配偶者:2,600万円×15%-50万円=340万円
  • 長女:1,300万円×15%-50万円=145万円
  • 長男:1,300万円×15%-50万円=145万円
  • 合計:340万円+145万円+145万円=630万円

計算の結果、相続税の総額は630万円となりました。

4. 実際の相続分にしたがって税額を計算する

最後に、相続税の総額を実際の相続割合で按分し、相続人ごとの税額を計算します。

法定相続分はあくまで目安であり、必ずしもそのとおりに相続されるわけではありません。遺言書や遺産分割協議(遺産の分け方を決める話し合い)などで、引き継ぐ遺産の種類や金額を自由に決められます。

モデルケースの被相続人は、遺言書を残していなかったため、法定相続人が遺産分割協議をして遺産の分け方を決めることになりました。協議の結果、以下のとおりに遺産を分けたとしましょう。

  • 配偶者:現金2,500万円・不動産4,000万円・株式2,000万円
  • 長女:現金1,000万円
  • 長男:現金1,000万円

配偶者が亡くなった人の借入金・未払金300万円を相続し、葬儀費用200万円も負担した場合、課税価格の合計は8,000万円となります。

相続税の総額は630万円です。これを実際の相続した財産の割合で按分して、相続人ごとの税額を計算します。計算結果は、以下のとおりです。

  • 配偶者:630万円×$\frac{8,000万円}{1億円}$=504万円
  • 長女:630万円×$\frac{1,000万円}{1億円}$=63万円
  • 長男:630万円×$\frac{1,000万円}{1億円}$=63万円

計算の結果、配偶者の相続税額は504万円、長女と長男はそれぞれ63万円となりました。ここからさらに、相続税の負担を軽減する制度が適用されて、実際の納税額が決まります。

亡くなった人の配偶者は、後述する「配偶者の税額軽減」が適用されると、納税額は0円です。長女と長男は、それぞれ63万円の相続税を納めますが、18歳未満であれば「未成年者の税額控除」を受けて税負担を軽減できることがあります。

相続税の負担を軽減できる制度

では、相続税の負担を軽減できる制度にはどのような種類があるのでしょうか。代表的なものは、以下の4点です。

  • 配偶者の税額軽減
  • 未成年者の税額控除
  • 障害者控除
  • 贈与税額の控除

配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減とは、配偶者が遺産を相続する場合、以下の金額のうちどちらか多い方まで相続税が非課税となる制度です。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分

夫婦の財産は、夫婦が協力して築いてきたものです。また、残された配偶者が生活をしていくうえで、遺産は必要不可欠です。そのため夫婦間の相続では、相続税額が最低でも1億6,000万円を超えない限り、相続税はかかりません。

ただし配偶者の税額軽減は、自動で適用されるわけではないため、税務署への申告が必要です。※遺産の総額が基礎控除額を超えていないときは申告不要

配偶者の税額軽減は、夫婦間での相続でしか利用できないため、親から子どもへの相続(二次相続)では利用できません。

また二次相続では、配偶者が死亡しており法定相続人の数が少なくなるため、基礎控除額が減り相続税がかかりやすくなります。一次相続では税金がかかりにくいからといって、すべての財産を配偶者に引き継いでしまうと、二次相続で高額な相続税がかかる可能性があります。

遺産の分け方を決めるときは、一次相続だけでなく二次相続についても考えることが大切です。

未成年者の税額控除

未成年者の税額控除とは、相続人が未成年であるときに相続税額から一定金額を控除する制度です。

相続税から控除される金額の計算方法は、相続または遺贈(遺言書によって特定の人に財産を渡すこと)が発生した日によって異なります。これは、令和4年4月1日から成人の年齢が20歳から18歳に引き下げられたためです。

  • 令和4年3月31日以前:(20歳−相続時の年齢)×10万円
  • 令和4年4月1日以後:(18歳−相続時の年齢)×10万円

控除額を計算するとき、相続人の年齢のうち1年に満たない部分は切り捨てられます。たとえば、相続人の年齢が「12歳4か月」であった場合は、12歳として計算されます。相続が発生した日が令和4年5月3日であった場合、控除額は「(18歳−12歳)×10万円=60万円」です。

使い切れなかった控除額は、相続人を扶養する人の相続税から控除できます。12歳の相続人に課せられる相続税が40万円であり、控除額が60万円であった場合、残りの20万円は扶養している人の相続税から控除が可能です。

障害者の税額控除

障害者控除は、相続人が85歳未満の障害者である場合、一定金額が相続税から控除される制度です。

控除額は、一般障害者と特別障害者で異なります。特別障害者と一般障害者の違いは、障害の重さです。特別障害者のほうが、一般障害者よりも障害の程度は重いため、以下の通り控除額も大きくなります。

  • 一般障害者の控除額:(85歳-相続時の年齢)×10万円
  • 特別障害者の控除額:(85歳-相続時の年齢)×20万円

相続時の年齢のうち、1年に満たないものは切り上げて1年として控除額を計算します。たとえば、相続時の年齢が55歳6か月であるときは、56歳として計算されます。相続人が一般障害者であった場合、控除額は「(85歳-56歳)×10万円=290万円」です。

控除額のうち引き切れない金額については、未成年者の税額控除と同じく相続人を扶養している人の相続税から差し引けます。

贈与税額の控除

被相続人が亡くなった日からさかのぼって3年以内に贈与された財産は、相続税の課税対象です。

また、相続人が贈与された財産に対する贈与税を支払っていた場合、納税額を相続税から控除できます。これは、相続税と贈与税の二重課税とならないように調整するためです。

ただし亡くなった日から3年以内に財産を贈与されていたとしても、「1年間で贈与された財産の合計額が110万円以下」であれば贈与税は発生しないため、控除の対象になりません。

相続人によって相続税額が2割増しとなる

相続税の2割加算とは、孫や兄弟姉妹などが相続人になると、相続税が2割増しになるルールのことです。2割加算の対象となるのは、以下のとおり配偶者と1親等以内の血族以外の人です。

  • 祖父母
  • 兄弟姉妹

  • ※代襲相続の場合を除く
  • おい、めい
  • 内縁関係の配偶者
  • 友人知人などの第三者
  • 養子縁組した孫

法定相続人には優先順位があり、本来は親から子供、子供から孫へと順番に財産が引き継がれていきます。たとえば、子供がいるにもかかわらず「財産のすべてを孫に遺贈する」と書かれた遺言書を残すと、子供は遺産を取得できなくなる代わりに相続税も課税されません。

そのため子供を飛ばして孫が遺産を引き継ぐと、相続税の課税が1世代免れたことになるため、税負担を公平に調整するために税額が2割増しとなります。

ただし、孫が「代襲相続」をした場合、2割加算は適用されません。代襲相続とは、本来であれば相続人となるはずの子供が相続の開始時点で亡くなっているとき、その子供が代わりに財産を相続することです。

まとめ

相続税の税率は10〜55%であり、実際に取得した遺産の額ではなく、法定相続分に応じる取得金額によって決まるしくみです。

相続税の計算方法や相続に関するルールは、複雑な部分があり、専門家でなければ理解が難しいかもしれません。

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【七十七銀行 関連ページ】

https://www.77bank.co.jp/sonaeru/shintakudairi/index.html

【参考サイト】

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm

※この記事は2022年6月現在の情報を基に作成しています。
今後変更されることもありますので、ご留意ください。

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